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第三章
三毛の不安と焦り
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僕は実森さんが出て行った扉をさっきから何度も見てはグラスを拭き、見てはグラスを拭き、を繰り返している。
実森さんが買い物に出掛けて30分以上が経った。
「遅いな……」
拭き終わったカップを棚に戻しながらボソッと呟く。
スーパーはここから歩いて2分程度。
実森さんの足でも然程変わらない時間だと思うけど、どうしてこんなに時間が掛かっているんだろう?
「買い物の量だってそんなに多くはないのに」
頼んだ物は、スティックシュガーと牛乳。後はディナーメニューに必要なカレー粉と豚の引き肉だけ。
20分と掛からず帰って来れるハズなのに。
「どこかに寄り道でもしてるのかな……」
指をコン…コン…コン…とテーブルに打ち付けて時計を眺める。
「ニャー」
僕のちょっとのイライラと焦りを空気とテーブルの振動で感じ取ったのか、さっきまで日向ぼっこを楽しんでいたアールがその指にすり寄って来た。
「アール……。ごめんね。うるさかった?」
「ニャーン」
頭を撫でると、アールがグッと体を縮めてお尻と尻尾をフリフリし始める。
あっ…と思った瞬間、肩にピョンッ!と飛び乗って来たので慌ててキャッチした。
「わっ!も~、アール。危ないっていつも言ってるだろう?」
「ニャー」
僕の耳元に顔を摺り寄せ、ゴロゴロと喉を鳴らす。
どうやらご満悦らしい。
「ふふ。アールはいつもポカポカだね」
いつも日当たりの一番いい特等席で日向ぼっこをしているせいか、アールはいつもポカポカで太陽の匂いがする。
「あそこはアール専用だも……」
言い掛けて、アールのベッドが置いてある窓際を不意に見た瞬間、一台の救急車がサイレンを鳴らしてスーパーの方へ向かって行くのが見えた。
ドクンッ――!と心臓が脈を打ち、全身にゾワゾワと鳥肌が立った。
僕はアールをベッドに戻し、勢いよくお店から飛び出した。
実森さんが買い物に出掛けて30分以上が経った。
「遅いな……」
拭き終わったカップを棚に戻しながらボソッと呟く。
スーパーはここから歩いて2分程度。
実森さんの足でも然程変わらない時間だと思うけど、どうしてこんなに時間が掛かっているんだろう?
「買い物の量だってそんなに多くはないのに」
頼んだ物は、スティックシュガーと牛乳。後はディナーメニューに必要なカレー粉と豚の引き肉だけ。
20分と掛からず帰って来れるハズなのに。
「どこかに寄り道でもしてるのかな……」
指をコン…コン…コン…とテーブルに打ち付けて時計を眺める。
「ニャー」
僕のちょっとのイライラと焦りを空気とテーブルの振動で感じ取ったのか、さっきまで日向ぼっこを楽しんでいたアールがその指にすり寄って来た。
「アール……。ごめんね。うるさかった?」
「ニャーン」
頭を撫でると、アールがグッと体を縮めてお尻と尻尾をフリフリし始める。
あっ…と思った瞬間、肩にピョンッ!と飛び乗って来たので慌ててキャッチした。
「わっ!も~、アール。危ないっていつも言ってるだろう?」
「ニャー」
僕の耳元に顔を摺り寄せ、ゴロゴロと喉を鳴らす。
どうやらご満悦らしい。
「ふふ。アールはいつもポカポカだね」
いつも日当たりの一番いい特等席で日向ぼっこをしているせいか、アールはいつもポカポカで太陽の匂いがする。
「あそこはアール専用だも……」
言い掛けて、アールのベッドが置いてある窓際を不意に見た瞬間、一台の救急車がサイレンを鳴らしてスーパーの方へ向かって行くのが見えた。
ドクンッ――!と心臓が脈を打ち、全身にゾワゾワと鳥肌が立った。
僕はアールをベッドに戻し、勢いよくお店から飛び出した。
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