神の居ぬ間に…。

観月 珠莉

文字の大きさ
上 下
32 / 32

*32* 未来へ…。

しおりを挟む
「えぇ、『闇』の神殿だけは、唯一、他の神殿と違い、婚姻が認められているのですよ。だから、貴女と私はここで永遠を誓い合ったのです。」
「私には、魔力が無いのに…。」
「全く問題ありません。貴女は兄上のエネルギーも体感したから解るでしょうが、王族というのは、民人に比べて相当量の魔力を持っていましてね。加えて魔力の種類も多い。だから、私たちは平和過ぎるとエネルギーが余って魔力で具合が悪くなる事が多数あるのです。リュクレールが吸い上げてくれるだけで、私の体内で生み出されるエネルギーは常に精度の高い良質な魔力となるのですよ。もし、強い魔力を持った世継ぎが欲しければ、魔力を貴女の胎内に留められる宝飾品もありますから。」
「ブランさまは…本当に、それで良いのでしょうか?」
「えぇ、私は貴女が良いのです。リュクレール。」
「先程、兄上と話していた時にも言いましたが、『闇』の魔力は、王族にとって中枢を担う程に重要な魔力。それを私と一緒に守って行けるのは、リュクレール以外には考えられません。」

ブランは、慈愛の表情でリュクレールを見つめる。

「貴女は、何も考えずにただ、私の側に居てくれるだけで良いんです。現に、リュクレールは『光』の神遊節の間に、私の下へ堕ちてきたでしょう?」
「堕ちる…?」
「えぇ。このタイミングを逃すとまた、一年後まで『光』の神のご加護が及びますからね。何としても、この七日間で貴女を『光』の神殿より攫う必要があったのです。」

リュクレールは、この時、初めて『光』の神殿から還俗する必要があったのかどうかについて疑問を覚えた。

「リュクレール、何も考えずにこのまま私と幸せになりましょう。」

そう言うと、ブランはリュクレールの左手首の内側に口付けた。

「ブランディール・ディ・プリズムニアは、リュクレール・プリズムニアに永遠の愛を…。」

そう言うと、ブランはそのままリュクレールの手を取り、先程、王が進んだ扉の方へと歩き出した。
彼女が深く思考を働かせる前に…。

「さぁ、リュクレール。私達の愛の巣へと向かいましょう。」

こうして、神遊節の間に『光』の神殿より奪取された聖女は、『闇』の母として偉大なる『闇』の父と共に、仲睦まじく王家の発展に寄与して行く事となる。
陰の存在である、『闇』の神殿の功績は、知る人ぞ知る偉大な功績として、王家の秘蔵の書に残されている。

彼女が、『闇』の母として成長を遂げていくのは、また、別のお話。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鬼退治

フッシー
ファンタジー
妖怪や鬼が現れる、ある時代の日本を舞台に、謎の少女「小春」と鬼との闘いを描いた和風ファンタジー小説です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...