猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

咲良緋芽

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最終章

ケリをつけたい①

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楓が上着を着て家を出た頃。

私はmilk teaの前に辿り着いていた。

勢いで出て来てしまったけど、緊張でなかなかお店に入る事が出来ない。

「う~ん。どうしよう……。てか、なんでカーテン閉まってるの?」

今日は定休日じゃないのにおかしい。休憩時間にカーテンをぴっちり閉めていた事なんてないのにどうしたんだろう。

とりあえず中の様子を確認しようと入り口に近付くと、ドアには見慣れない張り紙が貼ってあった。

「臨時休業……?」

と、大きな字で殴り書きの様に書かれている。

(じゃあ二階の自宅にいるかな?)

そーっと、一応の確認でドアの隙間から中を覗く。

「いた……」

カウンター席に項垂れて座っている三毛さんの姿。目の前には昨日壊れた写真立てがバラバラの状態で置かれていている。どうやらまだ修理をしていないみたいだ。

(多分だけど新しいのに買い替えた方が良い気がするな。それより……)

私は項垂れている三毛さんの姿を見てちょっと驚いた。

いつもキチンとした格好をしているのに、昨日私と別れた時と同じ格好をしている。髪は乱れ、シャツの裾がだらしなくズボンから出ていて、テーブルには昨日私が使っていたカップがそのまま置かれていた。

(え、昨日のまま……?)

だとすると、あれから三毛さんは片付けもせずにここから動かないで夜を過ごしたんだろうか?

そんな事を考えながら三毛さんの悲しそうな背中を見ていたら、怒りに任せて来た勢いがスーッと引いて行く。

(どうしよう……)

と、入ろうかこのまま帰ろうか悩んでいたら奥の方から誰かが出てきた。

――生田さんだ。

どうして生田さんがいるんだろう?

昨日三毛さんは、明日(今日)は生田さんはシフトに入っていないって言っていたハズ。

生田さんは私に気が付かず、そのまま三毛さんの左隣に腰を下ろして何かを話している。時折、三毛さんの背中を擦ったりポンポンと撫でたりしながら。

耳を澄ませてみるけど、ドア一枚隔てていてはその声は聞こえない。

(よしっ!)

このままでは埒が明かないと思った私はお店の中に入ろうとドアノブに手を伸ばす。

すると突然、生田さんが三毛さんの首に腕を絡ませた。

(え!?)

三毛さんが顔を上げる。生田さんも三毛さんにつられて顔を上げた瞬間、パチッ!とドア越しに私と目が合った。

私も生田さんも、「あ……」と言う反応をする。

双方驚いた反応を見せたけど、生田さんは私を見ながら何故かニヤッと笑い、三毛さんの顔を引き寄せた。

「ウソ……」

私はその光景に目を見張る。

三毛さんが、生田さんを引き剥がす。

私から見て三毛さんは後ろを向いている状態なので、どう言う反応をしているのか分からない。

頭がガンガンする。

(なに……?今、何が起こった……?)

明らかに、キスをした二人。

眩暈がして、ガタンッ!と、窓枠に手を付いた。

あっ……と思った時には遅くて、音に気が付いた三毛さんが私の方を振り向く。

私を見付け、三毛さんの表情が強張った。

私は、咄嗟にその場から走って逃げた。

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