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それに、毒も恐ろしかった。
蟻といえばやはりギ酸だが、【強酸】のスキルを持つオレがなにも感じずなんの抵抗もできなかった点から考えるに、やはりギ酸ではなく蜂の持つ毒に近いモノだったのだろう。
(う~む。ものすごく苦しかったし…、そうだ。念の為もう少し超巨大アブラムシの体液を飲んでおくか)
グレートアントのサイズがサイズだっただけに、ちょっと刺されただけでもとんでもない量の毒を注入されてしまった。いっそ毒針が腹を貫通していた方が、まだ戦えたんじゃないかと思えるほど。
そんな事を考えつつも、新たに生み出した空間庫から今さっき溜めた超巨大アブラムシの体液を飲もうとしていると、甘い匂いのしていることに気付いたピクシー達が一斉におねだりアピールで群がってきた。
「「「ぴぴぃ!ぴぴぃ!ぴぴぴぃ~ッ!」」」
「ウワッ…!ちょ!?おまえたち…!」
「ふふ、頑張ったから、おなかも空いたんやろねぇ~」
「いっぱい魔法うってたもんねェ」
仁菜さん瀬来さんはそんな風に呑気に構えてるが、たかられている方は髪をひっぱられたり腹をつつかれたりと堪ったモノじゃない。
「わかったわかった!今やるからもう少し落ち着けって!」
「「「ぴぴぃ!ぴぴぃ!ぴぴぴぃ~!」」」
そこでピクシーたちが皆で飲めるようにと、結婚式や相撲取りが使うような大杯を岩塩で生み出すと、それを超巨大アブラムシの体液で満たしてやる。
(よしよしいいぞ…、ちゃんと残ってるな)
ダンジョンでは、死ぬと煙となって消えてしまうモンスター。
しかしこうしてカラダの一部を空間庫に入れてしまえば、その関係性が絶たれて消えずに済むらしい。返り血なんかも一緒に消えてしまうのでダメ元だったが、どうやらうまくいったようだ。
「ねぇ江月さん、それってもしかして…?」
近くにいた瀬来さんが大杯に満たされた薄い黄緑色をした液体に、もしやといった表情を浮かべる。
「ああ。コレは今さっき倒した、超巨大アブラムシの体液だよ。コレのおかげでどうやらオレも、毒から回復出来たようなんだ」
しかしそう説明すると、オレがモンスターを食材にしてしまうのはいつものことなので普通に納得。
「ふ~ん。…で、その手に持ってるのは?」
「ああ、これか」
そして瀬来さんがさらに気にしたのは、オレの手したバスケットボール大のクリスタル。
「あのアブラムシからトドメの時にむしり取ったんだよ。ちょうどなかにいた時になんか光ってて、弱点ぽかったし」
むしり取った時には生物的に皮膜をかぶっていたが、今はもうそれも消えている。その他にはオレンジ色をしていて、カッティングの感じがなんだか100面ダイスみたいだ。これも魔石だとすると、相当の大物。
そして消えずに残ったところをみるに、どうやらドロップアイテムのようだ。
「へぇ~…、アッ!?」
「え、なんだ!どうした!?」
と、ここで急に瀬来さんが驚いた声をあげるので、また敵が現れたのかと慌てて周囲を警戒。
「スキル覚えたの!トウだって!」
が、どうやらそれは杞憂だったようだ。
「なんだ、ステータスを確認してたのか。ビックリさせないでよもう…。しかし、トウ?」
「うん、甘い糖分の【糖】。コレって、絶対あのアブラムシの持ってたスキルでしょ!!」
するとそこへ仁菜さんも近づいてきて口をひらく。
「ウチもスキルゲットしたで。なんや、【甘露】やて」
「なんと、瀬来さんだけでなく仁菜さんもか。ふたりともスゴイじゃないか!」
「ねぇねぇ。このスキルがあれば、アブラムシがアリを回復させてたその甘い汁が作れるんじゃない?」
「せやねぇ。【甘露】いうくらいやし、いけるんちゃうか」
うむむ…【糖】に【甘露】か。
それぞれ別のスキル…いや、ステータスが力やストレングスみたいに個々人でその表現が違うように、もしかしたらスキルに関しても同じ現象が起きるのかもしれないぞ。
しかし立ち昇っていた生命エナジーの輝きが消え、ふたりが新しく手にしたスキルを試そうとしたタイミングで何か「ゴトン!」と音がして石舞台が沈み始めた。
「きゃ!何…?」
だがボスが倒されてもドーム外周にある封鎖された通路が元に戻った様子はない。するとこの大きく丸い石舞台自体が、先へと進む通路となっているのだろうか。
「みんな集まれ!念のため岩塩と粘液で防御陣を築いておく!」
そうだ。舞台装置のように沈み込んでいく石舞台が、このままミキサーのような凶悪なトラップに変化しないとも限らない。瀬来さんが危うく潰されてしまうところだった大きな岩の落ちてくる吊り天井トラップもあったしな。
ならば築いて安心の防御陣で、守りを固めておくに越したことはない。
蟻の毒にやられてヘロヘロヘロだったオレ。だが今はすっかり回復したうえ新たな生命エナジーを吸収したばかり。なので魔力を練り生み出されていく岩塩バリケードも、やたらバキバキと勢いが良い。
そうして石舞台は周囲を青い岩壁に覆われ、どんどん下へと降りていく。だがいったい、この先は何処に続いているのやら…。
蟻といえばやはりギ酸だが、【強酸】のスキルを持つオレがなにも感じずなんの抵抗もできなかった点から考えるに、やはりギ酸ではなく蜂の持つ毒に近いモノだったのだろう。
(う~む。ものすごく苦しかったし…、そうだ。念の為もう少し超巨大アブラムシの体液を飲んでおくか)
グレートアントのサイズがサイズだっただけに、ちょっと刺されただけでもとんでもない量の毒を注入されてしまった。いっそ毒針が腹を貫通していた方が、まだ戦えたんじゃないかと思えるほど。
そんな事を考えつつも、新たに生み出した空間庫から今さっき溜めた超巨大アブラムシの体液を飲もうとしていると、甘い匂いのしていることに気付いたピクシー達が一斉におねだりアピールで群がってきた。
「「「ぴぴぃ!ぴぴぃ!ぴぴぴぃ~ッ!」」」
「ウワッ…!ちょ!?おまえたち…!」
「ふふ、頑張ったから、おなかも空いたんやろねぇ~」
「いっぱい魔法うってたもんねェ」
仁菜さん瀬来さんはそんな風に呑気に構えてるが、たかられている方は髪をひっぱられたり腹をつつかれたりと堪ったモノじゃない。
「わかったわかった!今やるからもう少し落ち着けって!」
「「「ぴぴぃ!ぴぴぃ!ぴぴぴぃ~!」」」
そこでピクシーたちが皆で飲めるようにと、結婚式や相撲取りが使うような大杯を岩塩で生み出すと、それを超巨大アブラムシの体液で満たしてやる。
(よしよしいいぞ…、ちゃんと残ってるな)
ダンジョンでは、死ぬと煙となって消えてしまうモンスター。
しかしこうしてカラダの一部を空間庫に入れてしまえば、その関係性が絶たれて消えずに済むらしい。返り血なんかも一緒に消えてしまうのでダメ元だったが、どうやらうまくいったようだ。
「ねぇ江月さん、それってもしかして…?」
近くにいた瀬来さんが大杯に満たされた薄い黄緑色をした液体に、もしやといった表情を浮かべる。
「ああ。コレは今さっき倒した、超巨大アブラムシの体液だよ。コレのおかげでどうやらオレも、毒から回復出来たようなんだ」
しかしそう説明すると、オレがモンスターを食材にしてしまうのはいつものことなので普通に納得。
「ふ~ん。…で、その手に持ってるのは?」
「ああ、これか」
そして瀬来さんがさらに気にしたのは、オレの手したバスケットボール大のクリスタル。
「あのアブラムシからトドメの時にむしり取ったんだよ。ちょうどなかにいた時になんか光ってて、弱点ぽかったし」
むしり取った時には生物的に皮膜をかぶっていたが、今はもうそれも消えている。その他にはオレンジ色をしていて、カッティングの感じがなんだか100面ダイスみたいだ。これも魔石だとすると、相当の大物。
そして消えずに残ったところをみるに、どうやらドロップアイテムのようだ。
「へぇ~…、アッ!?」
「え、なんだ!どうした!?」
と、ここで急に瀬来さんが驚いた声をあげるので、また敵が現れたのかと慌てて周囲を警戒。
「スキル覚えたの!トウだって!」
が、どうやらそれは杞憂だったようだ。
「なんだ、ステータスを確認してたのか。ビックリさせないでよもう…。しかし、トウ?」
「うん、甘い糖分の【糖】。コレって、絶対あのアブラムシの持ってたスキルでしょ!!」
するとそこへ仁菜さんも近づいてきて口をひらく。
「ウチもスキルゲットしたで。なんや、【甘露】やて」
「なんと、瀬来さんだけでなく仁菜さんもか。ふたりともスゴイじゃないか!」
「ねぇねぇ。このスキルがあれば、アブラムシがアリを回復させてたその甘い汁が作れるんじゃない?」
「せやねぇ。【甘露】いうくらいやし、いけるんちゃうか」
うむむ…【糖】に【甘露】か。
それぞれ別のスキル…いや、ステータスが力やストレングスみたいに個々人でその表現が違うように、もしかしたらスキルに関しても同じ現象が起きるのかもしれないぞ。
しかし立ち昇っていた生命エナジーの輝きが消え、ふたりが新しく手にしたスキルを試そうとしたタイミングで何か「ゴトン!」と音がして石舞台が沈み始めた。
「きゃ!何…?」
だがボスが倒されてもドーム外周にある封鎖された通路が元に戻った様子はない。するとこの大きく丸い石舞台自体が、先へと進む通路となっているのだろうか。
「みんな集まれ!念のため岩塩と粘液で防御陣を築いておく!」
そうだ。舞台装置のように沈み込んでいく石舞台が、このままミキサーのような凶悪なトラップに変化しないとも限らない。瀬来さんが危うく潰されてしまうところだった大きな岩の落ちてくる吊り天井トラップもあったしな。
ならば築いて安心の防御陣で、守りを固めておくに越したことはない。
蟻の毒にやられてヘロヘロヘロだったオレ。だが今はすっかり回復したうえ新たな生命エナジーを吸収したばかり。なので魔力を練り生み出されていく岩塩バリケードも、やたらバキバキと勢いが良い。
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