独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

文字の大きさ
上 下
10 / 95
【04】 追撃

*010* 口説きタイム

しおりを挟む
大学で言うところの一般教養的な基礎訓練が終わり、訓練生のシャッフルが始まるこの時期から、各組の個性…というべきか、担当すべき専門的な訓練が始まる。
悠李が所属する花組は、『情報収集』と…そう『お色気』担当だ。

「ボディ・ガードが最優先ですべき事は、クライアントの命を守る事。しかし、充分な情報を得ていなければ、守っているこちらが犬死にする可能性だってある。『花組』の担当は…花村?」
「『情報収集』と『うっふん』な感じ?」

花組訓練生はみんな床を叩きながら大ウケしている。
とても、女子とは思えないような豪胆な振る舞いだ。
ここに居る女子は、キレイだと言われたいだとか、カワイく見せたい…という意識がほぼ無い。
それよりも、もっと生きていく事にコミットしている肉食女子の集まりなのだ。

「ほぉ…そう言う事を言う口は、この口か、あぁ?」

一條は、持っていたムチを振るい、シュッという鳴り音をあげて、悠李が立っている左足から二センチの床が叩かれる。

「何すんだよ!! 危ないじゃないかッ!!」

悠李は本気でビビる。

「もっと気概を見せろ、気概を!! ムチが飛んできたらキャッチくらいしろよ!!」

悠李は、本当にそれをやったらバケモノだから…と思ったが、自分への被害がより大きく膨らみそうな気がしたので、口に出す事は止めた。

「花組の重要な役割は、『ハニートラップ』だ。」
「……それって、メッチャ攻撃系で、何処にも警護する雰囲気が無いんですけど。」
「重要な『諜報活動』だ。まさか、馬鹿の一つ覚えみたいに、最前線で、クライアントの横で守る事だけがボディ・ガードだと思っている訳では無いだろうな?」
「……。」

相変わらず、この教官の口の悪さはピカイチだ。
そんな事を想いながら、悠李の頭の中では、『スパイ大作戦』のテーマが流れていた。

「まずは、情報源に近付く為に相手の懐に入り込む必要がある。要は、相手を口説けって事だな。花村、俺を口説いてみろ。」
「…ハイ。」

悠李は、何故、一條を口説かねばならぬのだ…と思いながらも、訓練なので、やる。
まずは、手始めに軽く声を掛けてみた。

「こんにちは。」
「お前は、生粋のバカだろう? 今どき、小学生のナンパでも『こんにちは。』は無いな。」

挨拶をしただけで、こてんぱんにやられるのは如何なものか?

「一條教官がやって見せてくださいよ。」

悠李は、挑発的に言う。
実際には、この一條に果敢に噛み付いている様の方が、余程、琴線に触れる行動なのだが、悠李はさっぱり解っていなかった。

「へぇ…俺がやるのか? 構わんが。花村、そこに立っていろ。」

そう言うと、一條が悠李の横にやってきた。
少し近い距離から悠李をジッと見つめる。
一條の目力に悠李の意識が吸い込まれて行く…。
周りの景色が遮断され、世界に二人だけしか居ないような錯覚を覚えた時に、悠李の手が取られ、背筋にザワリと何かが走るように撫でられた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...