婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

文字の大きさ
上 下
4 / 75

*04* 二人きり

しおりを挟む
何となく当り障り無く会話を成立させながら、時間は刻々と過ぎていく。

「ねぇ静子さん、もう少しお時間があったらお茶でもしながらゆっくりとお話したいわぁ~♪」
「そうね、私も久々にさつきさんともう少しお話したいと思っていたの。下のラウンジに移動しましょうか。直嗣、さくらさんの事、失礼が無いようにしっかりとエスコートするのよ。」

…そう言って、二人の母親は一般的な「後は若いお二人で…」という言葉を発せずにサラリと退席した。

「さくらさん、庭に出てみますか?」

直嗣さんは、紳士的に私の手を取り、庭へと誘う。

「このようにプライベートな空間を大切にしているお庭に出て問題は無いのでしょうか?」
「視察という名目で歩けば、特に問題無いでしょう。」

一流のホテルウーマンを目指している私としては、勤務先以外のホテルの中を歩けるのは、またとない勉強のチャンスなので、とても嬉しい。
それにしても…この直嗣という男性、いったい何者なのだろう?
食事の間も、特にお互いの家についての話も出ず、ただ名前のみを名乗り合うだけの和やかな語らい。
心地好いけれど、何かのピースが足りない…そんな感じ。
そして、先程から思い出せない“何処かで見たはずの直嗣の顔”。
…物思いに耽っていると、直嗣さんに声を掛けられた。

「庭はお気に召しませんか?」

直嗣さんに覗き込まれて、ドキリとしてしまう。
近い!!顔が近いです、直嗣さん!!

「いいえ!!そんな事はありません。人工的に配置されているはずの花々が自然に見える世界を織りなしているこの空間に息を呑んでいただけです。」
「この庭園は、ホテルの中でも力が注がれている逸品ですので、そのように評価をして頂けるとは、とても鼻が高いですね。」

直嗣さんに優しく微笑まれると、つい顔が赤くなってしまう…。

「茶室から見える景色には、枯山水が配されているのですが…これ以上お母様をお待たせする訳にもいかないですね。ラウンジまでお送りしましょう。」

えっ、もう帰っちゃうの?…と名残惜しい気持ちが湧き上がっているこの感覚は何と呼べば良いのだろう?
少しだけセンチメンタルな気持ちを味わいながら、ラウンジへと向かった。
ラウンジで母と合流し、迎えの車に乗り込む時に、不意に直嗣さんに耳元で囁かれた。

「今日は楽しい時間をご一緒して頂き、ありがとうございました。とても有意義でしたよ。」

耳元で、そんなに低音な美声で囁かないで!!
口から心臓が飛び出てしまいそう!!!!!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...