19 / 77
第一章
言ってしまったー三毛さんの涙ー③
しおりを挟む
「……紅茶、飲みませんか?」
ボーっと立っていたら、三毛さんが絞り出す様な声で言った。
それを聞いた私は流石にちょっと躊躇う。
「え?……いいんですか?」
二人の時間の邪魔をしてしまうのではないだろうか?
「はい。折角足を運んで下さったのに、このままでは帰せませんから。どうぞ」
三毛さんは、どうしようかと迷っている私を店内へ招き入れてくれる。
「あ、でも、ライトはここだけにしても良いですか?全部点けちゃうとお客様が来てしまいますから」
そう言って、スポットライトの様に私がいつも座るカウンター席の所にだけ明かりを点けた。
「あ、はい。大丈夫です」
おずおずと、ライトに照らされた場所へ座る。
「ミルクティーでよろしいですか?」
「あ、はい。なんでも……」
なんとなく喋り辛い雰囲気の中、私は無言で三毛さんの手元だけを見ていた。
やっぱり、三毛さんの所作は無駄がなくスマートで惚れ惚れしてしまう。
「どうぞ」
あっと言う間にミルクティーが完成して、目の前に置かれる。見た目はいつもと同じミルクティーなんだけど、フワッと香る匂いを嗅いだ瞬間、あれ?と思った。
三毛さんをチラッと見たけど、何も言わずいつもと同じ微笑みを浮かべている。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
自分の思い過ごしかと思ったけど、口に一口含んだ瞬間その疑問は確信に変わった。
(……やっぱり)
伊達に半年間通い詰めた訳じゃないな、とちょっと嬉しくなったけど、ちょっと心配にもなった。
ボーっと立っていたら、三毛さんが絞り出す様な声で言った。
それを聞いた私は流石にちょっと躊躇う。
「え?……いいんですか?」
二人の時間の邪魔をしてしまうのではないだろうか?
「はい。折角足を運んで下さったのに、このままでは帰せませんから。どうぞ」
三毛さんは、どうしようかと迷っている私を店内へ招き入れてくれる。
「あ、でも、ライトはここだけにしても良いですか?全部点けちゃうとお客様が来てしまいますから」
そう言って、スポットライトの様に私がいつも座るカウンター席の所にだけ明かりを点けた。
「あ、はい。大丈夫です」
おずおずと、ライトに照らされた場所へ座る。
「ミルクティーでよろしいですか?」
「あ、はい。なんでも……」
なんとなく喋り辛い雰囲気の中、私は無言で三毛さんの手元だけを見ていた。
やっぱり、三毛さんの所作は無駄がなくスマートで惚れ惚れしてしまう。
「どうぞ」
あっと言う間にミルクティーが完成して、目の前に置かれる。見た目はいつもと同じミルクティーなんだけど、フワッと香る匂いを嗅いだ瞬間、あれ?と思った。
三毛さんをチラッと見たけど、何も言わずいつもと同じ微笑みを浮かべている。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
自分の思い過ごしかと思ったけど、口に一口含んだ瞬間その疑問は確信に変わった。
(……やっぱり)
伊達に半年間通い詰めた訳じゃないな、とちょっと嬉しくなったけど、ちょっと心配にもなった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる