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【08】 捕獲
*084* 帰宅
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座りながら、今一度、部屋の様子を見回す。
一條の居ないこの部屋は、何と無く無機質だと感じ、悠李の心が寂しさを訴える。
ソファに座りながら、一條を待ってどれくらいの時間が経過したのだろうか?
寂しさが募った頃、玄関の扉が開く音がした。
悠李は、音がする方を見る。
立ち上がるかどうか考えている間に一條がリビングに現れた。
「あ…あの…お邪魔…してますぅ…。」
悠李の声が尻窄みに小さくなっていく。
「あぁ。」
悠李が部屋に居る事を目視した一條は、特に何時もと変わる事無く、返事をすると、寝室の方へと歩き出す。
「悪いが、先に着替えさせてくれ。」
悠李が返事をする前に、そのまま寝室へと入った。
ゴソゴソと音が聞こえるので、クローゼットから着替えを出しているのだろう。
そのままバサバサと服を脱ぐ音が聞こえ、ラフな服装に着替えた一條が、リビングへと戻ってきた。
やはり、訓練所に居る時の一條の服装の方がホッとする。
スーツなどをカッチリと着られると、美丈夫過ぎるこの男は目の毒なのだ。
一條は、悠李が居ても構う事無く、冷蔵庫へと歩き、ビールを取り出した。
「お前も飲むだろ?」
悠李に確認しつつも、その言葉は質問では無かったようで、手に二本のビールを持って悠李の前に座った。
トンッと悠李の前にビールが置かれる。
悠李の行動には頓着せずに、プルトップを開けた一條は、一気にビールを喉へと流し込んだ。
その勢いは、このまま一缶飲み切ってしまうのでは無いかと思う程に豪快だだった。
悠李は、驚いて一條を見ているまま固まっていた。
「お前は飲まないのか? 常温のビールの方が好きなら冷えてないのもあるぞ?」
ドイツ人では無いので、常温のビールを楽しむ志向は無い。
特に、今、目の前に差し出されたビールの銘柄は日本のものの訳で、日本のビールならば、日本の飲み方に従い、よく冷えている方が美味しいに決まっている。
色々と状況に頭が付いて行かず、ビールを飲む気にもなっていない悠李だったが、勧められた好意を無にするのも失礼かと、ゆっくりとビールを飲み出した。
「何で…あんな事になった?」
悠李がビールに口を付けるのを確認し、一條は悠李に質問する。
「スキルチェックの日の帰りに…兄がバスの横を並走していたの。」
「あぁ。」
一條は、悠李に続きを促す。
「何年も会っていなかったから懐かしくて…。」
悠李は、言葉を探しながらも状況を伝えていく。
「同じ空港に向かっている事が解って、嬉しくて…横の飛行機に兄が搭乗しようとしている姿を見たら、思わず走り出してたの。」
「普段のお前ならば、そんな事はしないだろ?」
一條は痛いところを突いてくる。
一條の居ないこの部屋は、何と無く無機質だと感じ、悠李の心が寂しさを訴える。
ソファに座りながら、一條を待ってどれくらいの時間が経過したのだろうか?
寂しさが募った頃、玄関の扉が開く音がした。
悠李は、音がする方を見る。
立ち上がるかどうか考えている間に一條がリビングに現れた。
「あ…あの…お邪魔…してますぅ…。」
悠李の声が尻窄みに小さくなっていく。
「あぁ。」
悠李が部屋に居る事を目視した一條は、特に何時もと変わる事無く、返事をすると、寝室の方へと歩き出す。
「悪いが、先に着替えさせてくれ。」
悠李が返事をする前に、そのまま寝室へと入った。
ゴソゴソと音が聞こえるので、クローゼットから着替えを出しているのだろう。
そのままバサバサと服を脱ぐ音が聞こえ、ラフな服装に着替えた一條が、リビングへと戻ってきた。
やはり、訓練所に居る時の一條の服装の方がホッとする。
スーツなどをカッチリと着られると、美丈夫過ぎるこの男は目の毒なのだ。
一條は、悠李が居ても構う事無く、冷蔵庫へと歩き、ビールを取り出した。
「お前も飲むだろ?」
悠李に確認しつつも、その言葉は質問では無かったようで、手に二本のビールを持って悠李の前に座った。
トンッと悠李の前にビールが置かれる。
悠李の行動には頓着せずに、プルトップを開けた一條は、一気にビールを喉へと流し込んだ。
その勢いは、このまま一缶飲み切ってしまうのでは無いかと思う程に豪快だだった。
悠李は、驚いて一條を見ているまま固まっていた。
「お前は飲まないのか? 常温のビールの方が好きなら冷えてないのもあるぞ?」
ドイツ人では無いので、常温のビールを楽しむ志向は無い。
特に、今、目の前に差し出されたビールの銘柄は日本のものの訳で、日本のビールならば、日本の飲み方に従い、よく冷えている方が美味しいに決まっている。
色々と状況に頭が付いて行かず、ビールを飲む気にもなっていない悠李だったが、勧められた好意を無にするのも失礼かと、ゆっくりとビールを飲み出した。
「何で…あんな事になった?」
悠李がビールに口を付けるのを確認し、一條は悠李に質問する。
「スキルチェックの日の帰りに…兄がバスの横を並走していたの。」
「あぁ。」
一條は、悠李に続きを促す。
「何年も会っていなかったから懐かしくて…。」
悠李は、言葉を探しながらも状況を伝えていく。
「同じ空港に向かっている事が解って、嬉しくて…横の飛行機に兄が搭乗しようとしている姿を見たら、思わず走り出してたの。」
「普段のお前ならば、そんな事はしないだろ?」
一條は痛いところを突いてくる。
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