追い求めるのは数字か恋か

あまき

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…ちゅっ……っ……んちゅっ…
「っ、ん……ね、ぇ…!」
「……ちゅっ……ん?なに?」
「…音、すき…っなの?」
「っちゅ、…ふふ、気持ちいいよね」

音をわざと立てながら落とされるキスにこちらは翻弄されているというのに、彼はなんだか楽しそうで、何が面白いのかたまにふふっと笑いながらキスをしてくる。なんともないその小鳥が啄むようなキスが私にはひどく気持ち良く感じて、私も同じように音を出して啄んだ。

「ん…でも、ちょっと物足りないかも」
「そう?私は十分満足してるけど」
「またそんな余裕めいた顔して」
「余裕じゃないわ!…だって、あなたとこうしていられるだけで、私は幸せになれるみたい」
「…っ!また君は、そういうことをへらりと言うんだから」

彼が言うような物足りなさというよりは、もっと欲深いものが私の中から湧き上がってきて、目の前の大きな身体に抱きつく。

「…ねぇ、深いキスってしたことあるの?」
「うーん…それはあるよ」
「なら、私ともしよ?」
「ふふ、いいよ」

まるで小さな子どもが友だちを遊びに誘うみたいに2人でキスをする。小鳥の啄みとは違う、深い深い大人のキスを。

「っん…は…ふふ、ほんと…気持ちいいね」
「っもう、そればっか…」
「ほんとだよ。君とならなんだって気持ちいい」
「………知ってる?素肌でくっつくのも気持ちいいんだよ?」
「そうなの?それはぜひ」

そう言って今度はお互いに服を脱がせ合った。下着も取っ払って、生まれたままの姿になった私たちはただベットの上で座り込んで抱きしめあった。

「君は唇以外も柔らかいんだね」
「ね?気持ちいいでしょ」
「すごく…ねぇ、触れても?」
「優しくね」
「もちろん」

そう言って背中に触れる手がゆっくり動いて、後頭部から腰まで行き来する。優しく触れてくれているのに、しっとりとした彼の指が私の肌に吸い付いて、引っかかるような感触が私を高めていく。臀部を撫でる手は少しぎこちなく感じるけれど、大事なところを掠めると私の身体はふるりと震えた。
ピタリとくっついていた身体を少し離して見つめ合う。視線は外れないままに、彼の手が今度は優しく私の胸を包み込んだ。

「はぁー…どこも柔らかい。すべすべしてて、触っているだけで気持ちいいよ」
「っ、私だけ…」
「そんなことないよ。君はどうされると気持ちいいのか、教えて?」
「あっ…先を、きゅって、されると切なくなっちゃ、っひゃん!」
「こう?」
「そ、う…あぁん、っうれしい、」
「ふふ…っかわいい」

胸の頂を優しく何度もほぐすように動かす彼の指に喉の奥がぐるぐると鳴る。かと思えば柔らかく揉みしだくその手に堪らなくなって、彼の背中に回していた腕を彼の頭の後ろへと伸ばした。その間も視線が離れなくて、でも彼ともっと繋がりたくて、すっかり寂しがりやになった口をぱくぱくと動かしたら、彼がそっと近付いてきてまた深く重なり合った。

「ん…、っ…ぁああ…」

胸から脇、二の腕、お腹、下腹部と余すことなく撫で回される。それが優しくて暖かくて、思わず声を上げてしまう。閉じていた足の間に手が触れるだけで堪らない。それが自分だけだと思うと寂しくて、私も彼の身体に触れた。私とは違う鍛え上げられた胸も腕もお腹も、そこについたずっしりとした筋肉が感じられるだけで気持ちが高ぶった。彼の身体はどこもしっとりと濡れていて、彼も同じ高揚感に浸っているのかと思うと嬉しくなる。
彼の下腹部にあるモノにそっと触れると大きく波打っていて、それが彼の欲望だと知るやいなや、私の内側もどろりと蕩けた。

「っあぁ…ふふ…どうしよう、穂がかわいくって困る」
「え、……ふふ…なにそ、れ……っん…、っあああ!」
「ここってさ、どうすると気持ちいいのかな」

彼はその右手を私の下腹部の割れ目に触れ、するりと撫でてみせてから「教えてくれる?」なんて冗談めいて言うので、少しむっとする。余裕なのはそっちじゃないか。ちょっとやり返してみようかななんて思った私はそのままにっこりと笑ってみせた。ぎゅっとくっついていた身体を起こしてトンと彼の肩のあたりを押す。不思議そうな顔をする彼をベッドに仰向けにさせて、私は彼のお腹のあたりに跨って膝立ちをする。

「…そこから、特等席で見ててね」
「ーっ、穂!」

彼の目をじっと見つめながら自らの右手を濡れたそこに這わせてくちゅりと音を立てる。奥に進ませたいのを我慢して、入口や突起を優しくマッサージするように動かした。自分で自分の良いところを触ると、どうしても声が上がるのを抑えられない、

「あぁ、…んっ…こ、ここをね?こうしてっ……んあああ!」
「穂…」

小さな波が何度か襲ってくるけれどそれらは全て我慢して、羞恥も忘れて彼と合わさる目線も逸らさない。

「っか…かつみさ、」
「っん?なに…?」
「も、もっと…見て?」
「っ!」

どれくらいそうしていたか分からないけれど、その様子を食い入るように見つめる彼の視線に耐えきれなくなってくる。足が震えて踏ん張れずに、何度も彼のお腹の上に落ちそうになるが、彼の腕が私の腰を離さないので沈みきることはない。一人で乱れる私に彼も何度か息を漏らしていた。先に音を上げたのはどちらだったのか。

「…穂、っ穂!……もう、もう大丈夫だよ…」
「…ふっ…ん、ああっ……わ、分かった…?」

彼を見下ろす私を、上半身を起こした彼が抱きしめる。胸に当たる彼の吐息にすら反応する自分をいやらしく思いながら、私も彼の頭を抱きしめた。

「…ありがとう…僕のために頑張ってくれて」

思ったよりも切ない声でそう言うので、抱く腕に力を込めた。

「…私のこと、もっと知ってほしい」
「僕ももっと知りたい……だから、」

「今度は僕にも触らせて」とこちらを見上げる彼は切なく苦しそうで、でもその瞳の奥にある欲に触れたくて、自身の強張る身体から力を抜いた。

「ん…っ、んあ!」

彼の腕に支えられたままの腰が、彼の大きくなったそれに触れた。ぶわりと震える背中に彼も気づいたようで、優しく撫でてくれる。

「っ…か、たい…」
「君も我慢したように、僕も我慢してるんだよ?」

「触る?」と私は手を取られ、彼に触れる。さっき見た時よりも随分と大きくなったそれに不安と期待が入り混じり、奥の泉が溢れだす。

「…こんなに…興奮してくれたの?」
「それはもう」
「えへへ、うれしい」

「頑張ってよかった」と私が言うと、彼がぐんと勢いよく身体を起こして、今度は私を軽々と抱き上げて、そっとベッドに寝かせた。

「っあ」
「…正直、妬けるなぁ」

克己さんの剛直が私の割れ目にピタリと寄り添う。ぶるりと震わせながら、何かしがみつけるものを探して手を動かす。

「っん、!な、なんで…?」
「他の奴にも、こんな姿を見せたの?」

突然忘れていた羞恥心がぶわりと襲ってきた。誰かに自分で乱れる姿を見せたことなんて未だかつてない。余裕そうな彼に一矢報いたくてやり始めたけど、それでも最終的に自分で自分を慰めて高みを目指していたのを思い出す。あんな恥ずかしいことよくできたなと今更冷静になった頭はもう沸騰しそうだ。
でも、それでも、それだって全部全部…

「ひ、ひどい…!あ、あなたのために…っ!あなただから!こ、こここんなにも乱れ…て、」
「うん。ごめん。それが聞きたかった」
「え」

思わず顔を隠して彼に訴えると、聞こえてきた声はすごく優しいもので、ふと顔から手を離した。

「君があまりにもキレイに乱れていたから。女神かと思ったよ」
「め、女神って…」
「僕はきっと情けない姿しか見せれないから、少し…自信がほしくて、いらないことが過ぎった。ごめんね」

少し垂れた眉に胸の奥が締め付けられる。彼を思ってしたことが彼を追い詰めていたんだとしたら、私が頑張るのはこれからかもしれない。

「情けなくなんかないの。あなたはこんなにも素敵で…そんなあなたに見つめられて、冷静でいられるわけがないの」
「…うん」
「あなただけ。こんなにも…み、乱れるのも…それを見せたいのも」
「……うん。次は僕が頑張るから」

ふと彼が身体を起こすと、未だ萎えることのなく硬さを保つそれもふと離れていく。

「ま、まって!私もまだ頑張りたい。だって…私ばっかり…」
「君が感じると僕も感じるんだ。だからちゃんと僕も満たされてる。大丈夫だよ」

そんなに優しい声で言われると全てを委ねたくなる。甘えた子どもが母親にすり寄るように、上から私を見下ろす彼に手を伸ばす。そんな私を見て優しく笑った彼は「ちょっと待っててね、」と声をかける。

「スキンを準備させて」
「!い、いやいや…離れたくない」

てっきり伸ばした手に応えてもらえると思ったのに、離れていく彼に、寂しさを覚えて身体を起こしてしがみつく。夕暮れ時の公園の前でいやいやする子どもみたいだと自分でも思うけれど、今どうしても離れるのはいやだった。

「…ごめん、大丈夫だよ。そこの引き出しに入ってるんだ」
「ひ、きだし?」
「君を迎えに行く前に、家も掃除してそれも準備してたなんて言ったら…かっこ悪い?」

眉を下げて言う彼にふるふると首を降る。一緒に見ると真新しいスキンが入っていて、彼がここに用意しておいたことを想像するだけで胸の中が暖かくなるのが分かった。

「でも、大事にしたいから。…初めてだし、僕は君を丁寧に抱きたいと思ってる」
「…かっこ悪くない。あなたがいい」
「僕も、君がいい」

それから彼は言ったとおり丁寧にでも激しく私を抱いた。深いキスと浅いキスを繰り返して、ぎこちなくても優しい手つきは触れられる度に心が満たされるので、私も同じように彼に触れる。最初キスをしながら触れ合ったように、いやその時よりも気持ちはもっと深く繋がっていた。心と一緒に身体も満たされて、どこまでも高まっていく。

「っ、ぁあ…ん、っ!んあああ!」
「、はぁ…」
「っああ……そこっ……!だ、めぇ!」
「ん、気持ちいいね…」
「あぁ…い、いっちゃ!……ーーーーーーっ!、ぁあ…はぁ…はぁ…っ」
「…はぁ…、きれいだ」

彼に触られるだけで、なりを潜めていたモノがどんどん膨らみ、ずっと我慢していたのもあって身体はすぐに再燃した。ようやっと身体も高ぶりから開放され、力が抜けたと思ったら今度は微塵も動けなくなった。気をやってのけぞる私の首元にキスを一つ落とす彼を抱きしめたいと思うのに腕が上がらない。体中の力が抜けているのに、濡れたそこだけがはくはくと期待に満ちて震えている。

「っ、もう…いいかな」
「ん!いいの、!…いい、からぁ……」

なんとか腕を伸ばして抱きついて、腰を動かして彼のそそり立つ剛直に自身の割れ目をくっつける。くちゅりと音を鳴らすそこを揺らして「お願い」と囁くと、耳元で彼が息を呑むのを感じる。

「…っあぁ…ほんとに、たまらないなっ!」
「、!ん、ぁあああ!」

ゆっくり、でも確実に奥へと進んでくる彼を受け止めようと中が必死に蠢く。離したくない、彼がいい、彼がほしい、そう体が歓喜しているのが分かる。
進んでは戻ってを繰り返す彼を私はぎゅぅっと締め付けて、近付いた顔にお互いの熱い息を飲み合う。

「あああ!ねぇ、ま、まって…お、思ったより、おおき……」
「…っ!そんなこと言って……もう、たまらないっ…んだけど、」
「あぁ、んあっ…っうん!…私、も…っ!あああああ!」

体の奥にぶつかった衝撃に目の前に星が飛ぶ。なのにもっと奥へ進もうとするそれに、思わず声を上げる。それ以上はだめと首を降った。

「ま、まって!まってまって!っいやぁ…!」
「はっ…み、のる…?どうした?」

さっきも驚いたのに、また更に一回りも大きくなった彼のモノが進もうとするその先は、今まで感じたことのない未知の領域だった。私が思うよりもよっぽど私の最奥は身体の深部にあることを、今身体で思い知ったのだ。感じたことのないところへと入ってくる感覚に腰がそくぞくと震える。こんなに大きく奥へと入ってくる感覚は初めてで、不安が大きいのに、こちらを心配する優しく欲情した彼の表情に期待する私もいて、ぐちゃぐちゃな思いから涙が溢れた。

「ど、どうしよう…!んんっ、そ、それ以上は…っ!」
「っ…どうしたの?」
「…っああ…っ…はじ、めてなのっ…!……こ、こんな奥…っ!んんああああああ!だめぇぇええっ!!」
「……ははっ、そういうこと?……っんー、まだ全部入ってないんだ」
「っえ、ええっ?あっ!ああああん!そ、そんなのっ……」

それほどまで彼のモノが大きいのか、その圧迫感と切り開かれる感覚に震えは全身へと行き渡る。

「んー…だめ、かなぁ?っ、」
「っだ、だめっ…じゃ…ない、けど…あ、あああああ…!」
「ふふっ……そっかー…はじめて、なんだ?」
「あ、ああ…!な、なん………あああ!…だ、だめかも……っ!…っは、ぁぁ……ああっ…あああああん!…っーーーーーーーーーー!!!!」

どんっと中で音がしたような気がした。それは一度で終わらずに、彼が突く度に何度も何度も、経験のない衝撃が快感を伴って一気に襲ってくる。声が詰まって出てこない。

「ここが、はじめて?」
「んああ!…そう!そ、そこぉっ!だめぇ!!もうっ!…、んっ、おかしく…!!」
「ふふ、そっかぁ…ん、」
「あ、ああ!か…克己、さん…!っ!わ、たしっ…ん
んんーーーーーっ!」
「ふっ……声、出ないの?」
「あっ…だ、だって…!んああああ!…そ、そんなとこ……っい、今まで…!あぁ、だめ…!だめなの!」
「ほんとに、だめなの?」
「んあっ、ぅんんっ!…だ、だめじゃなっ…!!…っんあああああああああ!!」

自分でも何を言っているのか分からない程に、頭の中がぐちゃぐちゃして、下腹部はずっと痙攣している。恐怖と快感が渦めいて気が遠のきそうになる。最奥にゴツゴツと当たる彼をぎゅっと締め付けて、叫ぶように彼の名前を呼び続けた。

「そうやって、これからはずっと、僕だけを欲しがってね」

彼が最後になんと言ったか聞き取れないまま、奥で脈打つそれに私の中も身体も震えが止まらなくて、彼に抱きついた。全身の力が緩まらないまま意識だけは遠のいていって、起きたときもこのまま抱きしめ合っていたいなんて頭の片隅で思っていた。








「…る、穂。起きて」
「……ん、……かつ、みさん…」

すっかり薄暗い外に何時だろうと思って身体を起こそうとするけれど、気怠い身体は驚くほど重たくて動かなかった。うつ伏せになって腕で上体を起こすも、力が入りきらなくてぽすんとベッドに落ちてしまう。

「ふふ、かわいい」
「…もう、優しくしてって言ったのに」
「んー、ほら。初めてだから、僕」

にっこり笑う彼が今度は手助けしてくれて、ようやく起き上がれた。意識が遠のいた後、彼が身体を清めてくれたらしく、あんなに乱れたはずなのにさっぱりとしている。シーツもきれいになっていて、すべすべの感触が気持ちいい。彼の胸に体重を乗せながらそのまますり寄る。

「…なんで初めてなの?」
「ん?どういうこと?」
「ほら、深いキスはしたことあるって」
「あぁ…そこに至るまでの人に出会えなかったんだよ。だから、僕にとって穂は運命の人」
「えー?、ふふ…なにそれぇ…」

彼の言葉に思わず笑ってしまうと、彼が優しく包み込むように抱きしめてくれた。

「だから、僕の初めてをもらってくれてありがとう」
「ふふ……私だけでしょう?……大事にするわ」
「…君の"初めて"の奥もすごくよかったね」

「僕も大事にするよ」そう囁いてくる彼の腕に軽く噛み付く。ずるい。彼があんなにも激しく熱いものを持ってるなんて知らなかった。乱れきった疲れと呆れと、はたまた"私だけ"の優越感が入り混じって、すりすりと彼の胸に顔を埋める。

「まだ眠い?お腹はすかない?」
「んー…もう少し寝たいかも、」
「そう。ならもっとゆっくりしよう…それに、」
「うん?」
「そのきれいな姿で安心して身を任されても、僕も我慢ができなくなっちゃうし」

そういえば彼はちゃっかり服を着ているのに、私は薄いシーツで身体を覆っているだけで、その姿に少し気恥ずかしさが生まれる。けど、彼がきれいだと言ってくれるのが嬉しくて、自分からぎゅっと抱きついた。

「……まずは一緒にお風呂入りたい、かも」
「ふふ、それはよろこんで」


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