ブラッディ・マリー

【04】 花嫁修業、始まる

＊046＊ 別れのご挨拶

そうして、エイミーが全く手出しする事が出来ないまま、アリスの歓迎ディナーは終わりを告げた。
本当に、何も無く…。
アンナとアリスも、最後に抱き合いながら別れを告げる。

「アリスちゃん、今日は会えて嬉しかったわ。明日から、作法を教えるのでお城にいらっしゃいね。」
「お城…? はい、解りました!! アンナお姉さん。」

アリスは、一瞬、お城の意味が解らなかったが、イーズの新宅もお城のようなものだし、アンナの言葉もそんな感じだろう…と、軽く聞き流した。

「アンナ、明日から、アリスの事、よろしく頼むね。」
「任せておいて。」

イーズとアンナも抱擁しながら、別れの挨拶を交わす。
アリスは、その様子を幸せそうに見つめているのだった。
イーズと一緒に、アンナを見送り、今日、宴を主催してくれたグランディア家の当主とエイミーにも、アリスは感謝の気持ちを込めて、挨拶する。

「今日は、素敵なご飯を食べさせて頂いて、ありがとうございました。」

ペコリと頭を下げるが、相変わらず、アリスの感謝のポイントは…多少ズレているのだった。

「さぁ、アリス、帰るよ?」

イーズの言葉に、コクンと頷き、腕に手を置いた。

「父上、母上、今日は、アリスの為に素敵な宴席を用意してくれてありがとう。アンナに依頼する手間が省けて助かったよ。」

そう言い残すと、フワリと風を巻き上げ、イーズとアリスの姿が消えた。

「ちょ…また、俺だけ置いてけぼりかよ～ッ!!」

ウィルは、グランディア家当主とその妻に頭を下げ、自分の父親への挨拶もそこそこに、叫びながら、玄関口へと向かって走った。
子供の頃から変わらないが、相変わらず、振り回されているウィルだった。
ウィルが、イーズが作ったお城へと辿り着く前に、アリスを抱き締めながら二人の部屋へと戻ったイーズは、ベッドの上にアリスをちょこんと座らせる。

「アリス、疲れていないかい?」
「うん、大丈夫よ。美味しい食べ物がいっぱいだったわ!!」
「アリスが気に入ったならば良かった。」

イーズは、満面の笑みでアリスの言葉に答えた。

「さぁ、今日は、初めての人に沢山会っているから、疲れているだろう? ゆっくり休んで、明日からアンナのところで色々と教えて貰おうね。」
「うん。楽しみ～♪」

アリスは、本当に明日からアンナに会える事を心から楽しみにしていた。

「さぁ、アリス、寝る為に着替えないと。」

イーズがアリスの為に用意したナイティは、セクシーさは無いが、フリルたっぷりのとっても可愛らしいパジャマだった。
大切なので、もう一度言います…パジャマです!!