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最終章
結子さんに会った➁
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「あの人には幸せになって貰いたいの。本当はわたしが幸せにしてあげたかったけど、もうそれは出来ないから……」
さわさわと足元を擽る花に答える様に、しゃがんでその花達を突いている結子さんの横顔は、少し前の三毛さんと同じ様に淋しそうだった。
「空からあの人を見ていてずっと願ってた。いつか、傷付いた伸ちゃんの心を救ってくれる人が現れます様に……って。あの人、わたしが死んじゃってからどんどん心を閉ざして行っちゃって、見ていてとても辛かったわ。でも、絶対に伸ちゃんを救ってくれる人が現れるって信じて見守って来た」
そう言って結子さんがスッと立ち上がり、私の方を向いて微笑んだ。
「そうしたら実森さんが現れた。実森さんと接してる内にちょっとずつ元気になって笑顔を取り戻して行く伸ちゃんを見て、『ああ、もう大丈夫だな。この子なら伸ちゃんを幸せにしてくれる』って思ったの」
ゆっくりと、結子さんが私の側に寄る。ふわっと温かい感触が手に伝わり、結子さんが私の手を握っているんだと分かる。
「だから、伸ちゃんの事これからもよろしくね。ちょっとヘタレな所もあるけど見捨てないであげてね?」
(結子さん……)
結子さんの言葉を聞いて私は力強く頷き、その手を握り返した。
(はい!任せて下さいっ!)
「ふふ、良い返事。頼んだわよ。……ああ、それと」
(はい?)
「さっき、伸ちゃんが生田さんとキスをしたって思ってるかもしれないけど、アレ、未遂よ」
(えっ?……そう、なんですか?)
「ええ。ギリギリであの人が避けたの、わたしちゃんと見てたもの。だから、怒らないであげてね?)
(分かりました)
私は、結子さんが言うなら間違いないのだろう、と頷いた。
「……あ、もう時間ね。そろそろ目を覚ましなさい。伸ちゃんが泣いてるわ」
(え……)
その時、ザァッ!と強い風が吹き抜け、足元の花びらを巻き散らす。
(わっ!!)
一瞬だけ通り抜けた強風。
(……凄い風でしたね。結子さん、大丈夫ですか?)
結子さんの方を見ると、今まであったはずの結子さんの姿は無かった。
(あれ?結子さん……?)
辺りを見回すと、ここに立っているのは私一人。
(結子さーん!)
呼んでみても、私の声が木霊するだけ。
どこに行ったんだろう?
『み……り…ん……みも……さ……』
(え?)
何処かからか、私の名前を呼ぶ声がする。
(この声……三毛さん?)
どうやら、名前を呼んでいるのは三毛さんの様だ。
(あ、さっき結子さん、三毛さんが泣いてるって言ってたっけ。じゃあ早く戻らないと……)
でも、どうやってここから現実に戻れば良いんだろう?
そう思った瞬間、目の前が光りに包まれ身体が宙に浮いた様にフワフワする。
(あ……)
これで三毛さんの涙が止まるかな……なんて思いながら、私はその光りに身を任せた。
さわさわと足元を擽る花に答える様に、しゃがんでその花達を突いている結子さんの横顔は、少し前の三毛さんと同じ様に淋しそうだった。
「空からあの人を見ていてずっと願ってた。いつか、傷付いた伸ちゃんの心を救ってくれる人が現れます様に……って。あの人、わたしが死んじゃってからどんどん心を閉ざして行っちゃって、見ていてとても辛かったわ。でも、絶対に伸ちゃんを救ってくれる人が現れるって信じて見守って来た」
そう言って結子さんがスッと立ち上がり、私の方を向いて微笑んだ。
「そうしたら実森さんが現れた。実森さんと接してる内にちょっとずつ元気になって笑顔を取り戻して行く伸ちゃんを見て、『ああ、もう大丈夫だな。この子なら伸ちゃんを幸せにしてくれる』って思ったの」
ゆっくりと、結子さんが私の側に寄る。ふわっと温かい感触が手に伝わり、結子さんが私の手を握っているんだと分かる。
「だから、伸ちゃんの事これからもよろしくね。ちょっとヘタレな所もあるけど見捨てないであげてね?」
(結子さん……)
結子さんの言葉を聞いて私は力強く頷き、その手を握り返した。
(はい!任せて下さいっ!)
「ふふ、良い返事。頼んだわよ。……ああ、それと」
(はい?)
「さっき、伸ちゃんが生田さんとキスをしたって思ってるかもしれないけど、アレ、未遂よ」
(えっ?……そう、なんですか?)
「ええ。ギリギリであの人が避けたの、わたしちゃんと見てたもの。だから、怒らないであげてね?)
(分かりました)
私は、結子さんが言うなら間違いないのだろう、と頷いた。
「……あ、もう時間ね。そろそろ目を覚ましなさい。伸ちゃんが泣いてるわ」
(え……)
その時、ザァッ!と強い風が吹き抜け、足元の花びらを巻き散らす。
(わっ!!)
一瞬だけ通り抜けた強風。
(……凄い風でしたね。結子さん、大丈夫ですか?)
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(あれ?結子さん……?)
辺りを見回すと、ここに立っているのは私一人。
(結子さーん!)
呼んでみても、私の声が木霊するだけ。
どこに行ったんだろう?
『み……り…ん……みも……さ……』
(え?)
何処かからか、私の名前を呼ぶ声がする。
(この声……三毛さん?)
どうやら、名前を呼んでいるのは三毛さんの様だ。
(あ、さっき結子さん、三毛さんが泣いてるって言ってたっけ。じゃあ早く戻らないと……)
でも、どうやってここから現実に戻れば良いんだろう?
そう思った瞬間、目の前が光りに包まれ身体が宙に浮いた様にフワフワする。
(あ……)
これで三毛さんの涙が止まるかな……なんて思いながら、私はその光りに身を任せた。
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