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後日談たち やり残したネタとか消化していきます
145.後日談5 変な先輩
しおりを挟む「そこでね、僕は思い出したんですよ。そんな人材いるはずがないと思っていたのでしょうね。あの顔は見物でした」
俺はそのときの国王陛下の様子を思い出しながらにやりと笑った。
元皇帝――いや、ここはもうクイタと呼ぼう。クイタとの面会で思わず彼を説教してしまった俺だが、普通俺みたいなお子様にあれこれ言われればイラッとでもきそうなものだが、彼はあの見た目に反して素直というか、まじめというか、非常に効率主義で理知的な考え方をしていた為、いたく俺の話に感動してしまったのだ。
それは、もう。これまでの人生を振り返って、彼は大いに反省していた。懺悔のように謝り続けてくるものだから、今まで彼に抱いていた怒りも呆れに代わってしまったほどだ。それも獣人を奴隷にする制度も、影という組織もクイタ自身がつくりあげたわけではなかったからだ。また、影は俺の親友であるセフィスを攻撃してくれちゃったりもしていたわけだが、その影に出した指示事態も直接俺の友人に危害を与えろと言ったわけではなかったようなので、何とか呑み込めた怒りなわけだが。そんなものはよくある政治家の「秘書が勝手にやったことです」くらい建前の意味しかなく、たいした根拠になるわけではないが。
国王陛下にヒッツェのことを任されてしまった以上、今後クイタ氏とのかかわりは絶てないとわかっているので、いつまでも深い怨恨を残しておくわけにはいかなかったのだ。主に俺の精神衛生上の問題で。
そういうわけで、許そうと思う俺の理性が俺の感情に示した『建前』がまさにそれであっただけである。
まあ、いずれにせよそれくらい彼は後悔をしていた。――クイタが悔いた。
いや、別にそんな寒いダジャレ心のなかでも思ってませんけど!? クイタのおっさんは、その名に宿命を背負って生まれてきてしまったようだった。
で、ヒッツェの属国化と実効支配を行うに当たって、当然俺は本国に向かわなければならないのだが。運営を行うためには俺個人が行ったところで意味はないのだ。
国家の運営とは組織の統括である。組織がなければなりたたないのだ。いつかそんなことを考えていたような気がするが、まさかあれがフラグだったのではあるまいな。
フラグの神様にちょっと問いただしたくなったが、それは置いておいて。
とりあえず問題はその人材であった。そこで国王陛下は、少なくとも情報を集める諜報の人員ぐらい俺直属の部下が最低限いなくてはならないだろうとおっしゃったのだ。そして、もしすでに思い当たる人材がいれば任命権を委任するぞ、とも付け加えられた。
もちろんいないと思っての冗談だったのだろう。証拠にニヤニヤと笑っていた。普通8歳の少年に部下にしたいフリーの諜報員の知り合いなどいるはずもない。しかし、そこは期待を裏切りたくなるじゃないか。
「まあそんなわけで、カルシウス先輩さえよろしければ騎士団所属の情報部隊員で、僕の直属の部下になっていただきたいのですが」
「ど、どんなわけ!? 唐突すぎるよウィル君!」
ちなみにカルシウス先輩にはそのへんの――ヒッツェがエイズームの属国になるだとか、その総司令官に俺がなったとかいう――事情はまだ話していない。
いずれ民間にも広がるだろう情報だが、いまはまだ十分に機密情報なのだ。
いや、カルシウス先輩のことだから実は知っていたりしそうで怖いのだが。
いまや普段はその歳に似合わないポーカーフェイスなそのお顔が驚きに染められている。しかもノリノリでツッコミをいれてくるだなんて。それだけ驚いたということだろう。
「で、やります?」
いまはそんな驚きに満ちた先輩の事情はあえて無視して俺は同じ質問を繰り返した。なぜならばだ。
「やれるならやりたいに決まってるよ」
ほらやっぱりな。
カルシウス先輩の答えは予想できていたから。
「では、先輩は今日から僕の直属の部下としてヒッツェ皇国に潜入調査していただきます。この度、ヒッツェがエイズーム王国の属国になりましたので。あ、ちなみに僕は総司令官とあいなりました」
いや、しかし。さすがのカルシウス先輩も驚きで開いた口がふさがらない状態になってしまっている。
さもありなん。
半ば冗談で言っていた自身の希望が通ってしまっただけでなく、さらにはそれが特大のビックニュースとともにやってきたのだ。
そんなわけで、人材ゲットいたしました俺としましては。
今後のやらねばならない、やってくるやっかいごとにめんどくささを感じつつも、何だか未来にわくわくきていたりもするのだった。
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読んでいただき、有り難き幸せ。
クイタは悔いた。
クイタの名前はこのダジャレが言いたいが為に決めましたw
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