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こつこつ学徒編
◆25.サンの日記
しおりを挟むサンの日記
今日はウィルがどっかに行って、授業をさぼった。
でもウィルのことだから、何の説明もなしにいきなり姿を消すなんておかしい。きっと何か重要な用事があって、どこかに行ったんだとは思うけど、書置きに『ちょっとでかけてくる』だけしか書いてなかったんだからわけがわからない。何か事件に巻き込まれているなら大変だと思ったけど、学園長が大丈夫だと苦笑してたらしい。苦笑していたってことはたぶんきっとさぼりなんだと思う。でもさぼりをするなら僕に何か言ってくれてもいいのにと思う。やっぱり何か用事があるのかな?
でも、とにかくヴァリーノ先生にかきおきの話をしたらすごくこわかったから、ウィルに罪はあると思う。
◆
今日は魔法詠唱の発音練習の授業と、算数と、国語の授業があった。文字はもう読めるから正直国語の授業はねそうになるからたいへんだ。算数ももうウィルに教えてもらって大分進んでいるし、たいへん。詠唱の発音も単音で区切って言うなら簡単なのに、母音を続けて発音するのが難しくて一つひとつ区切ってしまう。セフィスはメリアたちと遊ぶと言っていたからひとりで図書館に行った。飛び級のために先の学年の参考書を借りてきたけど、結構ひとりでも解けそうで安心。
◆
参考書がぜんぜん解けなくなってきた。公式もわからない。ウィルにはサポートだけしてもらってるつもりだったけど、ウィルがいなくなって一週間でわからなくなるなんて、僕は本当はひとりじゃできていなかったのかもしれない。でも、ちゃんと自分でべんきょうできなきゃ飛び級をしても先がない。僕がはやく魔道具の免許をとらないと、父さんが心配だ。
◆
朝起きるとウィルが帰ってきてた。やっぱりただのさぼりだったみたいで、ヴァリーノ先生の召喚の授業にでるのをこわがっていたのをひっぱっていってやった。さぼりはだめだ。ヴァリーノ先生はこわいから。
それと、実は僕が勉強できなかったわけじゃなく、参考書を二年分飛ばして間違えて借りてきてしまっていただけということがわかった。一安心だ。僕がうっかりしてた。こんなんじゃ適当で天然の父さんを笑えない。僕がちゃんとあの適当な父さんの店を舵取りしないと、お隣のルビー姉さんにもめいわくがかかってしまう。
◆
今日はすごく驚いたことがたくさんあった。まず朝のホームルームのときに、教室にサルーダ先生のかわりに頭が目玉になっている、10cmくらいの大きさの小さな魔獣がやってきた。その魔獣はまさか国王陛下の召喚獣だったんだ!
目玉さんの指示で体育館に向かうと、ステージに国王陛下がやってきて、ウィルを借りた、とかいって笑っていた。ウィルががっくり肩を落としていたから本当のことだとは思うけど、ちょっと信じられなくて僕は国王陛下の説明をあんまりちゃんと聞けなかった。びっくりしているうちに国王陛下は壇上からさがってしまった。
そのあと、教室に帰るとサルーダ先生が『水着』という水のなかで泳ぐための服でまっていた。『すいえい大会』で着るらしい。僕たちがきる水着はサルーダ先生の着ていたものとはちょっと形が違うけど。でもあのパンツみたいな形のすごく布地の小さい水着じゃなくてよかった。そういえば朝にウィルとセフィスからあと一ヶ月で『すいえい大会』があるって教えてもらった。大会は泳ぎの速さを競う大会らしいけど、僕は泳いだことがないからちょっと不安。
◆
今日はホームルームで『すいえい大会』のチーム発表があった。ウィルとセフィスとミィが同じチームになった。泳げないのは僕だけだって。練習がんばらなきゃ。でもウィルが教えてくれた作戦がすごいからちょっと安心。さすがウィルだと思った。この作戦は秘密のことなので、日記には書かないことにする。だって、誰かに見られたら大変だからね。
◆
今日はすいえい大会の練習をした。しぬかと思った。
みんな泳げるから僕だけ泳ぐ練習をしてたんだけど、なんでみんな泳げるんだろう。おかしいよ。だって、水のなかは手足は重くなるのに体はうこうとするし、それなのに進もうとすると沈むんだ。僕は前に進むっていう大きな目標を立てた。
◆
今日はすいえい大会で僕たちが優勝した!
ウィルの作戦が大成功だ! 魔法なんだから召喚魔法でもいいだろうっていうウィルのちょっとひねくれた考えは通用した。僕は獣型魔獣のドドグのリック君だったから水着をくわえてひっぱってもらったんだけど、ちょっと水着が脱げかけて焦った。みんなは泳げるからもうちょっとスマートに連携してた。でもウィルはちょっと反則だと思う。だって、僕たちのレーンの水がシロさんの魔法でがばーんって割れたんだ! で、その足元にちゃぷちゃぷちょっとあるだけの水のうえをウィルが走っていった。ウィルは足も速いし、超はやく終わった。でも優勝できたから、嬉しい。
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