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【第四章】女、愛を得る
終古の契(1)
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肌に触れるか触れないか、そのギリギリの強さでホークの指がリメイの体を撫でる。リメイは漏れ出る喘ぎを飲み込もうとして首を仰け反ると、その喉元にホークの唇が寄せられた。
「っ、やぁ」
「永遠を誓う契よ。これを結べばアタシたちは確約を得られるの。死ぬときは一緒だし、生きている間はずーっと一緒にいられる」
悶えるリメイの横でホークがうっとりと恍惚な笑みを浮かべている。触れられる度に生まれる熱が、いとも簡単に思考を遮断していった。
「ふ……っんぁ」
「ねぇ、契るって言って? お互いの唯一無二となれるから」
「まっ……ん、ぅぁ」
ホークが体を起こしてリメイの体を跨ぐ。
リメイの顔にかかる黒髪を自身の手で払ってから、その桜色を荒々しく塞いだ。
下唇をきつく噛み、リメイが息を求めて口を開くと、その中を分厚い舌で掻き回す。逃げ惑うリメイの舌をホークのそれが絡め取った。
シーツの上では漆黒と白銀が入り交じっている。
「ん、っぁ」
ホークの手がじくじくと疼くお腹の上を擦ると、リメイの体はどんどん熱を溜め込んでいった。
「契るって言って。望んで」
少しだけ離れたホークの唇が言葉を吐き出す。啄むようなキスの後、音を立てて離れた唇同士が糸で繋がっていて、それがまるでホークの望む契の形に思えた。
「ほー、く」
「っなに」
リメイはその逞しい首元にしがみつくように両腕を回した。黒髪がリメイの白い腕に巻き付くように垂れ下がる。
(私の思いを、信じて)
リメイは心の中の思いを《言葉》に乗せる。
「《すき》よ……《だいすき》……」
「っ……り、めい」
「《だいすき》」
リメイが言葉を重ねるほどひらがなが溢れ出した。
少し掠れた草書体のものや、ぼってりとしたポップ体。すらっとした明朝体や少し変わった丸文字体など、リメイの思いを具現化させた様々な《すき》が部屋を埋め尽くしていく。
「わ、たしはきっと……ホークに会うために、生まれてきたのよ」
「っ!」
夫婦になろうと誓った日以来リメイはずっと考えていた。ホークは師匠だ。それは二人の関係を表すのに最適な言葉であったし、ある意味リメイにとって唯一無二の関係だった。
それでもリメイはホークと夫婦になりたいと思った。それは二人の繋がりに執着するホークを嬉しく思う自分がいたからだ。
「ほんっとにあんたって子は……不思議ね、読めないのによく伝わったわ」
「ほんと? つたわった?」
頬を撫でられ優しく降ってきたキスに、今度こそリメイは全身の力を抜きホークに身を委ねた。両腕が回らないほど大きく逞しい背中に手をやると、ホークの体がピクリと跳ねる。
「……? 《すき》よ、《だいすき》だから」
「っ、分かった、もう……分かったから」
ホークはリメイの胸元に顔を埋めて抱きしめるように両手をその背に回す。
「……ごめん」
「な、に」
「それでもアタシは……っ契を結びたい」
体を丸めるホークが掠れた声で囁いた。
「リメイと二度と離れないための契を……リメイをアタシに縛り付ける契を、この体に刻みたい」
ホークの手がリメイの背中を這いながらその小さな肩を撫でる。もう片方の手がその服に手を掛けて素肌に触れた。その手はとても熱くて、リメイの体をより火照らせる。
「ぁっ、ん……っいいよ」
リメイの吐息混じりの声に、ホークの肩が跳ねた。
「むすんでいいよ……ちぎり」
「リメイ」
「《すき》に、かわりないから……っんん!」
その口付けに甘さなんてどこにもなかった。下から噛みつき貪りつくようなそれに、一瞬にして呼吸を奪われ、流れ込んでくる漆黒の激情をリメイは一身に受け止めた。背中に回した手でその硬い皮膚に爪を立て、飲み込まれないよう必死に食らいついた。
「っ、やぁ」
「永遠を誓う契よ。これを結べばアタシたちは確約を得られるの。死ぬときは一緒だし、生きている間はずーっと一緒にいられる」
悶えるリメイの横でホークがうっとりと恍惚な笑みを浮かべている。触れられる度に生まれる熱が、いとも簡単に思考を遮断していった。
「ふ……っんぁ」
「ねぇ、契るって言って? お互いの唯一無二となれるから」
「まっ……ん、ぅぁ」
ホークが体を起こしてリメイの体を跨ぐ。
リメイの顔にかかる黒髪を自身の手で払ってから、その桜色を荒々しく塞いだ。
下唇をきつく噛み、リメイが息を求めて口を開くと、その中を分厚い舌で掻き回す。逃げ惑うリメイの舌をホークのそれが絡め取った。
シーツの上では漆黒と白銀が入り交じっている。
「ん、っぁ」
ホークの手がじくじくと疼くお腹の上を擦ると、リメイの体はどんどん熱を溜め込んでいった。
「契るって言って。望んで」
少しだけ離れたホークの唇が言葉を吐き出す。啄むようなキスの後、音を立てて離れた唇同士が糸で繋がっていて、それがまるでホークの望む契の形に思えた。
「ほー、く」
「っなに」
リメイはその逞しい首元にしがみつくように両腕を回した。黒髪がリメイの白い腕に巻き付くように垂れ下がる。
(私の思いを、信じて)
リメイは心の中の思いを《言葉》に乗せる。
「《すき》よ……《だいすき》……」
「っ……り、めい」
「《だいすき》」
リメイが言葉を重ねるほどひらがなが溢れ出した。
少し掠れた草書体のものや、ぼってりとしたポップ体。すらっとした明朝体や少し変わった丸文字体など、リメイの思いを具現化させた様々な《すき》が部屋を埋め尽くしていく。
「わ、たしはきっと……ホークに会うために、生まれてきたのよ」
「っ!」
夫婦になろうと誓った日以来リメイはずっと考えていた。ホークは師匠だ。それは二人の関係を表すのに最適な言葉であったし、ある意味リメイにとって唯一無二の関係だった。
それでもリメイはホークと夫婦になりたいと思った。それは二人の繋がりに執着するホークを嬉しく思う自分がいたからだ。
「ほんっとにあんたって子は……不思議ね、読めないのによく伝わったわ」
「ほんと? つたわった?」
頬を撫でられ優しく降ってきたキスに、今度こそリメイは全身の力を抜きホークに身を委ねた。両腕が回らないほど大きく逞しい背中に手をやると、ホークの体がピクリと跳ねる。
「……? 《すき》よ、《だいすき》だから」
「っ、分かった、もう……分かったから」
ホークはリメイの胸元に顔を埋めて抱きしめるように両手をその背に回す。
「……ごめん」
「な、に」
「それでもアタシは……っ契を結びたい」
体を丸めるホークが掠れた声で囁いた。
「リメイと二度と離れないための契を……リメイをアタシに縛り付ける契を、この体に刻みたい」
ホークの手がリメイの背中を這いながらその小さな肩を撫でる。もう片方の手がその服に手を掛けて素肌に触れた。その手はとても熱くて、リメイの体をより火照らせる。
「ぁっ、ん……っいいよ」
リメイの吐息混じりの声に、ホークの肩が跳ねた。
「むすんでいいよ……ちぎり」
「リメイ」
「《すき》に、かわりないから……っんん!」
その口付けに甘さなんてどこにもなかった。下から噛みつき貪りつくようなそれに、一瞬にして呼吸を奪われ、流れ込んでくる漆黒の激情をリメイは一身に受け止めた。背中に回した手でその硬い皮膚に爪を立て、飲み込まれないよう必死に食らいついた。
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