猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

咲良緋芽

文字の大きさ
上 下
73 / 77
その後

その後①

しおりを挟む
 ―1ヶ月後―



チリン――と鈴の音を響かせ、ドアが開く。

「いらっしゃいませ!」

私はその音にパッ!と顔を上げ、声をかけた。

「おっ。実森ちゃん、いつも元気だね!」

常連の金さんが、新聞紙片手に入って来た。

「はい!元気です!いつもので良いですか?」

「おう!よろしくな」

「はい!お待ちくださいね!」

私と金さんが毎度お決まりの会話をしていると、横から

「よく言いますね。こないだ盛大に風邪を引いた癖に」

と食器を下げに来た三毛さんが、チャチャを入れて来た。

私はその言葉にピクッと眉を動かし、

「あれ?それ、そもそもの原因って誰のせいでしたっけ?」

笑ってない笑顔で、三毛さんに問う。

「……僕のせいです、すみません」

「そうですよね」

素直に謝って来たので、許してやる。

「ぶわっはっはっはっ!三毛ちゃん、早速尻に敷かれてるねぇ!」

私達のやり取りを見ていて、金さんが笑い出す。

「そうなんです、金さん。実森さん、意外と気が強くて」

三毛さんが、ハンカチで目元を押さえる。

私はカチンッ!と来て、それに言い返した。

「それを言ったら、三毛さんだって意外とズボラじゃないですか!こないだだって、シワシワのシャツで出掛けようとするし、まさかの初デートで遅刻して来るし!しかも頭爆発してたし!予定してた映画観れなくて、まあ、仕方無いか……と思ってレストランに入ったは良いけど、ワイン一杯で酔い潰れちゃうし!あの時はホント、散々だったんですからねっ!?」

人指し指をビシッ!と立てて、詰め寄った。

「うっ……それは……」

「それは、なんです?」

「……ごめんなさい。今度からはちゃんとします」

「謝れば済むと思ってるんですか?」

「……ごめんなさい」

涙目でシュン……と縮こまった三毛さんを見て、ちょっと言い過ぎたかな?と思う。

はぁ、と溜め息を吐き、

「……まあ、次からちゃんとしてくれれば良いですから」

と、仏心を出した。

……のが間違い。

「本当ですかっ!?」

三毛さんが私の手を掴み、パァァァッ!と顔を輝かせる。

するとどこからともなく「あ~あ」と言うため息交じりの声が聞こえた。

え、え?何?

「……実森ちゃん。そこで許しちゃ、三毛ちゃんの思うツボだよ……」

そう言いながら、金さんが頭を横に振る。

「え?……え?」

店内を見回すと、他のお客さん達、特に女性達が、うんうん、と頷いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした

日下奈緒
恋愛
課長としてキャリアを積む恭香。 若い恋人とラブラブだったが、その恋人に捨てられた。 40歳までには結婚したい! 婚活を決意した恭香を口説き始めたのは、同期で仲のいい柊真だった。 今更あいつに口説かれても……

処理中です...