猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

咲良緋芽

文字の大きさ
上 下
39 / 77
第二章

三毛さんの勇気①

しおりを挟む
「はぁ~、美味しかったですね!」

「ええ」

大満足でパンケーキを食べ終えた私達は、お店を出て帰路についている。

「良かったですね、紅茶が買えて」

三毛さんが手に持っている袋を指さして言った。

「はい」

言われた三毛さんがにっこり笑う。

あのお店はお店で出している紅茶の茶葉をいくつか買える様にレジ横に置いてあって、それを見付けた三毛さんが全種類を買っていた。

「あと、結局ご馳走してもらってすみません。お礼をするのは私だったのに」

「いえいえ、お誘いしたのは僕ですから、当然ですよ」

「ホント、ありがとうございます」

私は頭を下げた。

本当は、あの夜(赤信号を渡ろうとして止められた夜)のお詫びとお礼を兼ねていたのだから私がお金を出すつもりでいたのに、三毛さんがガンとして譲ってくれなかった。

(今度、何かお詫びの品を買ってお店に届けよう)

何もしないのは私の気が治まらないから、三毛さんには内緒でなにかプレゼントを渡そうと心に決めた。

「この後、どうしますか?実森さん、お時間大丈夫ですか?」

三毛さんが時間を確認して私に聞いて来た。つられて私も確認すると、まだ15時をちょっと回ったくらい。

私としてはもっと三毛さんと一緒に居たいけど、三毛さんは嫌じゃないのかな?

「あ、私は今日はなんにも予定が入っていないので……三毛さんは大丈夫なんですか?」

恐る恐る尋ねてみると、三毛さんがニコッと笑って、

「僕も今日は何も予定がありませんので、実森さんが良ければちょっと付き合ってもらいたい所があるんですが……」

と言った。

それを聞いた私は瞬時に、「行きます!どこでもお供いたします!」と鼻息荒く叫んでいた。

「あ、ありがとうございます」

私の鼻息の荒さに、三毛さんがちょっとのけ反る。

「あ、ごめんなさい。ちょっと興奮し過ぎちゃって……」

三毛さんの顔がちょっと引きつっていたので、私は慌てて三毛さんから少し距離(心の)を取った。

「あの、もしかしたら気分をがいされるかもしれないのですが、付いて来て頂いても良いですか……?」

「え?」

気分を害する?ちょっと言っている意味が分からなくて、三毛さんの顔を見上げた。その表情は少し強張こわばっている。

「どうかし……」

「行きましょうか」

三毛さんは、私の言葉をさえぎってそれ以上何も言わずに歩き出した。

私は「あ、待って下さい!」と慌てて付いて行く。

(どこに行くんだろう??)

さっきまではあんなに楽しそうだったのに、急に黙ってしまった三毛さんを横目で見ると、少し震えている気がした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

処理中です...