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【01】 偽善者との出会い
*001* 久しぶりの日本
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リクライニングシートに身体を預け、特に興味も無さそうに経済情報誌に目を向けていた貴桜 大河にキャビンアテンダントが愛想良く語り掛けてくる。
「貴桜様、何か新しい読み物をお持ち致しますか?」
その様子は、媚びている気配が満載で、大河は内心溜め息を吐く。
「いや、結構だ。」
当り障り無く答えるが、その言い方は大変素っ気無い。
「間も無く、着陸に向けて降下致しますので、お困りの事があれば遠慮なくお申し付けくださいませね。」
残念そうな表情を隠しもせず、そう言いながら、名残惜しそうに大河の身体に軽く触れてくる。
自然なボディ・タッチに見せてはいるものの、大河にとって、こういうお誘いは何時もの事だった。
これが、もう少し若い頃ならば、移動中の暇を持て余していた時間でそんなゲームに興ずるのも悪くは無かったが、今年四十歳を迎える大河にとっては、全く食指が動かない。
逆に、そういう事が煩わしくなってしまった大河は、ここ暫くはプライベートジェット機で移動していたが、今回は急遽移動する事が決まったタイミングと同じくして不幸にも機材をメンテナンスに出してしまった為、止むを得ず、民間の航空会社を利用する事となったのだった。
今回の事態を受け、早急にスペア機を一機購入しようと心に誓った大河だった。
煩わしさを避ける為、気を利かせて、側近のアルベルトがファーストクラスを全て貸し切りにしたが、それでも幾許か、肩の力を抜ける程度で、結局はプライベートジェットで伸び伸びと過ごす快適な空の自室とは大きく違っていた。
以前は、跡継ぎ云々と口煩く言われ、ただ、静かにそこに居るだけのお嬢さん達との結婚話が多数持ち上がっていたが、全く興味を持たずに適当に後腐れの無い花を摘みながら仕事に没頭し、それを結果に繋げていくうちに、段々と周りから結婚についてとやかく言われる事も無くなった。
今ではすっかり仕事人間と化してしまい、恋とは無縁になってしまったが、特段、不自由を感じている訳でも無い。
歳を重ねた事で、恋愛感情が枯れてしまったのだろうか?
それとも、燃えるような情熱に火をつける相手に巡り合えていないだけだろうか?
何れにしても、恋よりも仕事の方が、彼にとっては面白く、打てば響く事だけは間違い無かった。
年を追う毎に、大河の行動一つで世の情勢に影響を与える事が増えてきた手応えは、着実に彼の気持ちを高揚させていく。
そんなスリリングな環境は、女性達と駆け引きするよりもずっとエキサイティングな日々だった。
「貴桜様、何か新しい読み物をお持ち致しますか?」
その様子は、媚びている気配が満載で、大河は内心溜め息を吐く。
「いや、結構だ。」
当り障り無く答えるが、その言い方は大変素っ気無い。
「間も無く、着陸に向けて降下致しますので、お困りの事があれば遠慮なくお申し付けくださいませね。」
残念そうな表情を隠しもせず、そう言いながら、名残惜しそうに大河の身体に軽く触れてくる。
自然なボディ・タッチに見せてはいるものの、大河にとって、こういうお誘いは何時もの事だった。
これが、もう少し若い頃ならば、移動中の暇を持て余していた時間でそんなゲームに興ずるのも悪くは無かったが、今年四十歳を迎える大河にとっては、全く食指が動かない。
逆に、そういう事が煩わしくなってしまった大河は、ここ暫くはプライベートジェット機で移動していたが、今回は急遽移動する事が決まったタイミングと同じくして不幸にも機材をメンテナンスに出してしまった為、止むを得ず、民間の航空会社を利用する事となったのだった。
今回の事態を受け、早急にスペア機を一機購入しようと心に誓った大河だった。
煩わしさを避ける為、気を利かせて、側近のアルベルトがファーストクラスを全て貸し切りにしたが、それでも幾許か、肩の力を抜ける程度で、結局はプライベートジェットで伸び伸びと過ごす快適な空の自室とは大きく違っていた。
以前は、跡継ぎ云々と口煩く言われ、ただ、静かにそこに居るだけのお嬢さん達との結婚話が多数持ち上がっていたが、全く興味を持たずに適当に後腐れの無い花を摘みながら仕事に没頭し、それを結果に繋げていくうちに、段々と周りから結婚についてとやかく言われる事も無くなった。
今ではすっかり仕事人間と化してしまい、恋とは無縁になってしまったが、特段、不自由を感じている訳でも無い。
歳を重ねた事で、恋愛感情が枯れてしまったのだろうか?
それとも、燃えるような情熱に火をつける相手に巡り合えていないだけだろうか?
何れにしても、恋よりも仕事の方が、彼にとっては面白く、打てば響く事だけは間違い無かった。
年を追う毎に、大河の行動一つで世の情勢に影響を与える事が増えてきた手応えは、着実に彼の気持ちを高揚させていく。
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