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だいぶふふん者

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地下7層での大歓迎にて、ジャイアントアントを大量撃破。

しかも向こうは狭いトンネルを一匹しか通り抜けられないところを、こちらは7層へおりてすぐのひらけた場所で迎え撃ったので、4:1のタコ殴り状態。

期せずして宮本武蔵が吉岡一門と戦った際に、閉所におびき寄せ1:1の状態に持ちこんだのと同じような状況で戦えたのが幸いだった。まぁでも、4:1は酷過ぎるか。

ともあれこの戦闘で瀬来さんと仁菜さんがレベルアップ。

瀬来万智
レベル:       24
種族:       人間
職業:    鳴人特待生
能力   ALL380前後
技能:
【酸】・【敏捷】・【剛腕】・【粘液】3
【飛行】?(スーツ効果によるもの)

仁菜静絵
レベル:       23
種族:       人間
職業:    鳴人特待生
能力値:  ALL370前後
技能:
【酸】・【敏捷】・【健脚】・【複利】・【粘液】3・【雷】


う~む、ふたりともボス級から生命エナジーを得た訳でもないのに能力値が40近く上昇とは、これもまた山での特訓の成果だろうか。

「あ~、忙しかった。でも楽勝だったね」
「ひっきりなしに来よったけど、狭くて一匹しか通れんかったしなぁ」

うん、ふたりが言うように先頭のヤツが抜け出なければ、後続は戦闘に参加できない。しかも先頭のジャイアントアントは、即粘液で顎を封じられてタコ殴り。

これでは文字通り手も足も出ずにやられる他はない。

蟹や蠍の鋏もそうだが、噛みつく顎を持ったモンスターも同様に閉じる力は強くても、開く力はさほどでもない。ま、せいぜいが閉じる力の1/3程度といったところか。なので隙をみせフェイントで誘い、攻撃で顎を閉じた瞬間に粘液を浴びせてしまえば後はもう顎による噛みつき攻撃が出来なくなってしまうという寸法。

「ふたりともお疲れ様。魔力も消費したし、ここで昼食にしようか」
「「は~い」」

そこで先へと続く通路の奥にはキツイ臭いのする酸を撒いてモンスター避けにし、その手前にはベタベタする粘液膜を設置。

うむ、これでランチタイムを邪魔されることはないだろう。

そうして空間庫から調理器具を取り出すと、お昼の準備。タッパーに甘く煮た超巨大猪のお肉をたっぷり入れて持ってきたから、米を炊いて煮豚丼にでもするか。


……。


昼食後はお昼寝タイムも設け、ふたりにはしっかり精神力を回復してもらう。

なにせ怪我のないよう戦闘毎に魔力を消費して、粘液を生み出してたからな。この先もあるし、精神力はしっかり回復してもらわないと。

さて、ではその間にオレはマサルの手当てでもするかな。

「どれマサル、傷ついたとこをみせてみろ」

マサルの蹴りは非常に強力。だがいかんせん、ガチンコのどつきあいを好む。

顔を狙われればさすがに避けるのだが、身体の方だと躱すよりも攻撃する方を優先してしまう。なのでジャイアントアントに体当たりされたり鉤爪でひっかかれたりといった傷が、二の腕やふとももにいくつもできていたのだ。

「ぶっふふん」
「おい、嫌じゃないんだよ。そんな傷の上にまた傷を負ったら、どんどん治りが悪くなるだろう」

お爺さん特製軟膏の匂いが気に入らなかったのか逃げようとするマサルをおさえつけ、傷口に軟膏を塗り込んでいく。そしてまた傷を負わないようにと、肩やふとももに岩塩で生み出したプロテクターも張り付けておく。

「ぶふん、ぶふふんッ!」
「え、コレも嫌だって?でもまた怪我をしたらしょうがないだろ。あ、おい待てって!わかったから、無理に剥がそうとするな」

邪魔に感じたのか、せっかく作ってやった岩塩プロテクターをむしり取ろうとするマサル。

「しょうがないなぁ。じゃあどうするか…。あ、ならもう、コレでいいか」

岩塩プロテクターを嫌がるマサルの肩に、敷物として尻の下にあった超巨大猪の毛皮をあててみる。

「ぶふふ」
「え、コレならいいって?まったく、面倒くさいヤツだなもう…」

マサルも毛皮ならOKのようなので、魔力を通して加工しやすくすると大きな短冊状にカット。

ん~、大変だけど、そのままだと車のタイヤより丈夫だからな。そうして加工した超巨大猪の毛皮を、鎧の大袖や草摺みたいにしてマサルの身体に張り付けていく。

…。

「ふわぁ…、あ~気持ち良かった。え、ヤダ何よそれ?マサルったら」
「ん~?あ、ふふ…。なんや、それやと武士もののふカンガルーって感じやなぁ」

岩塩プロテクターを嫌ったマサルが超巨大猪の毛皮を身体に張り付けてるのを見て、お昼寝から眼を覚ましたふたりがその様変わりした姿に驚いている。

う~ん、武士か。それじゃあ背中に「だいぶふふん者」とでもノボリもつけてやろうか?
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