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第三章

似合う花言葉①

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買い物を終えた帰り。

私は結子さんの事故現場の交差点に立っていた。

よいしょ、と荷物を置いてその場にしゃがむ。

「この間は何も用意していなくてごめんなさい。これ、もし良かったら……」

さっきお店で買った赤いガーベラ。

お供えの花には適していないかもしれない。でもどうしてもこの赤いガーベラが良かった。

それは、花言葉。

『前進』と言う花言葉は三毛さんに。『神秘の愛』と言う花言葉は結子さんに合っている気がしたからだ。

ガーベラ一本だけじゃ味気なかったから、その周りにかすみ草も付けてもらった。

小さいブーケの大きさの花束を電柱に立てかけ、手を合わせる。

(あれから三毛さん、よく笑う様になったんですよ。結子さんが見守ってくれているおかげだと思います。前に進もうとしている三毛さんを見ていると嬉しくなります。これからも、三毛さんが前を向いて笑っていられる様に見守ってあげていて下さい)

そう心の中で結子さんに話しかけた。

また何か聞こえるかな?と思って耳を澄ませてみたけど、今日は何も聞こえない。

少し残念だな、と目を開け、また来ますねと言って立ち上がる。

「――もり……さ……」

「ん?」

なんだか名前を呼ばれた気がして、辺りをキョロキョロする。

「え――?」

聞き覚えのある声で確実に私の名前を叫びながら、道路を挟んだ向かい側から見覚えのある男性が走って来るのが見えた。

「三毛、さん……?」

目を凝らしてよくよく見てみると、三毛さん本人。なんかすごい形相でこっちに向かって走って来てるけど。

「え?どうしたんだろ……」

時間過ぎてたかな?と思って時計を見ると、milk teaを出てからまだ30分くらいしか経っていない。

私が与えられている休憩時間はちょっと長くて一時間半。結局それも私はお手伝いだからなんとなく決まった感じだったし、だからまだまだ時間には余裕があった。

(え、じゃあなんで?てか、なんでここだと分かったの?)

ちょっと、ほんのちょーっとの恐怖を覚え、三毛さんがこちらに着くまで私は動けずにいた。

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