上 下
389 / 613

不安と焦り

しおりを挟む
(ナッ…馬鹿な!いったいどういうことだ??)

なにか意味ありげに生えたと思ったら、今度は消えていこうとする石灯籠にオレと仁菜さんは動揺した。

「こ、これって今のうちにでもセットしたほうがええんちゃう!?」

ただ静かに沈み込んでいく石灯籠。そんな状況に仁菜さんが慌てた様子で考えを述べる。

「いや!逆にそれが狙いの罠かも!いったん様子をみよう!」
「ねぇどうしたの?あ!塔が沈んでる!!」

そこへ異変に気付いた瀬来さんも戻ってきて合流。3人で沈んで消えていく石灯籠を見送った。

そうして石灯籠が床に消え去ると、周囲がフッと一段暗くなった。

「ねぇ江月さん…、コレって大丈夫なの?」
「わからん…。でも何もセットしなかったのだから、たぶん何も起きない筈だ」

おかしな形をした石灯籠だったから非常に不安。

でもコレがもしパソコンについてるDVDプレイヤーだったら、なんのメディアもセットしなければ元に戻っても何も起きない筈…。むしろ何かをセットして起動させてしまうほうが、不味いんじゃなかろうか。

「せやったらええんやけど、もしこのままこないなとこに閉じ込められでもしたら…」
「う~ん。暗くてシンと静まりかえってるから、なんか不気味よね」

あたりは急に暗くなり、空気の流れさえ止まってしまったかのように静か。そんななかにマサルの鼻息だけが無駄に響いている。

むぅ…。オレは今までに、数え切れぬほどの漫画を読んだ。そのなかで描かれていた謎解きも、かなりの数を覚えている。それはやりこんだゲームだって同じこと。

だからそれによると、こんな風に目立って現れた怪しいモノってのは、大抵は扉か罠かなにかの起動装置だった。故に正解の扉と確信が持てるまでは、不用意に触らない方がいいと判断したのだが…。

「なにもない部屋になってしまったが、もう一度周囲をよく調べ直してみよう。それに消えてしまった石灯籠だって、必要ならまた生えてきたりも…お?」

そんな風に次の方針を説明しつつふたりを勇気づけようとしていると、突如外周の壁が動いて道が現れた。

「なによもう驚かせて…。道があるなら、もっと早く出てくればいいのに」
「でも良かったやない。閉じ込められたんやなくて」

ふたりは閉じ込められたのではないと知って、ホッと息を吐く。でも口から出た言葉は、正反対の反応。瀬来さんは強気に振る舞っているが、仁菜さんは本気で不安だったようだ。

「道があったか。まったく、驚かせてくれる…」

かくいうオレも、これにはホッとした。

一度空間庫がダメになってしまったことで、ほとんどの荷物をそのままボスと戦った場所に残してしまったのだ。

いやほら、急に石舞台が動き出すから回収する間も無かったのよ。

なので水食糧などはアウト。ミスリル靴箆や通信端末などの貴重品は仁菜さんが壊れないようにとリュックに詰めて回収してくれてたけど、それ以外の荷物はロストしてしまったということになる。

まぁ…どっちに価値があるかといえば残してきた私物や小物類よりも、今の空間庫に満タン入ってる万能回復薬の方が何倍も価値があるだろうからいいけど。でも使い慣れた道具を失くしてしまったのは、非常に残念だ。

「…何もいない。大丈夫みたいよ」

先行して壁に出来た通路を覗いていた瀬来さんから、状況クリアの報告。

「よし、では一本しか道はないし、先に進んでみるか」
「こう暗いと陽の光が恋しいわ~。はよ地上にもどりたいねぇ」

そんな仁菜さんと並んで瀬来さんの元まで向かうと、通路に足を踏み入れる。石舞台もそうだったが、この通路も洞窟ではなく遺跡チックな雰囲気で等間隔に石柱が並んでいる。


「ムッ…?」

だがそうして通路を歩いていると、すぐにある異変に気が付いた。

「なんや、どないしたん?」
「なんにもいないのに、どうして立ち止るの?」

先頭を歩いていたオレが立ち止ったことで、不審を感じた二人が問いかけてくる。

「おかしい。さっきからダンジョンの魔力をまったく感じないんだ…」
「ダンジョンの魔力?」

「それって、ダンジョンが光っとったり放置されたモンが勝手に吸収されるいう??」
「そうだ。分解吸収作用の働いている状態だったら、うっすらとだがもっとダンジョンの魔力を感じている筈…。なのにそれがないんだ…」

「え~そんなことってあるの…?アアッ!!」
「どないしたん万智!」

「ふたりとも後ろ視て!壁がシミみたいになって消えてないッ!?」
「そないなこと、あ!ホンマや!!」

「なんだって!」

オレも後ろを振り返り、一番後ろを大人しくついて来ていたマサルのところまで戻って確認してみると、確かにダンジョンの壁の一部が消失をはじめていた。しかも青白い光の粒となって。。。

「こ、この消え方…、まさかボス級モンスターと同じか…!」

速報。このダンジョン、消え始めとるやんけ!
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...