神の居ぬ間に…。

観月 珠莉

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*07* 『漆黒』のエネルギー

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三日目の朝、食堂の片隅で朝食を取っているブランの下へリュクレールが訪れる。
自分の下へ訪れるリュクレールの姿を目にし、ポーカーフェイスの下に隠しきれない喜びの表情が浮かんでしまう。

「おはようございます、神官さま。」
「おはようございます、聖女さま。」
「少し、お話させて頂いても?」
「よろしければ、お掛けになりますか?」

ブランが隣りの席を引いて着座するよう勧めると、リュクレールは大人しくそれに倣った。

「あの…昨夜の『浄化』の件なのですが、少し気になる事がございまして…。」
「気になる事とは何でしょう?」
「はい。お恥ずかしながら、昨夜も朦朧としていていまいち記憶が曖昧なのですが…。」
「そんな中でも印象に残る事があったのですね?」
「はい。凄く大きな『漆黒』のエネルギーが私の中を襲ってきまして…お忙しい中、神官さまにせっかく『浄化』して頂いているのに、私は何かを取り込んでいるのでは無いかととても不安に思ったものですから…。」

ブランは、少し考える様子を見せ、徐に言葉を選びながら話を始める。

「その『漆黒』のエネルギーは悪意に満ちたものでしたか?」
「いえ…その、朦朧としている中で唯一『漆黒』のエネルギーだったという事のみを覚えているのです…。」
「そうでしたか。では、私も今夜は、その『漆黒』のエネルギーについて留意して見てみる事に致しましょう。」
「この、『漆黒』のエネルギーは、黒化というのに関係あるのでしょうか?」
「それは…現時点では、善悪について判断出来ません。ここクリアアーチ神殿は、『光』を司っている神殿の為、『浄化』を必要とする多くの国民が礼拝に訪れる事は聖女さまもご存じですね?」
「はい。」
「『浄化』には主に『光』、と時に『水』の魔法を使いますが…世界には他の種類の魔法も多数あり、それぞれの魔法にはそれぞれの役割があります。」
「はい。」
「ですから、聖女さまが覚えている手掛かりの『漆黒』のエネルギーについて、どのようなものか一緒に探してみましょう。」

ブランは慈愛溢れた微笑みで、リュクレールを諭すのだった。

「私とした事が…神官さまに差し出がましい事を申し上げてしまいました。すみません。」
「いいえ、聖女さまの御身に起こっている事ですからね。ご心配になるのも無理はありません。」
「ありがとうございます、神官さま。」
「聖女さまのお役に立てるならば、こんなに嬉しい事はありません。今夜も楽しみにしておりますよ。」
「…?よろしくお願い致します。」

リュクレールは少しの違和感を感じたはずだが、それに気付く事も無く、また夜の『浄化』に向けてしっかりと休息を取るのだった。
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