独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

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【08】 捕獲

*086* 聞かされた事実

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少しだけ逡巡した悠李だったが、直ぐに力強く頷く。

「聞く。」

その様子を見た一條は、悠李の覚悟を確認し、話し出した。

「俺は、ここの訓練が終わった後、直ぐにあの国に配属された。」
「え?」
「お前も知っている通り、あの国の情勢は当時、とても不安定だった。勿論、今もな。」

悠李は、状況を理解している為、頷いた。

「今でこそ、護衛の人数は減っているが、当時は一名に対して四人の護衛が付いていたんだ。」

今、悠李達が訓練で学んでいるのは、一名に対して二名で護衛するところまでなので、それが、どれだけのチームワークと技術が必要かを考えると、思わずゴクリと唾を呑んだ。

「お前も知っているとおり、護衛をするのは身の回りを守るだけでは無い。情報収集も必要だ。」

悠李が所属している花組は、身の回りを守る事も勿論だが、それよりも情報収集の為に必要に応じて、様々な立場に変化しながら、護衛対象が危険に晒されないように常に最新の状況を送り続ける。
特に花組のような部隊は、護衛対象者の敵陣の心臓部へと入り込み、作戦を丸ごと吸い上げる役割を担っている。
必要があれば、身体を使う…そんな役割が花組なのだ。
しかし、『英雄色を好む』とはよく言ったもので、非常に重要な役目を担っているのだ。
一條の言っている意味は、そういう事なのだろう…と理解した。

「俺は、護ると約束したのに…傍を離れて、情報収集の為に敵陣に乗り込んでいた。」

悠李は、一條の言葉にピンときた。
自分が護衛対象者から離れている間に、何かがあったのだ!!

「護衛対象者が危ないと解って、情報を伝えようと戻ったが…間に合わなかった。俺がもっと早くその事に気付いて動いていれば…。」

厳しい訓練を受け続けたボディ・ガード達が護衛している護衛対象者が亡くなるという事はほぼ無いと言って良い。
護衛対象者が危険に晒される場合には、自分達の命を差し出して、護衛対象者を護る為だ。

「結局、俺は護衛対象者を護る事も出来ず、敵陣にも俺がスパイだと言う事が漏れて、あの国のボディ・ガードを外れる事になった。」

悠李は、一條の話を聞いていて、自分が一條の上司だったら、部下を危険に晒さない為にも、その陣営から隔離するだろうと思った。
一條は、護衛対象者の命の灯が消えた事を自分の責任だと責めているのだろう…。
それは、一條のせいでも何でも無いはずなのに…。

「今は、俺自身が狙われているからな。」

悠李は、一條の言葉にハッと息を呑んだ。
斎藤が言っていた言葉を思い出したのだ。
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