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第1章 入れ替わった二人がそれぞれの生活をはじめるまで
11.髪型って大事だなと思うわけですよ
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早朝の教室で話しかけてきてくれたのは、髪を二つのおさげにした、眼鏡をかけた女の子だ。非常に真面目そうな雰囲気といい、すごく委員長っぽい。
「おはよう、日暮君。私はこのクラスの委員長をやっている、三ツ沢 園子です。先生から日暮君のお話を伺いまして、日常周りでのサポートを承りました」
本当に委員長だったー! そして、委員長っぽい口調だー!
ひとり勝手にテンションを上げながら、委員長さんに駆け寄る。
「おはよ! ありがとう! 助かるわ……!」
そのままのテンションで委員長の手を取ってブンブン振り回したところで、やっべ、と思い当たる。完全に『私』のテンションで話しかけちゃったけど、今の私男の身体だったわ。さすがにおそらくそんな親しくないであろう雰囲気の女の子の手をいきなり握るって、セクハラだよね……。
慌てて手を放して距離を取る。
「ご、ごめん。テンションが上がっちゃって……」
「別にそんなに気にするようなことでもないから大丈夫ですよ」
ペコリと頭を下げてから顔を上げると、前髪が邪魔をするので右手で払う。そして、委員長さんの顔を見上げると、少し困ったように眉をハの字に下げた表情で許してくれた。
うん、その表情からして本当に気にしていなさそうだな。これは、きっとユウが男としても意識されていないってやつだ。救われた。
「本当ありがとう、その、……あの、どう呼んだらいい?」
「クラスでは委員長か、三ツ沢って呼ばれることが多いです」
うん、心の中でもすでに私は彼女のことを『委員長』と呼ばせてもらっていたわけだし、それなら委員長と呼ぼう。
「よろしくね、委員長さん。さっそくで申し訳ないんだけど、私の席を教えてもらえると嬉しい」
「あ、そうですよね。日暮君の席はこっちです」
ジーザス。委員長に案内された席は、教卓の真ん前。最前列のど真ん中だった。
すっげえ真面目に授業受けないといけない席じゃん。ユウってば運悪いなぁ……。
「あの、日暮君。時間割とかはわかりますか?」
「うん、幸いスマホのロック画面にしていたみたいで。ナイス過去の自分だね。それに日曜日から記憶がなくなってしまったんだけど、金曜日か土曜日の自分がもう準備してくれていたみたいで教科書とかも今日の分はちゃんとそろってるんだ。気遣ってくれてありがとう。……ちょっと明日以降、困るかもしれないからそのときに助けてくれると嬉しい」
「そうでしたか、よかったです。あとは、移動教室の時とかはサポートしますから! 一緒に行きましょうね」
そう言ってはにかんだ委員長さんは、真面目そうな印象から外れて年相応な少女という感じになってプリティーだった。眼鏡と髪型が野暮ったいからいかにも昭和の委員長感があるけど、この子顔はすごい整っててかわいいよね。
しかもこんな気が利くなんて、絶対モテる。こういう密かな美少女こそモテるんだよ。私知ってる。
「ありがとう、本当に。こんなかわいい委員長さんと一緒に教室が移動できるなんて、私は記憶喪失してよかったかも……なんてね!」
「ひ……日暮君、記憶喪失したってホントなんですねぇ……そんな冗談言うなんて」
委員長さんはちょっと顔を赤くして、私から目をそらしてそう言った。うーーん、女子の時は本当に冗談で済ませられたけど、男の身体になった今、ちょっと臭すぎるセリフだったりしただろうか。ハルの身体のときは喜んでもらえたけどな?
しっかし、顔を赤くしてる女の子というのは、女の私から見てもかわいいよねぇ。顔をそらしている委員長さんの顔を見ようと動くと前髪が顔にかかる。マジでこの前髪邪魔だな。
右手でくしゃりと前髪を持ち上げてから、委員長さんを見ようとすると、立ち直った委員長さんがこちらに向き直っていた。残念。
「委員長さんがかわいいっていうのは冗談ではないからね」
一応訂正をしておかねばなるまい。女の子はかわいいと言われるとかわいくなるらしいし。かわいい女の子を見るのは眼福ですし。
「も、もう! 日暮君!」
真っ赤になってしまった委員長さんが自分の席に戻って行ってしまったのをによによ見送りながら、鞄を机に置き、1限目の準備をする私だった。
あ、前髪マジ邪魔だから美容院の予約をしておこう。
「おはよう、日暮君。私はこのクラスの委員長をやっている、三ツ沢 園子です。先生から日暮君のお話を伺いまして、日常周りでのサポートを承りました」
本当に委員長だったー! そして、委員長っぽい口調だー!
ひとり勝手にテンションを上げながら、委員長さんに駆け寄る。
「おはよ! ありがとう! 助かるわ……!」
そのままのテンションで委員長の手を取ってブンブン振り回したところで、やっべ、と思い当たる。完全に『私』のテンションで話しかけちゃったけど、今の私男の身体だったわ。さすがにおそらくそんな親しくないであろう雰囲気の女の子の手をいきなり握るって、セクハラだよね……。
慌てて手を放して距離を取る。
「ご、ごめん。テンションが上がっちゃって……」
「別にそんなに気にするようなことでもないから大丈夫ですよ」
ペコリと頭を下げてから顔を上げると、前髪が邪魔をするので右手で払う。そして、委員長さんの顔を見上げると、少し困ったように眉をハの字に下げた表情で許してくれた。
うん、その表情からして本当に気にしていなさそうだな。これは、きっとユウが男としても意識されていないってやつだ。救われた。
「本当ありがとう、その、……あの、どう呼んだらいい?」
「クラスでは委員長か、三ツ沢って呼ばれることが多いです」
うん、心の中でもすでに私は彼女のことを『委員長』と呼ばせてもらっていたわけだし、それなら委員長と呼ぼう。
「よろしくね、委員長さん。さっそくで申し訳ないんだけど、私の席を教えてもらえると嬉しい」
「あ、そうですよね。日暮君の席はこっちです」
ジーザス。委員長に案内された席は、教卓の真ん前。最前列のど真ん中だった。
すっげえ真面目に授業受けないといけない席じゃん。ユウってば運悪いなぁ……。
「あの、日暮君。時間割とかはわかりますか?」
「うん、幸いスマホのロック画面にしていたみたいで。ナイス過去の自分だね。それに日曜日から記憶がなくなってしまったんだけど、金曜日か土曜日の自分がもう準備してくれていたみたいで教科書とかも今日の分はちゃんとそろってるんだ。気遣ってくれてありがとう。……ちょっと明日以降、困るかもしれないからそのときに助けてくれると嬉しい」
「そうでしたか、よかったです。あとは、移動教室の時とかはサポートしますから! 一緒に行きましょうね」
そう言ってはにかんだ委員長さんは、真面目そうな印象から外れて年相応な少女という感じになってプリティーだった。眼鏡と髪型が野暮ったいからいかにも昭和の委員長感があるけど、この子顔はすごい整っててかわいいよね。
しかもこんな気が利くなんて、絶対モテる。こういう密かな美少女こそモテるんだよ。私知ってる。
「ありがとう、本当に。こんなかわいい委員長さんと一緒に教室が移動できるなんて、私は記憶喪失してよかったかも……なんてね!」
「ひ……日暮君、記憶喪失したってホントなんですねぇ……そんな冗談言うなんて」
委員長さんはちょっと顔を赤くして、私から目をそらしてそう言った。うーーん、女子の時は本当に冗談で済ませられたけど、男の身体になった今、ちょっと臭すぎるセリフだったりしただろうか。ハルの身体のときは喜んでもらえたけどな?
しっかし、顔を赤くしてる女の子というのは、女の私から見てもかわいいよねぇ。顔をそらしている委員長さんの顔を見ようと動くと前髪が顔にかかる。マジでこの前髪邪魔だな。
右手でくしゃりと前髪を持ち上げてから、委員長さんを見ようとすると、立ち直った委員長さんがこちらに向き直っていた。残念。
「委員長さんがかわいいっていうのは冗談ではないからね」
一応訂正をしておかねばなるまい。女の子はかわいいと言われるとかわいくなるらしいし。かわいい女の子を見るのは眼福ですし。
「も、もう! 日暮君!」
真っ赤になってしまった委員長さんが自分の席に戻って行ってしまったのをによによ見送りながら、鞄を机に置き、1限目の準備をする私だった。
あ、前髪マジ邪魔だから美容院の予約をしておこう。
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