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【07】 撃破
*064* 兄妹喧嘩
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悠李は、驚きと共に周りに居るスタッフに目をやる。
笑顔でアイコンタクトをされても全く解決にはならないと判断し、目の前に座る兄に聞く。
「お兄ちゃん、飛行機が動き出している気がするんだけど?」
「うん、そうだね。もう出発しないと、公務に影響が出るからね。」
笑顔で簡単に言うが、移動する距離は簡単な距離では無い。
「それじゃあ、もっと話したいけれど、ここで降りるね。」
「ユーリ、そんな訳にはいかないのは、君だって解ると思うけど?」
確かにそうだ。
しかし、ここで降りなければ、帰ってくるのも大変な事になってしまうし、訓練に出られずに退社する事になってしまう。
「そ…そうなんだけど…このままじゃ、退社する事になっちゃうよ!!」
「僕と一緒に居れば、生活には困らないと思うけど?」
「そう言う問題じゃ…。」
悠李は、優しい兄に口で勝てた事は無い。
優しいけれど、筋道がしっかりとしていて、何処にもブレるところが無い完璧な人だからだ。
二人の会話を聞いていたのだろう…周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
笑っていた一人が、立ち上がり、悠李に話し掛けてきた。
「それでは、退社にならないように、私から社の方には、話を通しておきましょう。」
「……?」
悠李は、不思議に思いその人物の顔をマジマジと見つめる。
「気付いていないようですね。貴方と同じ訓練を受けたのですよ。」
そう言うと、その人は肩を揺らして楽しそうに笑い続けた。
「あ…あぁッ!! そうなんですか!! あの、お願いします!!」
シートベルトを外して礼をしようとする悠李を手で制して、そのまま座っているように指示される。
その意図を汲んだ悠李は、座ったまま深く礼をした。
「ユーリ…ボディ・ガードになろうとしているの?」
二人の会話を聞いていて、兄がその会話に入ってくる。
「あぁ…うん…一応。」
「直ぐに辞めなさい!! ユーリがそんな危ない事をしているなんて…。」
「…でも、人を守る大切な仕事だよ!!」
「解っているよ。きっと、ユーリが思っているよりもちゃんと認識しているつもりだ。僕は、何時も身を挺して守って貰っているからね。」
「……うん。」
「僕は、君の生活を守る為に単身で家を出る覚悟を決めたんだ。その事は解っている?」
「……充分に、理解しているつもりです…。」
悠李の言葉は、尻窄みに小さくなっていく。
「君を籠の鳥にする事は簡単なんだよ? 僕の一声でね。」
「そう…ね。」
悠李は、兄と涙ながらに別れた時の事を思い出していた。
笑顔でアイコンタクトをされても全く解決にはならないと判断し、目の前に座る兄に聞く。
「お兄ちゃん、飛行機が動き出している気がするんだけど?」
「うん、そうだね。もう出発しないと、公務に影響が出るからね。」
笑顔で簡単に言うが、移動する距離は簡単な距離では無い。
「それじゃあ、もっと話したいけれど、ここで降りるね。」
「ユーリ、そんな訳にはいかないのは、君だって解ると思うけど?」
確かにそうだ。
しかし、ここで降りなければ、帰ってくるのも大変な事になってしまうし、訓練に出られずに退社する事になってしまう。
「そ…そうなんだけど…このままじゃ、退社する事になっちゃうよ!!」
「僕と一緒に居れば、生活には困らないと思うけど?」
「そう言う問題じゃ…。」
悠李は、優しい兄に口で勝てた事は無い。
優しいけれど、筋道がしっかりとしていて、何処にもブレるところが無い完璧な人だからだ。
二人の会話を聞いていたのだろう…周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
笑っていた一人が、立ち上がり、悠李に話し掛けてきた。
「それでは、退社にならないように、私から社の方には、話を通しておきましょう。」
「……?」
悠李は、不思議に思いその人物の顔をマジマジと見つめる。
「気付いていないようですね。貴方と同じ訓練を受けたのですよ。」
そう言うと、その人は肩を揺らして楽しそうに笑い続けた。
「あ…あぁッ!! そうなんですか!! あの、お願いします!!」
シートベルトを外して礼をしようとする悠李を手で制して、そのまま座っているように指示される。
その意図を汲んだ悠李は、座ったまま深く礼をした。
「ユーリ…ボディ・ガードになろうとしているの?」
二人の会話を聞いていて、兄がその会話に入ってくる。
「あぁ…うん…一応。」
「直ぐに辞めなさい!! ユーリがそんな危ない事をしているなんて…。」
「…でも、人を守る大切な仕事だよ!!」
「解っているよ。きっと、ユーリが思っているよりもちゃんと認識しているつもりだ。僕は、何時も身を挺して守って貰っているからね。」
「……うん。」
「僕は、君の生活を守る為に単身で家を出る覚悟を決めたんだ。その事は解っている?」
「……充分に、理解しているつもりです…。」
悠李の言葉は、尻窄みに小さくなっていく。
「君を籠の鳥にする事は簡単なんだよ? 僕の一声でね。」
「そう…ね。」
悠李は、兄と涙ながらに別れた時の事を思い出していた。
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