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第2章 宝玉を追いかけていたら世界を救っていた
39.宝玉の行く先 前編
しおりを挟む『朔の日』から1か月。
街の防壁は空の部分を除いて、そのまま設置しておくことになった。壁を作る際、どうしても残しておけない離れ小島になってしまっていた民家などを撤去して俺の『無限収納』にしまっておいたので、それを戻したり、冒険者の死者こそ出なかったもののけが人は多かったので、その治療のための施設をつくったりなど、色々復興を手伝ってきた。
その過程でクレト様と一緒になることが多かったので、おそれおおくも結構仲良くなれてきたと思う。いや、クレト様を直視しながら話すと美しすぎてつい拝みそうになるので、目線を外していることが多いけど。
そして、そういうときファナさんに背中をつままれる。かわいい。
「ふぅ……ようやく一段落したという感じですね。紅茶でも入れてきましょう」
そう、いまのように。
打ち合わせが終わって、息をついたクレト様がその気はないことはわかっているが憂いた溜息をもらしているようで麗しすぎたのだ。それを直視しまいと目をそらした瞬間、ファナさんと目が合ったのでわかった。
――あ、ばれたって。
いや、嫉妬してくれているんだとかわいく思う反面、申しわけない。いや、本当浮気とかそういうものじゃなくて、推しのアイドルに対するものなんだよね。
やっぱり付き合っている以上、こういった誤解は禁物だと思うので、俺はその誤解を解くべくクレト様が出て行ったのを見計らって口を開いた。
「あ、あの、ファナさん? 別に俺に変な意味はなくてですね、あれはそう、芸術品を見た時の気持ちなんですよ」
なかなかうまい説明なんじゃないだろうか。
「でも、芸術品を見た時には目をそらしたりなんてしないだろう」
ファナさんはぷんすかしている。かわいい。……いや、じゃなくて。
いや『推し』に対面したら尊すぎて「目が、目がぁあ!」というのは現代日本に生きていた若者になら伝わる感覚なのかなと思ったりするのだけど、ファナさんには『推しのアイドル』とか言う単語のニュアンスは伝わらないし。
「いや、俺なんかが見たら畏れ多いというか、尊すぎて見てられないというか……」
しどろもどろになりながら(それが余計怪しいとわかっている)必死に説明していたら、茶器を取りに行っていたクレト様が戻って来てしまった。
「芸術品の話ですか? マコトさんのそれは我々聖職者が神に抱くようなものに類する感情なのではないでしょうか」
クレト様ファインプレーだ。まさにそれだ。こっちの人に伝わる表現!
なんとかファナ様からも納得をもらえたようだ。背中をつまんでいた指が外れた。軽くあざになっているような気がしないでもないが、まあ、これは俺が悪いのでよしとしよう。そしてファナさんがかわいいのでよしになるしかない。
しかしクレト様、俺の説明がまさか自分に対するものだとは思っていないだろうなぁ……。つい遠い目になる俺だった。
◆
最近街に出ると、囲まれることが多くなってきた。顔が知られるようになってきたからだろう。
英雄なのだという。この俺が。
いや、英雄っていったらマッチョマンかマッチョウーマンがなるものだと思っていたので、びっくりしました。
もともとコミュ力が豊富な方ではないので、ありがたく思う反面、ちょっと気疲れしてきたなぁと思っていたこの頃。
ファナさんも街の友人の女の子とカフェに行ってくるとのことなので、今日は宿に引きこもって、『無限収納』の整理を行うことにした。
定期的に整理・整頓を行わないと、長年使った会社の共有フォルダみたいになる。どういうことかというと、ぐっちゃぐちゃのごっちゃごちゃで何がどこにあるかわからず、そもそも何があるのかすらわからない状況のことだ。
と、整理をしようと『無限収納』のソート機能を意識した瞬間、気が付いた。
『宝玉』という表示がめっちゃズラーと並んでますやん! と。
ひとまとめにならないの? と思ったときにはひとまとめになっていた。その数なんと、約10000。ファナさんと山分けにしたのにこの数ですよ。
『朔の日』がくるまで集めていた宝玉にあわせて、この間の『朔の日』で更に在庫が増加したのだ。なんか、いろいろ便利なことに使えるらしいと聞いて、夢の現代日本社会の生活を再現できないかと溜めてきたが、こんなに使い切る日が来る気がしない。
そもそも魔法の道具みたいなのは王都の職人しか作れないらしいし、ファナさんとの快適な生活を捨ててまで王都まで遠出する気も湧かないし。
一層、ファナさんと同じように貯金として扱おうかな。いざというときに換金するカンジで。
でも、これだけ売ると、値崩れしそうだ。
どうしようこれ。
おもむろに宝玉を取り出して、手で遊ぶ。ころころした丸い色の透けた玉って感じなので、ビー玉みたいだ。ビー玉にするには高すぎるしなぁ……。
そんな馬鹿なことを考えながら、『無限収納』から取り出したガラスをうにょうにょと動かしてサイダーの瓶みたいな形を作りながら、何気なく宝玉を念動力で動かしてみようとしたところ。
「え?」
宝玉から一筋の光がはなたれた。
なにこれ。
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