独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

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【05】 応戦

*034* 恋バナ

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酒井が言う『スゴい』というのは、例のアレの事だろう。
これから、悠李は袴田と酒井のそんな話を聞くのだろうか? …と想像すると、ゲンナリしてくる。
特に、ザ・日本男児な袴田のそんな姿など想像出来ない。
それでも、口は、酒井との会話を続ける。

「へぇ…普段は無口なのにな。」
「へ? はーにゃんは、普段も全然無口じゃないじゃない!!」

酒井の言葉に悠李の頭の中は、疑問符が並ぶ。
袴田が無口じゃない?

「悠李たんは、はーにゃんは無口に分類されてるの? もしかして悠李たんってお喋りな人が好きなの?」

もしかしたら…自分は大きなボタンの掛け違いをしているのではないかという疑問が浮かんでくる。
しかし、直接的に名前を聞き直す訳にも行かなさそうなので、どのようにもう少しヒントを聞き出すかを思案する。
ただ、今の酒井の言葉から解った事は、明らかに斎藤は酒井のステディな相手では無いという事は確かだ。
…まぁ、名前の何処にも『は』の文字は含まれていないが…。

「お喋りな人は嫌いだな。」

今の悠李は、思考と口が切り離れているようで、口だけが会話を続けている。

「そっかぁ…斎ちゃん、悠李たんの事が大好きなのに可哀想だね。」

酒井のお気軽な口調は、全然斎藤の事が可哀想だと思っているようには感じない。
…が、他意は無いので、悠李自身は全く気にならない。

「そう? 何時も、社交辞令なんだと認識しているけど?」
「う~ん、恋愛は時に鈍感力は優しさだけど、悠李たんくらい鈍感だと、お相手も可哀想だね。」

酒井は、なかなか核心を突く事を言ってきた。

「そう? そんなに鈍感なつもりも無いんだけど…。」

話の矛先が悠李の方へと変わりつつある。
これは由々しき事なので、慌てて酒井の恋バナへと話を戻す。

「ほら、私の事は良いからさ、酒井はどうやって付き合うに至ったの?」
「え~、はーにゃんが私を見てたら放って置けないって言うの~。」

酒井はまた、照れ出しだ。

「まぁ、酒井はホワッとした魅力があるからね。」

酒井は目を大きく開き、悠李をまじまじと見つめた。

「うわッ、悠李たんに褒められた!! スゴい破壊力!! これは…斎ちゃんも恋に落ちちゃうカモねぇ…。」

悠李にとって、何か意味不明な言葉を呟き出した。
酒井はなおも続ける

「今、悠李たんが言った言葉って、はーにゃんもよく『若菜は綿あめみたいでかわいいよ。』って言ってくれるの♪」

…似て非なる言葉な気がするが、悠李は敢えてそれについては触れない。
それにしても、酒井の相手は本当に袴田なのだろうか?
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