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第1章 家をつくろうと思っていたら街ができてい

18.スキルが活かされるとき 1

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 今日は採集をしようとファナさんに誘われてギルドに向かう。
 そろそろブドゥーンが旬なのだという。

「ブドゥーンってどんな果物なんですか?」
「粒粒したやつだ。紫色の皮をむくと、緑色の実が出てくる。体力回復薬の材料になるらしいが、普通に食べても甘くてうまいぞ」

 それ絶対葡萄ブドウだ。
 ワインとかもつくっていたりしないのだろうか。ワインという存在を久々に思い出したが、思い出すと飲みたくなってくる。
 ワインの作り方とか知らないけど、沢山とって沢山トライ&エラーを繰り返せばたどり着けるのでは? いや、人類が何百年もかけて築いてきた味にはたどり着けないだろうけど、何とかそれらしきものの原型くらいには……。
 そんな風に考えながら歩いていると、すぐに冒険者ギルドに到着した。
 そもそも冒険者であるファナさんが借りている宿であるので、冒険者ギルドと近いのだが。

「はーい、いらっしゃい! ファナ! マコト君! 待ってたよ!」

 もはや恒例となっている受付のお兄さんのもとへ向かうと、がっしり両手を握られた。

「え? え?」
「ファナさんとマコト君に、ギルドからの指名依頼が入っているんだよ! ぜひやってもらいたくて」
「え、えーっと、ファナさんにじゃなくて俺たちにですか? というか、指名依頼ってなんでしょうか」
「うん、君たち二人合わせた指名だよ。指名依頼っていうのは誰でも受けられる依頼じゃなくて、誰か受託する人を指名して設定される依頼のこと。別に強制されるものじゃないから、断ってくれても大丈夫なんだけど、ギルドとしては受けてくれると嬉しいな。それに、君たちにとっても悪い話じゃないと思うし。確実に儲けられるよ」

 気に入った美容師やマッサージ師がいたら指名料払って指名する感じか。
 しかし、俺たち二人セットでの指名かぁ。おそらく、ファナさんを指名するとしたら圧倒的な戦闘力だろうし、俺を指名するとしたら採集能力というか収納能力を目当てにしてのものだろう。二人とも必要ということは、危険なところから沢山採取してほしいものがあるってところだろうなぁ。
 危険なところって考えると、平和にぬくぬく浸かっていた俺としては、何だか少し足がすくんでしまうが、断ってもいいとのことだし、話を聞くくらいならいいだろう。
 そう考えながらファナさんをみると、口を開こうとしていた。

「まあ受けるかどうかは、どんな内容か聞いてからだな」

 ファナさんの答えからも、俺の考え方が冒険者として間違っていなかったことがわかる。

「じゃあ、説明するからこっちに来てね」

 受付のお兄さんに連れられて、ギルドに設置されている簡易的な会議室のようなところに入る。冒険者相手に飲み物を出すような気の利いたサービスはないようなので、お兄さんに飲食可か確認して、無限収納から飲み物を取り出す。俺特製マンゴーオレンジジュースだ。

「ファナさん、どうぞ。お兄さんもどうぞ」
「おお、ありがとう。マンゴーオレンジのジュースはうまいよなぁ」
「あ、ありがとう。マンゴーオレンジでさえ一般人には高級品なのに、それをジュースとかめちゃくちゃな贅沢だよ。……とても美味しいねえ」

 マンゴーオレンジジュースを飲んで一息ついたところで、お兄さんから今回の指名依頼に関する説明がスタートした。





 街を出た俺たちはいつものように森に向かっていた。しかし、向かう先はいつもの場所ではない。いつもの森より、ずっと深い森の奥だ。
 結局俺たちはギルド指名の依頼を受けた。
 依頼内容としては、森の奥にある巨木及び石材の採取。要は建材の採取依頼だった。
 ギルド大口のお客様が大きさな建物を建てる予定らしく、大量の建材が必要となったのだがこんな辺境の危険な地で、安全に安定して材料を集められる地点などない。しかしギルドはそのお客様に恩は売っておきたい。
そんなわけで『無限収納』とファナさんの武力により採取依頼無双をしていた俺たちに白羽の矢が立ったというわけだった。
 森の奥と言えども、それはせいぜい俺が防衛拠点を築いていたあたりだったので、そのあたりならファナさんも余裕、俺も見知った場所であることだしそこまで負担にならないだろうということで受けることになったのだった。

 しかしここ最近、やっと森に慣れてきたような気がしていたが、徐々に暗くなっていくような視界にそれは間違いだったと気が付く。森の匂いも湿り気を帯びてきたような気がする。
 足元に広がる木々の根っこも太くなっていく。それに足を取られて躓(つまづ)きかけた。

「おっと」

 ファナさんに片腕でキャッチされて、事なきを得た。ヤダ、イケメン。
 抱き起こされるような格好になったところでファナさんと目が合って、心臓が動き回る。イケメンだし、美人だし、美人は三日で慣れるとかいうことわざがあるけど、それは嘘だったと分かる。

「ファナさん、ありがとうございます」

 胸のときめきを抑えながらお礼を言い、今度こそ転ばないように用心に用心を重ねて歩く。森歩きはまだまだ慣れていないようだから。
 しばらくして息がぜえはあ切れてきたという頃だった。
 前方にチラリと緑色の巨大な物体が見えた。

「あれは……!」

 視界に映ったのは、俺がかつて造り上げた防衛拠点の城壁だった。岩で造り上げた巨大な樹状の壁は、苔むして、ところどころに草や花が生えていた。
 古代遺跡感が出ていて、なんだかとっても素敵じゃないか。

「なんだあれは!? こんなところに人工物が!?」

 ファナさんが横で驚いている。
 あれ? 助けてくれた時には見えていなかったのだろうか。

「あれは俺が念動力と無限収納のちからを使って造り上げた防衛拠点ですよ。しばらくはあの中に過ごしていて安全に暮らしていたのですが、服が限界を迎え外に出てきたところであの巨大蟻に襲われ、それをファナさんに助けられたのです」
「あれをお前がつくったのか!? お前のスキルは無限の可能性を秘めているな」
「随分驚かれていますけど、前来たときは見ていなかったですか?」
「ジャイアントアントと、お前という存在に目が行っていたから、そこまで気にしていなかったな……私の目は節穴か?」

 ファナさんが首を傾げる。うん。それはちょっと俺も否定できないかもしれない。
 こんな巨大な建築物が目に入っていなかったって……。
 最後の言葉は聞かなかったことにして、話題を変えることにした。

「木材を集めるのにはさすがに骨が折れそうですし、時間がかかりそうですから、この『防衛拠点』を拠点として使って活動していきましょう。ついでに俺のつくった最高傑作をお披露目しますよ」
「おお、それはいいな。久々に野営かと思っていたが、この分なら思ったよりずいぶんと快適に過ごせそうだ」

 俺たちはぐるりと隙間なく張り巡らされた岩の壁の外周に沿って歩いて行き、人一人がぎりぎり通れる隙間を探し出して、俺のつくった防衛拠点内に侵入した。
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