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最終章
考えてみる①
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「さって!寝ようか!」
「うん」
ハーブティーも飲み終わり、時刻は午前1時20分。もう遅いからこのまま楓の家に泊めて貰う事になった。
スタンドの灯りだけを点けて、他の電気は消して布団に潜る。真っ暗にしないのは、寝ていて突然小説のアイデアが浮かんだ時に咄嗟にメモが出来るようになんだって。だから、楓の枕元にはメモ帳とペンが常備されている。しかもこれはベッド周辺に限らず、トイレや洗面所、キッチンや玄関先など至る所に。
「じゃ、おやすみ~」
「おやすみなさい」
モソモソと寝返りを打って寝やすい体制になる。だけど、目を瞑ると色々思い出して逆に目が冴えちゃって寝られない。
三毛さんの唇の感触とか、熱かった手の温度とか、写真立てが割れた時の三毛さんの悲しそうな顔とか……。
モヤモヤモヤモヤと、頭も心もずーっと濃い霧がかかった様にスッキリしない。
そもそも、どうしてあんな展開になったんだろう。三毛さんはどう言うつもりであんな事をしたのか?
会話の中でなにかきっかけが三毛さんにはあったのかもしれないけど私には分からない。
でもそれよりも私はあの時、想いが通じ合ったと思ってすごく嬉しかった。三毛さんも、私と同じ気持ちだと思った。
(だって、じゃなきゃキスなんてしないよね)
ぼんやりとあのまま写真立てが倒れて来なかったら今頃私と三毛さんは……と考え、顔が熱くなり悶えた。
そして、ハッとする。
(もしかして三毛さん、あんな事をしたから結子さんが怒って写真立てを倒した、とか思ってるんじゃ……?)
そう考えると、全て納得が行く。
余程不安定な場所に置いていなけれれば、写真立てが一人でに落ちる事ってそうそうない。棚の際っきわに置いていたならいざ知らず、三毛さんが大事な結子さんをそんな危ない所に置くはずがないし、今朝私が見た時もちゃんと棚の奥にスペースを作って綺麗に飾って置いてあった。
(確実になんらかの力が加わらないと倒れない位置にあった事は確かだよね。だとしたら、結子さんが本当に怒って……?)
でも、あの交差点で聞こえた声はそんな風には聞こえなかった。とても優しくて穏やかで、慈愛に満ちた声だった。
本当に、三毛さんに前を向いて生きて欲しい。そんな想いが伝わる声だったけど……。
それとも、実際に目の当たりにするのとは違うんだろうか?
「うん」
ハーブティーも飲み終わり、時刻は午前1時20分。もう遅いからこのまま楓の家に泊めて貰う事になった。
スタンドの灯りだけを点けて、他の電気は消して布団に潜る。真っ暗にしないのは、寝ていて突然小説のアイデアが浮かんだ時に咄嗟にメモが出来るようになんだって。だから、楓の枕元にはメモ帳とペンが常備されている。しかもこれはベッド周辺に限らず、トイレや洗面所、キッチンや玄関先など至る所に。
「じゃ、おやすみ~」
「おやすみなさい」
モソモソと寝返りを打って寝やすい体制になる。だけど、目を瞑ると色々思い出して逆に目が冴えちゃって寝られない。
三毛さんの唇の感触とか、熱かった手の温度とか、写真立てが割れた時の三毛さんの悲しそうな顔とか……。
モヤモヤモヤモヤと、頭も心もずーっと濃い霧がかかった様にスッキリしない。
そもそも、どうしてあんな展開になったんだろう。三毛さんはどう言うつもりであんな事をしたのか?
会話の中でなにかきっかけが三毛さんにはあったのかもしれないけど私には分からない。
でもそれよりも私はあの時、想いが通じ合ったと思ってすごく嬉しかった。三毛さんも、私と同じ気持ちだと思った。
(だって、じゃなきゃキスなんてしないよね)
ぼんやりとあのまま写真立てが倒れて来なかったら今頃私と三毛さんは……と考え、顔が熱くなり悶えた。
そして、ハッとする。
(もしかして三毛さん、あんな事をしたから結子さんが怒って写真立てを倒した、とか思ってるんじゃ……?)
そう考えると、全て納得が行く。
余程不安定な場所に置いていなけれれば、写真立てが一人でに落ちる事ってそうそうない。棚の際っきわに置いていたならいざ知らず、三毛さんが大事な結子さんをそんな危ない所に置くはずがないし、今朝私が見た時もちゃんと棚の奥にスペースを作って綺麗に飾って置いてあった。
(確実になんらかの力が加わらないと倒れない位置にあった事は確かだよね。だとしたら、結子さんが本当に怒って……?)
でも、あの交差点で聞こえた声はそんな風には聞こえなかった。とても優しくて穏やかで、慈愛に満ちた声だった。
本当に、三毛さんに前を向いて生きて欲しい。そんな想いが伝わる声だったけど……。
それとも、実際に目の当たりにするのとは違うんだろうか?
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