独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

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【05】 応戦

*031* 本気のお誘い

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そのまま部屋に向かっていると、斎藤が食堂の方へ向かって歩いてきている。
明るいムード作りの上手い斎藤の周りには常に誰か、お付きの者が居るのだが、今日は一人のようだ。

「あれ~、悠李ちゃん?」
「あぁ、斎藤。」
「これから夕食なんだけど、一緒に行かない?」
「ごめん。もう、食べ終わっちゃったよ。」

悠李は、苦笑しながら言う。

「そっかぁ~、残念だなぁ。今日は、教官に道具を仕舞うように言われて何時もより少し遅めだしなぁ。」
「そっか。そりゃ、大変だったな。私、ひと足先に部屋に戻るね。」

悠李は、斎藤の横をすり抜けようとした時に、腕をグッと掴まれた。

「ん? どうした?」

比較的スキンシップが多めの斎藤なので、特に疑問も無く、悠李より少し背の高い斎藤の顔を見上げる。

「ねぇ、悠李ちゃん。そろそろ、僕としてみる気は無い?」

何時ものホワリとした柔らかい雰囲気では無く、訓練中のようなキリリとした様子で掴んでいる悠李の腕に力を込める。
何時もルーチンワークのように誘われている悠李だが、今日の斎藤の雰囲気は少し違う。
明らかに、お誘いを受けているようだ。

「ち…ちょっ……腕が、痛いよ…斎藤。」
「あぁ、ごめんごめん。」

斎藤の雰囲気が、また、何時ものホワリとした様子に戻る。
そして、掴んでいた悠李の手を離してくれた。

「悠李ちゃんが一途にこの人…っていう相手を決めたならば僕も諦めるしか無いけれど、そういう訳じゃ無いならさ、僕だってチャンスは欲しいよ。」

一途にこの人…という言葉で、悠李の頭の中に一條が思い浮かんでくる。
しかし、直ぐにそれを否定すべく、悠李は頭を大きく左右に振った。
斎藤の言葉を真に受けて、お試しなどをしては何かマズい事になる…と心が警鐘を鳴らすのだ。
それはきっと、悠李の本能に基づくものだ。

「……。」

何と答えたら良いのやら、わからない悠李は言葉を発する事が出来ない。
そして、いざ、悠李が斎藤に答えを返そうとした時に、何時でもお気楽な雰囲気を醸し出している酒井も食堂へと向かってきた。

「あれ~、斎藤君? 今日も悠李たんの事、相変わらず大好きだねぇ♪」

能天気な雰囲気全開でやってきた酒井が救世主に見える。

「あ~ん、悠李たん!! 今日も大好きだよ~ぅ!!」

そう言うと、斎藤から奪うように悠李に抱き付いてきた。
悠李も酒井の身体をギュッと抱き締め返す。
酒井がどんなに悠李に抱き付いてきても、全く身の危険を感じる事は無い。
もしかしたら、酒井は策士なのだろうか? …と想像し、マジマジと顔を観察してみた。
近日中に、サシで酒井と話してみようと心に誓った悠李だった。
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