独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

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【07】 撃破

*072* 複雑な関係

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国王陛下は大きく目を開く。
悠李は、ガックリと肩を下げた。

『ユーリ、どういう事だい? 先程、就職したと聞いた気がするんだが?』

国王陛下のその言葉に、一條は初めて周りに目を向け、そこにドレスアップした悠李が居る事に気付いた。

「お前が何故、そんなカッコしてるんだ?」

一條は、驚きの余り、先程の国王陛下と同様に大きく目を見開いた。

「全く…台無しにしてくれやがって…。」

兄が、口汚く日本語で言う。
普段から、物腰が柔らかい兄がこのような言葉を使うのは、とても珍しい。

「冬馬? …大きくなったな。」
「出会った頃には成長は止まっていたと思うけど?」

何だか、兄の様子が毒舌であるのを初めて目の当たりにして、悠李はオロオロしていた。
国王陛下は、二人の会話に口を挿む事無く、黙って様子を見ている。
一條の頭も少しずつ回転し出したらしく、ようやく、兄と悠李の顔を交互に見比べた。

「……似てる?」

一條は、ポツリと呟く。

「当たり前だろ。兄妹なんだから。」

その言葉を聞いた一條の動きが止まった。

「……兄…妹…? 花村、本当か?」
「あぁ、似てるだろ?」

悠李が答える前に、兄が答える。

「確かに…。」
「一條は、何故、この国の言葉が解るの?」

悠李が唯一問い掛けられた言葉は、それだけだった。

「俺は、この国のボディ・ガードとして何年も配置させられていたからな。」

一條の言葉で、ようやく悠李の頭の中のパズルが嵌り出した。

「だから、部屋に…」
「それは、言わなくて良い!!」

悠李が頭の中に浮かんだ事を口にしようとした時、一條に被せるように止められた。
何か、意味があるのだろうが、悠李にはその理由が解らなかった。
三人の会話が落ち着いた時、もう一度、国王陛下から悠李に問い掛けられる。

『ユーリ?』
『先程の話は、本当ですよ。会社に就職したんです。』

もう一度、悠李は先程の言葉を繰り返した。

『一條は、ユーリを迎えに来たと言っているのはどういう事なんだろうか?』
『……。』

悠李は、答えられ無かった。

『もしかして、ユーリと一條は、将来を約束していて…それで迎えに来たのだろうか?』
『それは、有り得ません!!』

悠李が左右にブルブルと激しく首を振るよりも早く、兄が全力で否定した。

『そうなのかい?』

国王陛下は、質問の矛先を一條へと向けた。
一條は、どのように答えるべきか非常に悩んでいる様子で、この複雑な状況は、自分自身が作り出した事は認識しているらしく、彼なりに考えているようだった。
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