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草津へGO
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こうして移動手段を手にしたオレ達3人は、準備を整え一路草津へと向かっていた。
そう、3人だ。草津へと向かうこの車内に、瑠羽の姿は無い。一本の電話からはじまった瀬来さんのお爺さん安否確認の旅。だが今回瑠羽は、参加できなかったのだ。
誓いをたてたオレ達4人は、お互いを助けるのは当然として家族や親しい友人を助けるのにも協力しあうことにしていた。なのでそれに則り瑠羽にも連絡を入れたのだが、瑠羽が草津に行くことを伝えたらお父さんから待ったがかかってしまったというではないか。
どうも一定の理解は示してくれるものの、また何が起こるか解らない現状で娘を遠出をさせるのは非常に心配。ということらしい。
だがそんなお父さんの心情も理解できる一方で、説得している時間的余裕もない。
瑠羽を勝手に連れて行ってしまうというのも出来なくはない。が、それでもし瑠羽が大怪我でもしてしまえば、関係悪化は免れない。
だからそういった事情で、瑠羽は今回おやすみなのだ。
でも瑠羽自身はそれをひどく気にしていて「万智ちゃん本当にごめんなさい!」と、出発の時間に合わせアップルパイを焼いて持って来てくれた。うん、ほんとに良い子だよ瑠羽って。
だって朝の6時だよ。どれだけ早起きして焼いてくれたんだって話よ。
そんな優しい瑠羽のくれたアップルパイを食べながら、高速道を草津に向けひた走る。うん、エンジンはすこぶる快調。昨日チェックしたらエンジンオイルがすこし汚れてたので、オイル交換もしたしね。
懸念があるとすれば、この車にはまだ自賠責しか保険がついていないこと。
いや、任意保険の手続きもちゃんとしたのよ。でもバイクと同じ保険屋に頼んだから、どうしてもすこし時間がかかってしまう。なので法定速度厳守のパーフェクト安全運転。絶対に事故は許されないのだ。
「それで…、またくどく訊いちゃうようで悪いけど、ホントに仁菜さんのほうの家族は問題ない?」
後部座席で一日からでも入れる保険を調べてくれている仁菜さんに声をかけた。瀬来さんの家族をフォローするなら、仁菜さんの家族もしっかりフォローしてあげないと。
「ん~…、だいじょうぶやでぇ。今回も商店街のみんなが、頑張ってくれたんやて」
「ほぉ、すごいな大阪商店街のチームワークは。またポコポコだかカンカンのおじさんたちが主力で?」
そんな風に地元の話題がふられると、嬉しかったのか仁菜さんは頬を綻ばせて話しはじめた。
「ふふ、今回は特にホルモン屋のオッチャンがすごかったんやて」
「へぇ~、ホルモン屋さんかぁ。で、どんなふうに凄かったんだい?」
「マサとユキが言うにはな。ホルモン屋のオッチャンが並み居るモンスターを、ギンギンに光った下駄でボコボコにしたんやて!」
「光る下駄とは、また凄いな…」
なんと、シャイニング下駄か。
エクスカリバールみたいに武器強化スクロールを使ったのかな。でもエクスカリバールはうっすら光るといった程度だから、ギンギンに光るとなると武器強化スクロールを下駄に重ね掛けしたのも??
う~む、それはまたなんという贅沢使い。
「ほんでもな。もっとすごかったんは、ホルモン屋のお姉さんやったみたい」
「え、ホルモン屋のお姉さんが?ふ~む…あ、解った!下駄ときたら、お姉さんはギンギンに光る傘で戦ったとか??」
「ブッブー!ざんね~ん、不正解やぁ~。正解は、なんと…そのホルモン屋のお姉さんは猫妖精言うん?そないな立って歩ける猫ちゃんをぎょうさん連れてな、でっかいモンスター追っかけまわしぃのギャンギャンにいてこましたんやて!ふふふ…。コォチみたいな人が、ほかにもおったんやなぁ~」
おおぅ、マジか。そげな人物が大阪に。ていうかなんか物凄い既視感あんだけど…。その猫妖精って、絶対下履いてないよね??
「うん…、うん、そっかありがとう。じゃあまた連絡するね」
一方助手席に座った瀬来さんは、現地入りする前に友人知人に連絡を入れ情報を集めていた。
「どう、なにか解った?」
「う~ん…、めぼしい情報はなにもぉ~」
疲れたのか腕をあげ伸びをする瀬来さん。おつかれさま。何件も電話かけ通しだったもんね。
「じゃあ次のサービスエリアで、すこし休憩とろうか」
「うん。でもね、わかったことも色々あるよ」
そういって瀬来さんが話し始めたのは、草津方面の現状。
草津にも自衛隊が来て、モンスターを駆除しダンジョンを破壊していってくれたそうな。ただワッと来てワッと帰っていったって感だったから、山の奥とかまでは念入りに調査されてないという。
なので現在もポロポロと、モンスターが山から出てくるのだとか。
「そういったニュースは、各地でよく起きとるみたいやね」
「だよね~。ま、だから離れたとこに住んでる人はまだ避難続けてたりしてて、おじいちゃんや近所の情報はまるでなかったよ」
焦っても慌てても仕方がないということを理解しており、瀬来さんはいたって冷静。二度のダンジョンスタンピードが、彼女を強く逞しく成長させていた。
そんな彼女の悲しむ顔はみたくない。
うむ、待っててね瀬来さんのお爺さん。かわいい孫が今、あなたのもとに向かってますからね。
そう、3人だ。草津へと向かうこの車内に、瑠羽の姿は無い。一本の電話からはじまった瀬来さんのお爺さん安否確認の旅。だが今回瑠羽は、参加できなかったのだ。
誓いをたてたオレ達4人は、お互いを助けるのは当然として家族や親しい友人を助けるのにも協力しあうことにしていた。なのでそれに則り瑠羽にも連絡を入れたのだが、瑠羽が草津に行くことを伝えたらお父さんから待ったがかかってしまったというではないか。
どうも一定の理解は示してくれるものの、また何が起こるか解らない現状で娘を遠出をさせるのは非常に心配。ということらしい。
だがそんなお父さんの心情も理解できる一方で、説得している時間的余裕もない。
瑠羽を勝手に連れて行ってしまうというのも出来なくはない。が、それでもし瑠羽が大怪我でもしてしまえば、関係悪化は免れない。
だからそういった事情で、瑠羽は今回おやすみなのだ。
でも瑠羽自身はそれをひどく気にしていて「万智ちゃん本当にごめんなさい!」と、出発の時間に合わせアップルパイを焼いて持って来てくれた。うん、ほんとに良い子だよ瑠羽って。
だって朝の6時だよ。どれだけ早起きして焼いてくれたんだって話よ。
そんな優しい瑠羽のくれたアップルパイを食べながら、高速道を草津に向けひた走る。うん、エンジンはすこぶる快調。昨日チェックしたらエンジンオイルがすこし汚れてたので、オイル交換もしたしね。
懸念があるとすれば、この車にはまだ自賠責しか保険がついていないこと。
いや、任意保険の手続きもちゃんとしたのよ。でもバイクと同じ保険屋に頼んだから、どうしてもすこし時間がかかってしまう。なので法定速度厳守のパーフェクト安全運転。絶対に事故は許されないのだ。
「それで…、またくどく訊いちゃうようで悪いけど、ホントに仁菜さんのほうの家族は問題ない?」
後部座席で一日からでも入れる保険を調べてくれている仁菜さんに声をかけた。瀬来さんの家族をフォローするなら、仁菜さんの家族もしっかりフォローしてあげないと。
「ん~…、だいじょうぶやでぇ。今回も商店街のみんなが、頑張ってくれたんやて」
「ほぉ、すごいな大阪商店街のチームワークは。またポコポコだかカンカンのおじさんたちが主力で?」
そんな風に地元の話題がふられると、嬉しかったのか仁菜さんは頬を綻ばせて話しはじめた。
「ふふ、今回は特にホルモン屋のオッチャンがすごかったんやて」
「へぇ~、ホルモン屋さんかぁ。で、どんなふうに凄かったんだい?」
「マサとユキが言うにはな。ホルモン屋のオッチャンが並み居るモンスターを、ギンギンに光った下駄でボコボコにしたんやて!」
「光る下駄とは、また凄いな…」
なんと、シャイニング下駄か。
エクスカリバールみたいに武器強化スクロールを使ったのかな。でもエクスカリバールはうっすら光るといった程度だから、ギンギンに光るとなると武器強化スクロールを下駄に重ね掛けしたのも??
う~む、それはまたなんという贅沢使い。
「ほんでもな。もっとすごかったんは、ホルモン屋のお姉さんやったみたい」
「え、ホルモン屋のお姉さんが?ふ~む…あ、解った!下駄ときたら、お姉さんはギンギンに光る傘で戦ったとか??」
「ブッブー!ざんね~ん、不正解やぁ~。正解は、なんと…そのホルモン屋のお姉さんは猫妖精言うん?そないな立って歩ける猫ちゃんをぎょうさん連れてな、でっかいモンスター追っかけまわしぃのギャンギャンにいてこましたんやて!ふふふ…。コォチみたいな人が、ほかにもおったんやなぁ~」
おおぅ、マジか。そげな人物が大阪に。ていうかなんか物凄い既視感あんだけど…。その猫妖精って、絶対下履いてないよね??
「うん…、うん、そっかありがとう。じゃあまた連絡するね」
一方助手席に座った瀬来さんは、現地入りする前に友人知人に連絡を入れ情報を集めていた。
「どう、なにか解った?」
「う~ん…、めぼしい情報はなにもぉ~」
疲れたのか腕をあげ伸びをする瀬来さん。おつかれさま。何件も電話かけ通しだったもんね。
「じゃあ次のサービスエリアで、すこし休憩とろうか」
「うん。でもね、わかったことも色々あるよ」
そういって瀬来さんが話し始めたのは、草津方面の現状。
草津にも自衛隊が来て、モンスターを駆除しダンジョンを破壊していってくれたそうな。ただワッと来てワッと帰っていったって感だったから、山の奥とかまでは念入りに調査されてないという。
なので現在もポロポロと、モンスターが山から出てくるのだとか。
「そういったニュースは、各地でよく起きとるみたいやね」
「だよね~。ま、だから離れたとこに住んでる人はまだ避難続けてたりしてて、おじいちゃんや近所の情報はまるでなかったよ」
焦っても慌てても仕方がないということを理解しており、瀬来さんはいたって冷静。二度のダンジョンスタンピードが、彼女を強く逞しく成長させていた。
そんな彼女の悲しむ顔はみたくない。
うむ、待っててね瀬来さんのお爺さん。かわいい孫が今、あなたのもとに向かってますからね。
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