婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

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*05* 言い知れぬ感情

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翌日のランチタイム。
今日のシフトは、仲良しの同僚のみのりちゃんと一緒らしいので、ランチは外食にする事に。
お昼のセレクトは、ホテルから少し離れたレストランが併設されているベーカリー。
店舗内で食べたいパンと飲み物を選び、席へと移動する。

「みのりちゃん…私、昨日お見合いしたんだけどさぁ~…。」

席に着いて早々、腰も落ち着かないうちから相談を始める。

「はぁ~!!聞いてませんけど!?」
「言ってませんもの~…。でね、」

みのりちゃんはバゲットサンドを口にしながら、顎で続きを促す。

「断ろうと思っていた訳。」
「それで?」
「それが…断るっていうところまでもいかなくて…。」
「どういう事?」
「両家の母親同席の下、ライトな感じで美味しく食事したのは良いんだけどさぁ~…。」
「美味しい食事が食べられて良かったじゃない。」
「ご一緒出来て有意義だったとも言われたんだけど…。」
「脈アリなんじゃないの?」
「いや…それだけだったの…。」
「また、連絡して会えば良いじゃない?」
「連絡先も知らなければ、相手の返事もわからないの。…私の返答もまだもしていないんだけれど…。」
「じゃぁ、まず、こちらの意向を伝える事から始めてみれば?」
「そう、ここからが本題なの!!」
「え、今の序章!?」
「うん…えっとね、気になるんだけれど、結婚は考えていないって言うか…でもまた会いたい気がするし~…。」
「何だか、何時ものさくららしからぬ曖昧さだなぁ~。」
「どうしたら良いと思う?」
「そこ、人に委ねちゃうの?」
「なんだか、胸の内がモヤモヤしてパッとしないのよね…。」

みのりちゃんは、そんな私をジーッと見つめると、徐に話を纏め始めた。

「結局、さくらはそのお見合い相手と結婚は考えられないのよね?」
「うん、そう。」
「でも、気になってはいるからまた会いたい…と?」
「うん。」
「もし、このままその人に会えなかったらどう?」
「…う~ん、すっごく淋しいカモ。」
「じゃあ、また会えたとしたら?」
「メッチャ嬉しい気がする!!」

みのりちゃんは、そこまで話すとニヤリと笑い、一言、

「さくらくん、それは、ズバリ『恋』だナ。」
「恋…???」
「そう、『恋』。」

頭の中で何度も“恋”という言葉を反芻してみる。
え~ッ、私、直嗣さんに恋しちゃったの~ッ!!

「えっ、恋ってこんな感情なの?」

初めて知った感情に名前が付いたところで、為す術も無いこの状況にただただ途方に暮れるしか無い私だった。
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