独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

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【07】 撃破

*060* 謝罪

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悠李が部屋に戻って、ほんの少しだけ仮眠を取った後、直ぐに起床時間になった。
点呼も終わり、何時も通りに悠李は早目に食堂へと向かう。
女子寮から続く渡り廊下を過ぎ、男子寮の前を通り過ぎようとした時、自分を遮る人影が見え、悠李はふと、目線を上げた。
目の前には、昨夜狼藉を働いた斎藤と助け出してくれた袴田が居る。

「悠李ちゃん、ごめんッ!!」

斉藤は、建物中が震えそうな程に大きな声で謝る。

「ち、ちょっと…声が大きいんだけど!!」

慌てて斎藤の口を手で覆った。

「何か、僕、焦っちゃって…どうかしてたよ…。」

尻すぼみに声が小さくなっていき、斎藤は深々と頭を下げた。
謝る潔さに恨み言等は言えない状況になってしまい、斎藤が頭を上げた瞬間を狙って、悠李は、バチコーンっと思いっきり頬を叩いてチャラにする事にした。
グダグダと嫌味を言いながら長引かせるのは、悠李の性分では無いので、斎藤と袴田を連れ立って、そのまま食堂へと行く事にする。
列に並び、朝食を手にして何となく何時も座っている席に行くと…既に、一條が悠李の斜め前の辺りの席に座って朝食を食べていた。
こんな一條は珍しい…。
大いに疑問を持ちながらも、軽く会釈をして、席に着き、食事を食べ出そうとした。
そのタイミングで、斎藤が声を掛けてくる。

「悠李ちゃん、イチゴ好きだったよね。あげる!!」

そう言うと、悠李の更にゴロゴロと三つ程、イチゴを載せてきた。

「いいよ。斎藤の分が無くなっちゃったじゃん。」
「うん、僕はいいんだ。イチゴも好きな人に食べて貰えた方が嬉しいと思うんだ。」

解らないでも無いが、意味不明な理論で、悠李が何時も幸せそうな顔で食べているイチゴを譲ってきた。

「斎藤、お前はそうやって花村をダメ子にしていくんだな。」

食べ終わって立ち上がる時に薄く笑いながら嫌味を言う姿は、何時もと何も変わらない。
ほんの少し前まで、あんなに情熱的に身体を絡め合っていたとは思えない程にクールな対応で、そんな姿を目にすると、悠李だけが翻弄されているような気がした。
そしてまた…そんな関係をまざまざと突き付けられて落ち込んでしまう。

「何で…何時も通りなんだよ…余裕があり過ぎて、ムカつく…。」

斉藤が一條の背中に向かって、呪詛のように呟く。
昨夜もそうだが、こういう斎藤を目にする事は珍しい。
一條の耳にも届いているはずなのに、全く介する事無く立ち去って行った。
悠李は、一條の気配が自分の周りから消えた事で、ようやく安堵の溜め息を吐き、食事の手を動かし出した。
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