転生しちゃったよ(いや、ごめん)

ヘッドホン侍

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あくせく旅路編

◆12.お父様とランチ(メリア視点、??視点)

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(メリア視点)

 この春から学園に入学しました、メリアです。私のお父様はカルセドニー商会の代表を務めているのですが、それが今日一緒におでかけできるのですよ!
 入学の前にお父様と約束をしていたのです!
 私はついつい上機嫌で同室のセフィスちゃんに自慢をしてしまいました。王都の商店街をみてまわるのです。敵情視察なのです。

「あ、お父様!」

 学園の門を出ると、すでにお父様は門の前に立っていました。ぽよぽよのお腹も細くなっていませんね!
 お父様は元気がなくなるとお腹がへこむのです。

「おお、メリア。久しいな」
「お久しぶりです! お父様は御加減いかがですかー?」
「元気も元気。金がそこにある限り、父さんは元気」

 お元気なのはわかっていますが、久しぶりに会えたので思わず嬉しくなって飛びつきながらそんな質問をしていまいました。

「メリアも学園では楽しくやってるか? 友達はできたんか?」

 さっそく心配そうに聞いてくるお父様に私は大きく頷きます。

「できましたよ! 学園は楽しいです! 同室の女の子ともとても仲良くなれましたし」

 そうそう、その同室になったセフィスちゃんという女の子は、最初とても不機嫌でこわかったです。エルフの女の子なのですが、つねにぷりぷりと怒っていました。私が何かしてしまったのかなと思いましたが、話す前からそうだったので、きっと人族が嫌いなのかなと思いました。他国ではエルフは差別されたり、ギャクにエルフが人族を差別していたりするそうですから。
 でもやっぱり何か理由があるからだと思うのでなかよくなりたいと思っていたのですが、魔力測定があった次の日から、なぜかセフィスちゃんはとても楽しそうにしていました。そして私に不機嫌にしていてごめんと謝ってくれました。
 急にどうしたのか、気になってきいてみたら、あのウィルくんに助けてもらったんですって。
なんでもいつでも妖精の声がきこえてしまうものだから、うるさくてしかたがなかったのだとか。でもそれを助けられるウィルくんってすごいですね!
 ウィルくんは学園でいま一番注目されている男の子です。
 なんたってその容姿! 天使のような愛らしさとかっこよさを兼ね備えた姿に女の子たちはわきたっていたのですが、最近になってわかってきたことがあったのです。
 なんと、その正体はあの! 騎士団長であり現公爵家当主のキアン=ベリル様のご子息!
 だからあんなに頭がよくて、やさしくてかっこいいのですね!
 そう、ウィルくん、早期入学生で本当に頭が良くて、初日の算数の授業では「これはいまやってるのの発展で高学園で教えてるような内容だが」とか言って、授業をきいてなかったウィルくんを焦らそうと当てたサルーダ先生のだした問題をすらすらと解いてしまったんですよ!
 しかも、魔力量もすごいってうわさです。クラスで魔力測定をしたとき、測定器がウィルくんの番でこなごなに割れてしまったのですが、それがなんとウィルくんの魔力が多すぎたのが原因、だなんてうわさが流れています。エルフの人たちの測定のときにウィルくんがやってきたそうですし……すごいですよね!

「そうそう、その同室の子、あのウィルくんとなかがいいのですよ!」
「ほう? ウィルくん……というと……?」
「あの、公爵のご子息のウィリアムス=ベリル様ですよ!」
「なんと! ベリル家の!? これは良いコネを得たな! メリアや。商売繁盛や」

 私の言葉にお父様はにやにやと笑いました。
 私もにやにやと笑います。
 ちなみに敵情視察に訪れたレストランのおあじはとってもおいしかったです。
 


◆(??視点)

 これだけ待たされたわりには簡単な仕事であった。
 これならば、自分が出向くこともなかったのではないか、と男は苦笑した。

 すでに夕方になった外にあいまって部屋の中は薄暗い。

 くくっと笑い声を漏らした男が、オレンジ色に光る窓辺に近付いた。
 男――黒いローブを着た男が、目深にかぶったローブからわずかに見える口元がにぃと歪む。
 男はローブの中に手を突っ込むとかちゃりと小さな音を立てて、何かを取り出した。

 口髭を携えたその口元が見る間に変化していく。一見すると、髭が肌に戻っていったように見えた。そして骨格すら変わった。

「――他愛もない」

 可愛らしい娘さんが色々と教えてくれたものだ。
 彼女としては『お父様』に話したつもりなのだろうが。先ほどまでメリアに『お父様』と呼ばれていた男は完全にほっそりとした姿になっていた。そして、男はどこからか取り出した仮面を顔につけた。

『セフィスちゃん、本当に仲がいいのです。羨ましいのです!』

 目を輝かせて教えてくれた親切な少女には感謝せねばならない、と皮肉たっぷりに笑う男はいつになく楽しそうで、目を爛々と輝かせていた。

「それに、……この時期学園は五月祭、ですか。ちょうどいい」

 ぽつりと呟かれた言葉が暗闇の部屋に溶けていった。


************************************************
メリア:茶髪を三つ編みにしているタレ目に丸めがねな女の子。
    ほわわんとした空気をまとっているが、同時に真面目そうでもあるのでウィル曰く『聖母で学級委員長キャラの上にドジッ娘の要素まで取り揃えてる、最強』。
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