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試験当日

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学園長は最後に試験でもして、それでダメなら本人も納得して退学してくれるだろうと考えたのか話をまとめにかかった。

「その代わり試験の内容は、メディナ先生に決めてもらおうかな」
「わかりました。それでは3日後に、生徒たちによる魔法模擬戦で彼の試験を行うことに致しましょう」

そしてメディナ先生はこの一年一切魔法を使わなかったオレが相手なら、クラスメイトの誰であっても勝てると踏んだようだ。

「だ、そうだよ。これで異論はないねグロウくん?」
「はい。寛大なるご処置に感謝申し上げます」

でも、これで時間が出来た。そううまく話が転がってくれたことが嬉しくて、つい座学で習った貴族言葉で応じてしまう。おっと、いかん。集中集中、平常心…。

「では以上だよ。退室したまえ」

それに深いお辞儀で答えると、学園長室をあとにする。

(さて…。となると猶予はないな。そしてこの学園では、ノイズが多過ぎる…)

そこでまっすぐ事務局へ向かうと、そのまま3日間の外泊手続きを申請した。

学園には寮があり、生徒のほとんどが寮住まい。休日には外に出ることも出来るが、基本ここにいる生徒は学園と寮とを往復する毎日。

しかし今まさに一年の成果が結実しようとしているのに、このまま普段通り学園生活を送っていたのでは間に合わない。そこで以前に森で見かけた、異様に魔素の濃かった祠に向かう事にした。そうだ。あそこなら静かで、誰かが来てしまうような心配もない。

(よし、今から試験当日までは瞑想し続け、なんとしても自分だけの魔石を手に入れるぞ…!!)

…。

そして、魔素の濃い祠で瞑想すること3日目の朝。遂に変化が起きた。

抑え込んでいた魔力が渦となって立ち昇ると、驚いた鳥たちが外では一斉に飛び立つのを感じる。その身体の変化に、新たに感じた鼓動に、制服の胸をはだけてみる。

すると、胸には遂にオレだけの、オレ自身が生み出した魔石が生まれていた。

「わぁ…成った。成功だ、成功したんだ…」

胸の中心には、白にやや青味の入った、水色のちいさな魔石が凛と輝いている。

「ふふ、この色…。マルローの目の色とすこし似てるかな?ってことはお揃いだな」

オレを育ててくれた女まじない師のマルローは、左目を病で患い白く濁っていた。でも今、胸に生まれ出た自分の魔石がマルローの目と似たような色をしていたことを、なんだかすこし誇らしく思う。

立ち上がり制服を直し身を整えると、祠から朝日の下にでる。

「ッ…まぶしい。でも、こういうのを生まれ変わった気分というのだろうな」

視界はどこまでも澄んでいて、吸いこむ空気がカラダを潤してくれるほど瑞々しく感じる。そこで生まれ変わったチカラはいったいどんなものかと、得意だった風魔法を近くにみえた大岩へと放ってみることに。

(ウィンドカッター!)

すると圧縮された空気の刃が生まれて飛んでいき、甲高い音をあげ大岩をまっぷたつに断ち切った。

(うん、やっぱり呪文の詠唱はいらなくなってる。それに威力もすごいぞ。風より集まりて旋し…)

さらに生み出した空気の刃が、今度は大岩を微塵に切り刻む。

(これは大満足の成果、…いや、でもちょっと威力が高すぎるかな?)

改めて制服の上から、生み出した魔石に手を触れてみる。

「…おっと、こうしてる浸ってる場合じゃないな。急がないと!」

そこで風の魔法を纏い身を軽くすると、身体強化もカラダにかけ魔法学園まで矢のように駆け戻った。

…。

「アラァ!怖くてどこかに雲隠れしたのかと思ったら、どうやらどこにも逃げずに来たようね」

魔力凝結魔石化法。この行が無事成ったことで急いで学園に戻ると、すっかり居丈高になってしまったメディナ先生がオレを待ち構えていた。

(メディナ先生…、最初はすごくいい先生だと思ったのに、どうしてこうも変わってしまったんだろう)

「時間は大丈夫ですよね?こちらの準備はできています。いつでもどうぞ!」

しかしそんなことを思いつつも、なんだかんだで試験はちゃんとやってくれるメディナ先生に感謝しつつオレも応える。

「そう…、いい度胸ね!ではみんなのなかで、誰がいくのかしら?」

校庭に居並ぶクラスメイトに向け、メディナ先生が鷹揚に手をふる。

「おう!俺がコイツに引導を渡してやるぜ!」

すると挑発めいた…、というか挑発最高潮のメディナ先生のあげた声に、この一年オレを散々っぱら馬鹿にしていた子爵Jrが名乗りをあげた。

「アラァ!デロンくんが出るの?でもデロンくんが相手じゃ、グロウくんなにも出来ずにひき肉になっちゃうかもぉ~ッ!」
「いや!先生!我も同級生に対してさすがにそこまでしないですぞッ!」

ふざけた事をのたまうメディナ先生に対し、オレより先に子爵Jrのデロンがツッコミを入れた。

むむぅ…、コイツ、出来る!!!
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