独裁者サマの攻略法

【07】 撃破

＊063＊ まさかの再会

黒塗りの車とバスは並走を続ける。
その並走の長さから、悠李の頭の中で、到着先が一緒かもしれない…という一つの仮説が浮かび上がってきた。
時間が経つにつれ、その仮説は確信に変わり、本当に空港へと進んで行った。
移動に慣れた訓練生は、孤島へと戻る為の飛行機へと乗り込む。
悠李は、後ろ髪引かれる思いで、未だ飛行機に乗れずにいた。
駐機場の横には、何時もは無い、気になるプライベートジェット機がある。
そのプライベートジェットを凝視していると、忘れられない相手が乗り込もうとしている姿が見えた。
悠李は、思わず走り出す。
足音に、その人を守ろうと周りを囲むボディ・ガード達が壁となった。
構わずに走り続け、その人を目指す。

「お兄ちゃんッ!!!!!!」

悠李の声に、その人が振り返った。

「…ユーリ…?」

その人の声に反応し、周りのボディ・ガード達は顔を見合わせて、対応を考えあぐねている。

「お兄ちゃーんッ!!」

再び、大きな声で叫び、一目散に走り寄る。
その人も、周りのボディ・ガードを制し、悠李の為に道を開けさせた。
周りのボディ・ガード達も、着衣で悠李が、自社の訓練生である事が解り、少しその緊張が緩む。
悠李は、走り切ってその人に飛びつく。

「ユーリ?」
「お兄ちゃんッ!!」

悠李は、ただただ、その人に呼び掛ける事しか出来なかった。

「ここは、まだ危険が伴いますので、中へ。」

警備の都合上、機内に乗り込むように促される。

「悠李、一緒においで。少し、中で話そう。」

そう導かれ、機内へと連れて行かれた。
中に入ると、予想外の人物に機内が慌てだす。
それに動じる事無く、フカフカのダイニングセットに案内された。

「ユーリ、とりあえず座って。」

後ろから両肩に手を置かれ、ソファに座るように促された。
悠李が座った事を確認すると、その人も向かい側のソファに腰掛けた。
離陸前だが、直ぐにコーヒーが淹れられて目の前に出された。

「会えると思っていなかったから、ビックリしたよ。元気だった?」
「お兄ちゃんは?」
「この通り、元気だよ。」

両手を広げて肩を竦める。

「そうだね。元気そうで安心した。」

悠李は、目に涙を浮かべながら笑う。

「私も…暫く会ってはいないけれど、多分、お父さんとお母さんも元気だよ。」
「そうか。」

兄は、以前と変わらず、優しく包み込むように悠李に笑い掛けた。

「お兄ちゃんは、新しい生活には慣れた?」

コーヒーを口に含みながら話題をを振る。

「流石に、何年も経つからね。もう大丈夫だよ。」

少し自嘲気味に…でも、以前と変わらずに穏やかに笑いながら話す。
その時、目の前のコーヒーが下げられ、カチャリとシートベルトが閉められた。
代わりに蓋付きのカップのコーヒーに変えられたと思った時には、飛行機が動き出していた。