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【07】 撃破
*062* 忘れられない人
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悠李が海組のフォローしている間に、酒井が戻ってきた為、状況を伝えて、花組に戻った。
花組の訓練生達の準備は、副組長の石川が滞り無く進めておいてくれたらしく、悠李が戻った時にはすっかり整っていた。
駐機場へと移動し、訓練生全員で飛行機に乗り込む。
程無くして、飛行機は本社にアクセスする空港へと到着した。
既に慣れている訓練生達は、流れ作業のようにバスに乗り込む。
もう、何か月も繰り返している為、各訓練生達も何となく、どの組がどの辺りに座るのか決まっている。
一通りのスキルチェックが終わった。
何時もと違う事は、チェックしている人数が多くてゴミゴミしていた事だろうか?
社内も、人とすれ違う事等殆ど無いのに、今日は結構な頻度ですれ違う。
スキルチェックの予定が変更になると、一般企業のような光景も見られるのだという事を初めて知った瞬間だった。
帰りのバスに乗り込むが、この時ばかりは、組長や副組長は点呼をしない。
脱落者がいる場合、正しいか否かの判断が出来ない為だ。
それでも、何時ものクセでザッと人数の確認をすると、行きの人数と変わらなかった。
今回のスキルチェックは、初めて脱落者がいないのだという事を知る。
予定が変更になって、チェックが甘かったのか…訓練生達の努力の賜物か判らないが、また、一か月間、このメンバーで訓練出来るという事にホッとした悠李だった。
動き出したバスから窓の外を見ていると、まさか人物が見えた気がした。
黒塗りの車の後部座席に乗り、通常では有り得ないが、ほんの少しだけ窓を開けている。
その隙間から、見えた顔は悠李にとって忘れられない人だった。
周りの訓練生が悠李の行動に興味を持っていない事を確認すると、窓に顔を近付け、ジッと黒塗りの車の様子確認する。
最後にその姿を目にしたのはどれくらい前だっただろうか?
以前よりも少し精悍になったかもしれない…。
以前よりも、疲れた表情を浮かべている気がする…。
窓から顔を見つめていると、目に涙が浮かんだが、奥歯をグッと噛み締めて、その水滴が流れ出る事を堪えた。
もう二度と、話す機会は無いのだろうか?
悠李は、そんなチャンスを求めて、このボディ・ガード養成所に入ったのだ。
立場は違えど、もう一度、その人と相見える為に。
本当は、窓を叩いて自分の存在を相手に伝えたい。
しかし、そんな事をすれば、黒塗りの車の警護が厳しくなって、直ぐにその顔さえも見られなくなってしまうのだろう…。
悠李は、今はまだ、並走し続ける黒塗りの車の窓から見えるその顔をジッと見つめ続けた。
花組の訓練生達の準備は、副組長の石川が滞り無く進めておいてくれたらしく、悠李が戻った時にはすっかり整っていた。
駐機場へと移動し、訓練生全員で飛行機に乗り込む。
程無くして、飛行機は本社にアクセスする空港へと到着した。
既に慣れている訓練生達は、流れ作業のようにバスに乗り込む。
もう、何か月も繰り返している為、各訓練生達も何となく、どの組がどの辺りに座るのか決まっている。
一通りのスキルチェックが終わった。
何時もと違う事は、チェックしている人数が多くてゴミゴミしていた事だろうか?
社内も、人とすれ違う事等殆ど無いのに、今日は結構な頻度ですれ違う。
スキルチェックの予定が変更になると、一般企業のような光景も見られるのだという事を初めて知った瞬間だった。
帰りのバスに乗り込むが、この時ばかりは、組長や副組長は点呼をしない。
脱落者がいる場合、正しいか否かの判断が出来ない為だ。
それでも、何時ものクセでザッと人数の確認をすると、行きの人数と変わらなかった。
今回のスキルチェックは、初めて脱落者がいないのだという事を知る。
予定が変更になって、チェックが甘かったのか…訓練生達の努力の賜物か判らないが、また、一か月間、このメンバーで訓練出来るという事にホッとした悠李だった。
動き出したバスから窓の外を見ていると、まさか人物が見えた気がした。
黒塗りの車の後部座席に乗り、通常では有り得ないが、ほんの少しだけ窓を開けている。
その隙間から、見えた顔は悠李にとって忘れられない人だった。
周りの訓練生が悠李の行動に興味を持っていない事を確認すると、窓に顔を近付け、ジッと黒塗りの車の様子確認する。
最後にその姿を目にしたのはどれくらい前だっただろうか?
以前よりも少し精悍になったかもしれない…。
以前よりも、疲れた表情を浮かべている気がする…。
窓から顔を見つめていると、目に涙が浮かんだが、奥歯をグッと噛み締めて、その水滴が流れ出る事を堪えた。
もう二度と、話す機会は無いのだろうか?
悠李は、そんなチャンスを求めて、このボディ・ガード養成所に入ったのだ。
立場は違えど、もう一度、その人と相見える為に。
本当は、窓を叩いて自分の存在を相手に伝えたい。
しかし、そんな事をすれば、黒塗りの車の警護が厳しくなって、直ぐにその顔さえも見られなくなってしまうのだろう…。
悠李は、今はまだ、並走し続ける黒塗りの車の窓から見えるその顔をジッと見つめ続けた。
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