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【05】 応戦
*020* 朝帰り
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悠李が気持ち良く意識を手放した後、一條も共に眠りについた。
心地好く過ごした共寝だったが、カーテン越しに薄く陽の光が差し込み、夜明けを告げようとしていた。
陽光に瞼を擽られ、一條は眠りから覚めたが、悠李は未だ夢の中だ。
意識が無い間、手持無沙汰な状況を埋めるように悠李の髪を撫でていたが、間も無く迎える訓練生達の起床時間の前には、部屋に戻さなければならない。
一條は、微睡の時間を手放す事を口惜しいと思いつつ、声を掛ける。
「おい、そろそろ目を覚ませ。」
「ん……っ…。」
言葉に反応を示すものの、もそもそと温もりを求めて一條の胸元に入り込んでくる。
思わず笑みを漏らすが、このまま温もりに溺れていては悠李と共に寝坊してしまう。
後ろ髪を引かれる想いで、悠李の身体を揺する。
悠李はあどけない様子で、うっすらと瞳を開けるが、今一歩、思考が着いていかない。
パチパチと目を瞬かせるが、また、眠りの世界へと戻ろうとしていた。
「おら、点呼に間に合わなくなるぞ!!」
一條の言葉にピョンッと身体を跳ね起こしたが、その状況がどういう状況なのか全く判っていなかった。
「あれ…?…あれ????」
「目が覚めたか?」
「一…條……?」
まだ、寝ぼけている感が否めない。
悠李は、トロリとした思考なりに頭をフル回転させている内に、昨夜、イタした後にそのまま寝入ってしまった事に思い至った。
「!!」
そのまま寝入ったはずなのに、悠李の身体はサラリとしている。
寝ている間に一條が清めてくれたのだろう。
想像すると顔が赤くなってくる。
「このまま、ここから整列するか?」
一條は、とんでもない事を言う。
悠李は首をぶんぶんと振り、慌てて服を着用した。
「昨夜は好かっただろ?」
サラリと言われた言葉に咄嗟に言い返す事が出来ない。
「身体の相性は悪くない。また来いよ。」
悠李は、キッと睨みつけ、一條に言葉を投げつけた。
「約束、破った!!」
「俺は、お前の言葉を一言も了承してないぞ。男はオオカミだからな。今まで護り通せた事の方が奇跡だ。」
「信じらんなぃ…。」
一條は、フンッと鼻で笑うとそのまま顎で促す。
「ほら、行け。遅れるぞ。」
悠李は、まだ、言い返し足りない様子だったが、現時点でギリギリ自分のベッドに滑り込んで見つかるか見つからないかの瀬戸際の時間だった。
このままだと、本当に間に合わなくなりそうだったので、言い足りない文句を飲み込み、慌てて扉を出て行った。
「またな。」
一條のその声が悠李に届く事は無かった。
心地好く過ごした共寝だったが、カーテン越しに薄く陽の光が差し込み、夜明けを告げようとしていた。
陽光に瞼を擽られ、一條は眠りから覚めたが、悠李は未だ夢の中だ。
意識が無い間、手持無沙汰な状況を埋めるように悠李の髪を撫でていたが、間も無く迎える訓練生達の起床時間の前には、部屋に戻さなければならない。
一條は、微睡の時間を手放す事を口惜しいと思いつつ、声を掛ける。
「おい、そろそろ目を覚ませ。」
「ん……っ…。」
言葉に反応を示すものの、もそもそと温もりを求めて一條の胸元に入り込んでくる。
思わず笑みを漏らすが、このまま温もりに溺れていては悠李と共に寝坊してしまう。
後ろ髪を引かれる想いで、悠李の身体を揺する。
悠李はあどけない様子で、うっすらと瞳を開けるが、今一歩、思考が着いていかない。
パチパチと目を瞬かせるが、また、眠りの世界へと戻ろうとしていた。
「おら、点呼に間に合わなくなるぞ!!」
一條の言葉にピョンッと身体を跳ね起こしたが、その状況がどういう状況なのか全く判っていなかった。
「あれ…?…あれ????」
「目が覚めたか?」
「一…條……?」
まだ、寝ぼけている感が否めない。
悠李は、トロリとした思考なりに頭をフル回転させている内に、昨夜、イタした後にそのまま寝入ってしまった事に思い至った。
「!!」
そのまま寝入ったはずなのに、悠李の身体はサラリとしている。
寝ている間に一條が清めてくれたのだろう。
想像すると顔が赤くなってくる。
「このまま、ここから整列するか?」
一條は、とんでもない事を言う。
悠李は首をぶんぶんと振り、慌てて服を着用した。
「昨夜は好かっただろ?」
サラリと言われた言葉に咄嗟に言い返す事が出来ない。
「身体の相性は悪くない。また来いよ。」
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「約束、破った!!」
「俺は、お前の言葉を一言も了承してないぞ。男はオオカミだからな。今まで護り通せた事の方が奇跡だ。」
「信じらんなぃ…。」
一條は、フンッと鼻で笑うとそのまま顎で促す。
「ほら、行け。遅れるぞ。」
悠李は、まだ、言い返し足りない様子だったが、現時点でギリギリ自分のベッドに滑り込んで見つかるか見つからないかの瀬戸際の時間だった。
このままだと、本当に間に合わなくなりそうだったので、言い足りない文句を飲み込み、慌てて扉を出て行った。
「またな。」
一條のその声が悠李に届く事は無かった。
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