猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

咲良緋芽

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第二章

三毛さんのトラウマ①

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「最後まで付き合わせてしまって、すみません。挙げ句、送ってもらっちゃって……」

お店を出ての帰り道。真っ暗な夜道を二人並んでテクテク歩いている。

『さあ、選ぶぞ!』と意気込んでみたものの、種類がありすぎて頭がこんがらがっちゃって、結局三毛さんのアドバイスを受けて選んだ。

そしたら外が暗くなっちゃって、三毛さんが「家まで送ります」って……。

「いえ、良いんですよ。僕の方も珍しい茶葉が手に入りましたし」

三毛さんがその茶葉が入っている袋を顔の高さ位まで持ち上げて見せた。

「そ、そーですか?」

「ええ。それに、一緒に買い物が出来て楽しかったですよ?デートみたいで」

「そーですか、それは良かっ……えっ!?デデデ、デート!?」

「はい。誰かとご飯を食べたのも久し振りでしたし、とても美味しかったです。やっぱり一人で食べるより良いものですね」

三毛さんは特に意識して言ったつもりはなかったのか、穏やかな笑みを浮かべてはいるけど一切顔色を変えないでいる。その代わりに、私の心の中はパニック状態。

(デ、デートって!!)

確かに途中、『デートみたーい』って思ったけれども!まさか三毛さんも同じ事を思っていたとはっ!

(あ、ヤベ……ニヤニヤが止まらない!どうしよう!)

両頬を手で押さえてニヤける顔を元に戻そうとするけど、無理だ。

(デート……デート……)

心の中で、何回も反芻する。

なんて良い響きなんだ……。

「……み……ん……実森さん!」

「はいいぃっ!!」

急に手をグイっと引っ張られ、心臓が跳び跳ねた。

うっとりしていて、呼ばれていた事に気が付かなかった。

「どどど、どうしたんですか!?」

「信号!赤です!!」

「へ??」

指さされて前を見ると、歩道の信号が赤になっていて車がビュンビュン目の前を通り過ぎて行く。

「あ……」

顔からサァ――と血の気が引いた。

「す、すみません!!」

私は三毛さんに頭を下げた。

危なかった。三毛さんが腕を引っ張ってくれなかったら赤信号へ飛び込む所だった。

「……いえ、でも歩いている時の考え事は危険ですよ」

「本当にありがとうございます」

「いえ……」

「…………」

「…………」

沈黙。

三毛さんは私の腕を掴んだまま固まっている。もう腕を放してくれて平気なんだけど、動く気配が全くない。それに、微かだけど私の腕を掴んでいる三毛さんの手が震えている様な?

「三毛さん?あの、腕……」

「あ…す、すみません!」

私の声にハッとし、掴まれた腕が解放された。

「どうしました?大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」

さっきまでなんともなかった気がするけど、具合でも悪くなったのかな?

街灯に照らされた三毛さんの顔色が悪い。
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