猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

咲良緋芽

文字の大きさ
65 / 77
最終章

ケリをつけたい①

しおりを挟む
楓が上着を着て家を出た頃。

私はmilk teaの前に辿り着いていた。

勢いで出て来てしまったけど、緊張でなかなかお店に入る事が出来ない。

「う~ん。どうしよう……。てか、なんでカーテン閉まってるの?」

今日は定休日じゃないのにおかしい。休憩時間にカーテンをぴっちり閉めていた事なんてないのにどうしたんだろう。

とりあえず中の様子を確認しようと入り口に近付くと、ドアには見慣れない張り紙が貼ってあった。

「臨時休業……?」

と、大きな字で殴り書きの様に書かれている。

(じゃあ二階の自宅にいるかな?)

そーっと、一応の確認でドアの隙間から中を覗く。

「いた……」

カウンター席に項垂れて座っている三毛さんの姿。目の前には昨日壊れた写真立てがバラバラの状態で置かれていている。どうやらまだ修理をしていないみたいだ。

(多分だけど新しいのに買い替えた方が良い気がするな。それより……)

私は項垂れている三毛さんの姿を見てちょっと驚いた。

いつもキチンとした格好をしているのに、昨日私と別れた時と同じ格好をしている。髪は乱れ、シャツの裾がだらしなくズボンから出ていて、テーブルには昨日私が使っていたカップがそのまま置かれていた。

(え、昨日のまま……?)

だとすると、あれから三毛さんは片付けもせずにここから動かないで夜を過ごしたんだろうか?

そんな事を考えながら三毛さんの悲しそうな背中を見ていたら、怒りに任せて来た勢いがスーッと引いて行く。

(どうしよう……)

と、入ろうかこのまま帰ろうか悩んでいたら奥の方から誰かが出てきた。

――生田さんだ。

どうして生田さんがいるんだろう?

昨日三毛さんは、明日(今日)は生田さんはシフトに入っていないって言っていたハズ。

生田さんは私に気が付かず、そのまま三毛さんの左隣に腰を下ろして何かを話している。時折、三毛さんの背中を擦ったりポンポンと撫でたりしながら。

耳を澄ませてみるけど、ドア一枚隔てていてはその声は聞こえない。

(よしっ!)

このままでは埒が明かないと思った私はお店の中に入ろうとドアノブに手を伸ばす。

すると突然、生田さんが三毛さんの首に腕を絡ませた。

(え!?)

三毛さんが顔を上げる。生田さんも三毛さんにつられて顔を上げた瞬間、パチッ!とドア越しに私と目が合った。

私も生田さんも、「あ……」と言う反応をする。

双方驚いた反応を見せたけど、生田さんは私を見ながら何故かニヤッと笑い、三毛さんの顔を引き寄せた。

「ウソ……」

私はその光景に目を見張る。

三毛さんが、生田さんを引き剥がす。

私から見て三毛さんは後ろを向いている状態なので、どう言う反応をしているのか分からない。

頭がガンガンする。

(なに……?今、何が起こった……?)

明らかに、キスをした二人。

眩暈がして、ガタンッ!と、窓枠に手を付いた。

あっ……と思った時には遅くて、音に気が付いた三毛さんが私の方を振り向く。

私を見付け、三毛さんの表情が強張った。

私は、咄嗟にその場から走って逃げた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。 佐倉ここ。 玩具メーカーで働く24歳のOL。 鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。 完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。 【完結】ありがとうございました‼

恋愛の醍醐味

凛子
恋愛
最近の恋人の言動に嫌気がさしていた萌々香は、誕生日を忘れられたことで、ついに別れを決断。 あることがきっかけで、完璧な理想の恋人に出会うことが出来た萌々香は、幸せな日々が永遠に続くと思っていたのだが……

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

処理中です...