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後日談たち やり残したネタとか消化していきます
155.後日談12 かわいそう!
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資料室を半ば呆然と出た俺は再び宿へと帰ってきていた。
なんだかんだやっているうちに夕方も近くなっている。
俺たちはやたら金ぴかピンな装飾の机を囲み、お茶を飲んでいた。
俺が四次元ポケ……亜空間の魔道具に入れておいたお茶っ葉を使って淹れたものだ。
クイタさんはお茶など自分では淹れたことがないようで、普通にお茶を淹れている俺を見て驚いていた。
そして何よりも亜空間の魔道具に驚いていた。いや、まだ見せるつもりはなかったんだけどね。
じゃあ、なんでわざわざお茶を亜空間の魔道具から取り出したのか。
それはひとえに、この宿のせいである。
いや、これから割とシークレットな内容を話し合うわけだからルームサービスとかは頼めないわけです。だから、備え付けのお茶っ葉を使わせていただこうと思ったのだけど…………なに、金粉入り紅茶って!
いや、日本でもそういうお茶っ葉、寺とかで売ってたよ?
でもほどよく入ってるならまだしもそれは内容量のほとんどが金粉!
口の中にもそもそというか、ぱそぱそ当たってくるし喉越しも最悪である。
排出されるだけだよ?
消化されずに金糞が出てきちゃうよ?
「しかし、このように美味いお茶は初めて飲んだ」
クイタさんが息を吐いて目を細めた。いいえ、粗茶です。
そこでまさかの可能性に思い当たって俺は思わず身を乗り出す。
「もしかして、いつもこんなお茶を飲んでいたんですか!?」
嘘だよな、天下の皇帝ともあろうお方がこんなまずい……
「飲んでいた」
NOーーーー!!!!
躊躇うことなく頷いてみせたクイタさんに、俺はつい拳を握った。
かわいそう。皇帝なのに、美味しいお茶が飲めないなんて!
しかも、こんな! まずいものしか呑めなかっただなんて! もしかして、他の食事もこんな有様だったのだろうか。容易に想像できるだけにほろりときた。かわいそうクイタさん。
食べ物もかわいそう!
俺は食べ物を思って憤慨した。
普段は温厚なのに食べ物のことになると急にブチ切れる民族、日本人の血をーー物理的には引いてないけどーー魂的には引いている俺としては、かの暴虐の金粉入り紅茶は許せなかった。
「明らかに金粉を入れすぎです! 金粉入り紅茶じゃなくて、茶葉入り金粉じゃないですかあれ。なんでこんなことになってるんですか!?」
「うむ、金は富の象徴だからな。高級品と言えば金なのだ。ゆえに皆金の多さを競う」
憤慨して問い詰めるも、冷静なクイタさんの言葉に色々納得する。
だからこのホテル、どこもかしも金ぴかなわけですね。
「競うなら美味しさを競って欲しいです……」
「それはワシも思っていた」
がくりとうなだれた俺に、クイタさんは苦笑した。
ひょっとして、俺が昔見た、あのクイタさんの肖像画の悪趣味な衣装もそんな経緯からあんな風にゴテゴテのキラキラの成金スタイルであったのだろうか。なんというか……俺は正面の席に座って苦笑しているクイタさんが急に哀れになってきた。いつか着心地のいい服を着せてあげよう。
さて、いつまでも雑談というわけにはいかない。一応現状の整理が必要だろう。
「で、あの老人たちが私の顔を見るなり土下座をしたのは……」
「ああ、彼奴等はウィル殿をついにやって来た本物の天使だと思ったからだな。腐っても一応は聖職者。あの絵画を知ってはいたのだろう。あの焦り様、ワシの姿も目に入っていなかったと見える」
クイタさんがククっと笑った。
テラ悪役。
黒い笑みにしか見えないんだけど。俺は若干顔を青くしながら口を開いた。
「それで私が天使とおっしゃったんですね」
「だから申したろう、誤解だと」
「いや、普通信じられませんから」
ざっぱりと斬った俺の発言にクイタさんはきょとんとした。
それから、軽く事実の確認をし、そろそろお開きというところでちょうど夕餉の時間となった。
やはり奴ら、賭博も違法奴隷も常習犯であったようで、しかし尻尾が捕まらず証拠が見つからないとクイタさんも散々手をこまねいていたらしい。
俺が突入する前、遊戯室にやたら多くの気配を感じたのもやはりそういうことだったのだろう。奴ら、賭博を行っていたのだ、奴隷を景品にして。
遊戯室の奥にある空間にかなり密集させられていたしな。今頃、黒騎士の皆様が発見して解決してくれているだろう。大方、獣人の方が多いのだろうし、身元の確認作業も大変なことになってしまいそうだが……。
頑張れ、黒騎士さん!
何かあれば俺も手伝いますから。獣人の本拠地ヒダセイリにはさすがに知り合いはいないが、デューヴにならば大勢いる。まず、プースさんたち関連だろ、その取引先だろ。
あ、後はデューヴのかなり大きな商会の長にも、こういうことがあれば協力は惜しまないと約束してもらっているし。ほら、スピネルを倒す前に、グロシュイル元将軍に捕まった事件あったろ? その時に、ウィリアちゃんが助け出した獣人さんたちのなかのひとりだ。
本当に偉い人がいたってのにちょっと驚きだった。
え? 夕飯のお味はって?
……ノーコメントで。
なんだかんだやっているうちに夕方も近くなっている。
俺たちはやたら金ぴかピンな装飾の机を囲み、お茶を飲んでいた。
俺が四次元ポケ……亜空間の魔道具に入れておいたお茶っ葉を使って淹れたものだ。
クイタさんはお茶など自分では淹れたことがないようで、普通にお茶を淹れている俺を見て驚いていた。
そして何よりも亜空間の魔道具に驚いていた。いや、まだ見せるつもりはなかったんだけどね。
じゃあ、なんでわざわざお茶を亜空間の魔道具から取り出したのか。
それはひとえに、この宿のせいである。
いや、これから割とシークレットな内容を話し合うわけだからルームサービスとかは頼めないわけです。だから、備え付けのお茶っ葉を使わせていただこうと思ったのだけど…………なに、金粉入り紅茶って!
いや、日本でもそういうお茶っ葉、寺とかで売ってたよ?
でもほどよく入ってるならまだしもそれは内容量のほとんどが金粉!
口の中にもそもそというか、ぱそぱそ当たってくるし喉越しも最悪である。
排出されるだけだよ?
消化されずに金糞が出てきちゃうよ?
「しかし、このように美味いお茶は初めて飲んだ」
クイタさんが息を吐いて目を細めた。いいえ、粗茶です。
そこでまさかの可能性に思い当たって俺は思わず身を乗り出す。
「もしかして、いつもこんなお茶を飲んでいたんですか!?」
嘘だよな、天下の皇帝ともあろうお方がこんなまずい……
「飲んでいた」
NOーーーー!!!!
躊躇うことなく頷いてみせたクイタさんに、俺はつい拳を握った。
かわいそう。皇帝なのに、美味しいお茶が飲めないなんて!
しかも、こんな! まずいものしか呑めなかっただなんて! もしかして、他の食事もこんな有様だったのだろうか。容易に想像できるだけにほろりときた。かわいそうクイタさん。
食べ物もかわいそう!
俺は食べ物を思って憤慨した。
普段は温厚なのに食べ物のことになると急にブチ切れる民族、日本人の血をーー物理的には引いてないけどーー魂的には引いている俺としては、かの暴虐の金粉入り紅茶は許せなかった。
「明らかに金粉を入れすぎです! 金粉入り紅茶じゃなくて、茶葉入り金粉じゃないですかあれ。なんでこんなことになってるんですか!?」
「うむ、金は富の象徴だからな。高級品と言えば金なのだ。ゆえに皆金の多さを競う」
憤慨して問い詰めるも、冷静なクイタさんの言葉に色々納得する。
だからこのホテル、どこもかしも金ぴかなわけですね。
「競うなら美味しさを競って欲しいです……」
「それはワシも思っていた」
がくりとうなだれた俺に、クイタさんは苦笑した。
ひょっとして、俺が昔見た、あのクイタさんの肖像画の悪趣味な衣装もそんな経緯からあんな風にゴテゴテのキラキラの成金スタイルであったのだろうか。なんというか……俺は正面の席に座って苦笑しているクイタさんが急に哀れになってきた。いつか着心地のいい服を着せてあげよう。
さて、いつまでも雑談というわけにはいかない。一応現状の整理が必要だろう。
「で、あの老人たちが私の顔を見るなり土下座をしたのは……」
「ああ、彼奴等はウィル殿をついにやって来た本物の天使だと思ったからだな。腐っても一応は聖職者。あの絵画を知ってはいたのだろう。あの焦り様、ワシの姿も目に入っていなかったと見える」
クイタさんがククっと笑った。
テラ悪役。
黒い笑みにしか見えないんだけど。俺は若干顔を青くしながら口を開いた。
「それで私が天使とおっしゃったんですね」
「だから申したろう、誤解だと」
「いや、普通信じられませんから」
ざっぱりと斬った俺の発言にクイタさんはきょとんとした。
それから、軽く事実の確認をし、そろそろお開きというところでちょうど夕餉の時間となった。
やはり奴ら、賭博も違法奴隷も常習犯であったようで、しかし尻尾が捕まらず証拠が見つからないとクイタさんも散々手をこまねいていたらしい。
俺が突入する前、遊戯室にやたら多くの気配を感じたのもやはりそういうことだったのだろう。奴ら、賭博を行っていたのだ、奴隷を景品にして。
遊戯室の奥にある空間にかなり密集させられていたしな。今頃、黒騎士の皆様が発見して解決してくれているだろう。大方、獣人の方が多いのだろうし、身元の確認作業も大変なことになってしまいそうだが……。
頑張れ、黒騎士さん!
何かあれば俺も手伝いますから。獣人の本拠地ヒダセイリにはさすがに知り合いはいないが、デューヴにならば大勢いる。まず、プースさんたち関連だろ、その取引先だろ。
あ、後はデューヴのかなり大きな商会の長にも、こういうことがあれば協力は惜しまないと約束してもらっているし。ほら、スピネルを倒す前に、グロシュイル元将軍に捕まった事件あったろ? その時に、ウィリアちゃんが助け出した獣人さんたちのなかのひとりだ。
本当に偉い人がいたってのにちょっと驚きだった。
え? 夕飯のお味はって?
……ノーコメントで。
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