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【第五章】皆、覚悟を決める
父子の共闘(2)
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「魔術は使えねぇが、腕力なら!」
「俺たち、力なら誰にも負けねぇ!」
「そうだ! 俺たちも!」
一人の声が伝染していき何人もの男がわらわらと駆け寄ってくる。ついには伯爵邸に身を寄せていた漁師たちまで外に出てきて、皆が一列に並んで壁を押し出した。
「え……ま、まさか!」
一流の船大工や漁師たちの腕力は凄まじく、鍛え抜かれた騎士たち後からも加わり、リメイが前のめりになって転けるほど壁が動いた。
蠢く水獣が海へと押し戻され、それは神の救いにも思えるほど頼もしかった。
「しっかりしろ、ヤッバ」
「っ、アリエルさん」
「俺の仕事は人々の安寧を守ることだ。だからお前も耐えろ」
「分かってる!」
隣に駆け寄ってきて壁を押し始めたアリエルにリメイは強く言い返した。
しかし、水獣の力は弱まることを知らない。
トプンッ
「っ……は?」
水音がして見上げると頭上高くに覆ったゼリー状のひらがなの壁を押し破り、分身の塊が小さな隙間を縫ってボトンッと落ちてきた。
陸に降り立ったそれは二足歩行の獣に形を変えて、突如として中の人間に襲いかかる。まるで水でできた兵士のようだった。
「まさか陸上戦ができるの!?」
「俺に任せろ」
アリエルが腰の剣を携えながら走った。抜いた剣先が衝撃波を伴って水の兵士に当たる。
ビシャッ!
水音を立てて崩れ落ちたそれにリメイは息を呑んだ。
(あの水の兵士は物理攻撃が効くのね……それなら)
「出でよ《く》! 燃えろ《火 フォティア》!」
リメイが二つの《く》を放ち火を纏わせる。それをタマが咥え、ブーメランのように投げた。
ぐるぐると宙を回る《く》が落ちてきた水の兵士たちを散らせていく。簡単に海水に戻っていくそれらにリメイは少し安堵した。
その時――
「っ、きゃあああ!」
女の叫び声に視線をやると、一体の水の兵士が人に襲いかかってた。そこにいたのは――
「っ! マリィっ!」
「ばかな! あの子まで!」
リメイとその後ろにいた伯爵が同時に叫ぶ。かつての側仕えとその脇にもう一人小さな子どもが背中を見せて蹲っていた。
「出でよ! 《ふ》!」
リメイの手元から大きな《ふ》が飛び出て、鳥のように両側の点を羽ばたかせながらマリィのもとへ飛んでゆく。近くの騎士が水の兵士を散らせ、その間に《ふ》がゆっくりと降り立った。
「マリィ! 乗りなさい!」
「え、っ」
「早く! 逃げて!!」
安心する間もなく近くにもう一体水の兵士が現れる。壁から離れられないリメイに代わり、タマがひとっ飛びで駆け寄った。
喰らい尽くした水の兵士を尻目にリメイとマリィの金切り声が同時に響き渡る。
「~~っ、お嬢様!」
「いいから! 乗りなさい!」
泣き叫ぶマリィをすくい上げるように背に乗せ、《ふ》が高く飛び上がった。小さい子どもも無事なようでリメイは大きく息を吐く。
リメイはもう一度前に向き直って自身の両手を見つめた。息が上がり、その手は震えている。これまでにないほど魔力を消耗し体が重く感じた。
(だけどまだ……まだやれるわ)
「俺たち、力なら誰にも負けねぇ!」
「そうだ! 俺たちも!」
一人の声が伝染していき何人もの男がわらわらと駆け寄ってくる。ついには伯爵邸に身を寄せていた漁師たちまで外に出てきて、皆が一列に並んで壁を押し出した。
「え……ま、まさか!」
一流の船大工や漁師たちの腕力は凄まじく、鍛え抜かれた騎士たち後からも加わり、リメイが前のめりになって転けるほど壁が動いた。
蠢く水獣が海へと押し戻され、それは神の救いにも思えるほど頼もしかった。
「しっかりしろ、ヤッバ」
「っ、アリエルさん」
「俺の仕事は人々の安寧を守ることだ。だからお前も耐えろ」
「分かってる!」
隣に駆け寄ってきて壁を押し始めたアリエルにリメイは強く言い返した。
しかし、水獣の力は弱まることを知らない。
トプンッ
「っ……は?」
水音がして見上げると頭上高くに覆ったゼリー状のひらがなの壁を押し破り、分身の塊が小さな隙間を縫ってボトンッと落ちてきた。
陸に降り立ったそれは二足歩行の獣に形を変えて、突如として中の人間に襲いかかる。まるで水でできた兵士のようだった。
「まさか陸上戦ができるの!?」
「俺に任せろ」
アリエルが腰の剣を携えながら走った。抜いた剣先が衝撃波を伴って水の兵士に当たる。
ビシャッ!
水音を立てて崩れ落ちたそれにリメイは息を呑んだ。
(あの水の兵士は物理攻撃が効くのね……それなら)
「出でよ《く》! 燃えろ《火 フォティア》!」
リメイが二つの《く》を放ち火を纏わせる。それをタマが咥え、ブーメランのように投げた。
ぐるぐると宙を回る《く》が落ちてきた水の兵士たちを散らせていく。簡単に海水に戻っていくそれらにリメイは少し安堵した。
その時――
「っ、きゃあああ!」
女の叫び声に視線をやると、一体の水の兵士が人に襲いかかってた。そこにいたのは――
「っ! マリィっ!」
「ばかな! あの子まで!」
リメイとその後ろにいた伯爵が同時に叫ぶ。かつての側仕えとその脇にもう一人小さな子どもが背中を見せて蹲っていた。
「出でよ! 《ふ》!」
リメイの手元から大きな《ふ》が飛び出て、鳥のように両側の点を羽ばたかせながらマリィのもとへ飛んでゆく。近くの騎士が水の兵士を散らせ、その間に《ふ》がゆっくりと降り立った。
「マリィ! 乗りなさい!」
「え、っ」
「早く! 逃げて!!」
安心する間もなく近くにもう一体水の兵士が現れる。壁から離れられないリメイに代わり、タマがひとっ飛びで駆け寄った。
喰らい尽くした水の兵士を尻目にリメイとマリィの金切り声が同時に響き渡る。
「~~っ、お嬢様!」
「いいから! 乗りなさい!」
泣き叫ぶマリィをすくい上げるように背に乗せ、《ふ》が高く飛び上がった。小さい子どもも無事なようでリメイは大きく息を吐く。
リメイはもう一度前に向き直って自身の両手を見つめた。息が上がり、その手は震えている。これまでにないほど魔力を消耗し体が重く感じた。
(だけどまだ……まだやれるわ)
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