独裁者サマの攻略法

【08】 捕獲

＊082＊ 帰還

直ぐに、エンジン音が鳴り響き、一條がサングラスを掛ける。
その横顔は、息を呑む程にイイ男だ。
一條は、悠李の膝元にポイッとサングラスが放り投げられた。

「……?」

悠李は、意味が解らなくて、一條の顔を見る。

「ここに座るならば、まだ、習って無いだろうから解らないだろうが、目に負荷が掛かるから、それを着けておけ!!」

理由は良く解らない悠李だったが、そう言えば、パイロットはサングラスをしている事を思い出し、一條の言葉に従う事にした。

「安全運行には努めるが、多少スピードは出すから、しっかりとシートベルトを締めておけよ。」
「はい。」

一條の言葉に返事をすると、プライベートジェットは直ぐに動き出した。
離陸に向けて、長い滑走路を加速する。
機体が加速する毎に、悠李の気持ちも日本へと向かって高鳴っていった。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

悠李が安心して移動中にうつらうつらとしている間に、何時の間にか見慣れた孤島が見えてきた。
悠李は、窓に張り付き、見えてきた島を見ていた。

「起きたのか? そろそろ、着陸するぞ。」
「……うん。」

一條の言葉に悠李はシャッキリと気持ちを切り替えた。
程無くして、プライベートジェットは、孤島の駐機場に着陸した。

「降りて良いぞ。」

エンジンを止め、一條から、外に出て良いとの許可を貰う。

「ありがとうございました。」
「報告してから戻るから、少し遅くなるが、中に入って待っていろ。」

そう言うと、降りようとしている悠李の手に硬質な手触りの物を無理やり握らされた。

「……うん。」

悠李は、小さく返事をすると、頭を下げ、プライベートジェットから降りた。
地に足を付けた時に、ようやく日本に戻ったという実感が湧いてきた。
鳥組の教官が悠李を出迎え、頭をグシャグシャと掻き混ぜられた。

「無事で、何よりだ。」
「ご迷惑を…お掛け致しました。」

悠李は、背筋をしっかりと伸ばし、素直に謝罪の旨を伝える。
悠李が忽然と消えてから、一條や各組の教官達だけでは無く、スキルチェックを受けていた全ての訓練生達も彼女を探し続けていたらしく、寮に着いた途端に束になった訓練生達に揉みくちゃにされる。
みんな、顔全体に笑顔を浮かべ、男女関係無く、悠李に飛び付いてくる。
まずは、寮の中に入るようにと別の教官に促され、訓練生達を掻き分けながら入って行く。
ようやく食堂に到着すると、肩を掴まれて席に座らせられて直ぐに、給仕のおばちゃんがトレイいっぱいに食事が盛り付けられた料理を、悠李の下へと運んできた。