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轢かれた存在は
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(あ~、やっちゃったか…)
今、明らかにマイカーは何かに衝突し、しかもソレをおもいっきり轢いてしまった。
納車してすぐに事故ったなんて話はよく聞くが、まさか自分の車がそうなるとはだ。
だがオレはバイクでも事故った経験があり、これが初めてではないので事故に関する動揺は無い。うむ、こんな時こそ冷静に。慌てちゃいけない焦っちゃいけない~、ビビるマンじゃダメなのさ~。
そこでそんなオレは、冷静にふたりを気づかう。
「ふたりとも、怪我はない?」
「う、うん」
「カラダはなんともあらへんけど…」
うむ、瀬来さんは平気そう。でも運転していた仁菜さんは、いつになく声をうわずらせている。
「コォチ…、あの、ごめんしてなぁ」
「大丈夫だよ。よく慌てて急ハンドルを切らなかったね。偉い偉い…」
珍しく仁菜さんが緊張しているので、優しく褒めてあげる。
そう、左手には険しい斜面。ガードレールで止まってくれればいいが、もし止まらなかったら下の川まで落ちてしまっていたところだ。
「それで、何を轢いたか解る?」
「ゴブリンだったよ!」
「猿やったかも…?」
しかしここで、瀬来さんと仁菜さんの意見が割れた。
「え、どっち…?」
「ゴブリンがね、いきなり上から降ってきたんだよ!」
「……」
さらに問うと瀬来さんは見間違いではないと言葉を重ね、仁菜さんは自信がないのか何も言わなかった。
「ふむむ、では確認してくるから仁菜さんはハザードを点けて、車を端に寄せておいて」
「そ、そやね…!」
事故現場は片道一車線の、曲がりくねったワインディングロード。
進行方向の右手側はコンクリで固められた険しい崖、左手も樹こそ生えてるもののガードレールの向こう側は険しい斜面。近くに民家があるようなエリアではなく、ふたりが言うように人を轢いた訳ではなさそうだ。
「じゃ、ふたりは車の中にいてね」
そうして後部座席から外へと出ると、すぐに頭上からギャッギャという声が。
見上げるとコンクリで固められた斜面のはるか上方で、木々の間を猿のように移動するなにかの影とそれを追う人の姿がチラと視えた。
(ムッ、あれは…?)
だが茂って張り出した枝葉越しであり、逆光でもあるので非常に視え難い。
さらにここで「こんなところで何やってんだ!」とばかりにクラクションを乱暴に鳴らしまくる車が通過。それに気を取られ、再び上を見た時にはそのどちらの姿も消えていた。
「むぅ、ここは場所が悪いか。さすがに見通しがよくないものな。よし、レッドスライム!」
うん、こんな見通しの悪い場所に車を停めている奴がいたら、オレだって怒る。
そこでひとまずアスファルトの上で血を噴いてビクンビクンしてるヤツをレッドスライムに回収してもらうと、後を開けて積載部に収納した。
「エッ!持ってきちゃったの江月さん!?」
「ああ、ココじゃどうにも場所が悪い。ひとまず邪魔にならない所に移動しよう」
…。
こうしてほどほどの駐車スペースがあり、なんか石碑や自販機なんかが置かれている場所に移動すると、改めて諸々を確認することに。
「せっかく車買うたばっかりなのに…、堪忍してなコォチ」
「いやいや、いいんだよ仁菜さん。またスタンピードが起きた時にオシャカになっても惜しくないようにって、中古車にしたんだから。それより人を轢いたんじゃなくて良かったし、なによりふたりに怪我が無くて本当によかった」
うん、ここは車が傷ついたことなんてなんでもないよと、懐の深いところを見せる場面。
「ほんと急に降ってくるんだもん。あんなの躱しようがないじゃない」
「それで、うちが轢いてしもうたのってなんやったん…?」
「よし、ではみんなで確認をしてみようか」
車を降りると後部を開け、おあずけ状態で我慢してもらっているレッドスライムに包まれた存在を確認してみる。
「ゴブリン…、にしてはすこし小柄かな?」
「せやねぇ…。アッ!やっぱりゴブリンやったんか。背中に毛が生えとったから、うち猿に見えたわ」
件の存在は車に轢かれた事で結構グロテスクでアレな感じになっている訳だが、赤く半透明なレッドスライムに包まれたことで、かなりグロさが抑えられている。
にしてもふたりとも、こういうグロいの見てもぜんぜん平気になったね。
「ふぅむ…。オレがさっきチラッと視た個体と同じヤツだとすると、コイツは山での生活に猿のようなスタイルで適応した、山ゴブリンといったところかな」
「「山ゴブリン??」」
「ああ、オレの視たのは猿のように木々を渡っていたし。ほら、コイツを見ても見知ったゴブリンよりも足が短く手が長いだろう。それに蓑笠を背負ってるように体毛が濃いのも、寒冷な山地に適応している証拠じゃないかな」
「「へぇ~…」」
説明を聞いたふたりは、しげしげと山ゴブリンの死体に見入っている。
う~む、ゴブリンというのは案外と汎用性や多様性に富んでいるのかもしれないぞ。もしかしたらどこかに、水中用ゴブリンとかトロピカルゴブリンなんて個体もいるのかもしれないな。
今、明らかにマイカーは何かに衝突し、しかもソレをおもいっきり轢いてしまった。
納車してすぐに事故ったなんて話はよく聞くが、まさか自分の車がそうなるとはだ。
だがオレはバイクでも事故った経験があり、これが初めてではないので事故に関する動揺は無い。うむ、こんな時こそ冷静に。慌てちゃいけない焦っちゃいけない~、ビビるマンじゃダメなのさ~。
そこでそんなオレは、冷静にふたりを気づかう。
「ふたりとも、怪我はない?」
「う、うん」
「カラダはなんともあらへんけど…」
うむ、瀬来さんは平気そう。でも運転していた仁菜さんは、いつになく声をうわずらせている。
「コォチ…、あの、ごめんしてなぁ」
「大丈夫だよ。よく慌てて急ハンドルを切らなかったね。偉い偉い…」
珍しく仁菜さんが緊張しているので、優しく褒めてあげる。
そう、左手には険しい斜面。ガードレールで止まってくれればいいが、もし止まらなかったら下の川まで落ちてしまっていたところだ。
「それで、何を轢いたか解る?」
「ゴブリンだったよ!」
「猿やったかも…?」
しかしここで、瀬来さんと仁菜さんの意見が割れた。
「え、どっち…?」
「ゴブリンがね、いきなり上から降ってきたんだよ!」
「……」
さらに問うと瀬来さんは見間違いではないと言葉を重ね、仁菜さんは自信がないのか何も言わなかった。
「ふむむ、では確認してくるから仁菜さんはハザードを点けて、車を端に寄せておいて」
「そ、そやね…!」
事故現場は片道一車線の、曲がりくねったワインディングロード。
進行方向の右手側はコンクリで固められた険しい崖、左手も樹こそ生えてるもののガードレールの向こう側は険しい斜面。近くに民家があるようなエリアではなく、ふたりが言うように人を轢いた訳ではなさそうだ。
「じゃ、ふたりは車の中にいてね」
そうして後部座席から外へと出ると、すぐに頭上からギャッギャという声が。
見上げるとコンクリで固められた斜面のはるか上方で、木々の間を猿のように移動するなにかの影とそれを追う人の姿がチラと視えた。
(ムッ、あれは…?)
だが茂って張り出した枝葉越しであり、逆光でもあるので非常に視え難い。
さらにここで「こんなところで何やってんだ!」とばかりにクラクションを乱暴に鳴らしまくる車が通過。それに気を取られ、再び上を見た時にはそのどちらの姿も消えていた。
「むぅ、ここは場所が悪いか。さすがに見通しがよくないものな。よし、レッドスライム!」
うん、こんな見通しの悪い場所に車を停めている奴がいたら、オレだって怒る。
そこでひとまずアスファルトの上で血を噴いてビクンビクンしてるヤツをレッドスライムに回収してもらうと、後を開けて積載部に収納した。
「エッ!持ってきちゃったの江月さん!?」
「ああ、ココじゃどうにも場所が悪い。ひとまず邪魔にならない所に移動しよう」
…。
こうしてほどほどの駐車スペースがあり、なんか石碑や自販機なんかが置かれている場所に移動すると、改めて諸々を確認することに。
「せっかく車買うたばっかりなのに…、堪忍してなコォチ」
「いやいや、いいんだよ仁菜さん。またスタンピードが起きた時にオシャカになっても惜しくないようにって、中古車にしたんだから。それより人を轢いたんじゃなくて良かったし、なによりふたりに怪我が無くて本当によかった」
うん、ここは車が傷ついたことなんてなんでもないよと、懐の深いところを見せる場面。
「ほんと急に降ってくるんだもん。あんなの躱しようがないじゃない」
「それで、うちが轢いてしもうたのってなんやったん…?」
「よし、ではみんなで確認をしてみようか」
車を降りると後部を開け、おあずけ状態で我慢してもらっているレッドスライムに包まれた存在を確認してみる。
「ゴブリン…、にしてはすこし小柄かな?」
「せやねぇ…。アッ!やっぱりゴブリンやったんか。背中に毛が生えとったから、うち猿に見えたわ」
件の存在は車に轢かれた事で結構グロテスクでアレな感じになっている訳だが、赤く半透明なレッドスライムに包まれたことで、かなりグロさが抑えられている。
にしてもふたりとも、こういうグロいの見てもぜんぜん平気になったね。
「ふぅむ…。オレがさっきチラッと視た個体と同じヤツだとすると、コイツは山での生活に猿のようなスタイルで適応した、山ゴブリンといったところかな」
「「山ゴブリン??」」
「ああ、オレの視たのは猿のように木々を渡っていたし。ほら、コイツを見ても見知ったゴブリンよりも足が短く手が長いだろう。それに蓑笠を背負ってるように体毛が濃いのも、寒冷な山地に適応している証拠じゃないかな」
「「へぇ~…」」
説明を聞いたふたりは、しげしげと山ゴブリンの死体に見入っている。
う~む、ゴブリンというのは案外と汎用性や多様性に富んでいるのかもしれないぞ。もしかしたらどこかに、水中用ゴブリンとかトロピカルゴブリンなんて個体もいるのかもしれないな。
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