猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~

咲良緋芽

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第一章

あれから半年➁

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あの雨の日、失恋して恋に落ちた。

我ながらめちゃくちゃ単純だと思う。でも、失恋したてで優しくされて(しかもイケメンで)、笑顔がステキで大人のおじさま。これで恋に落ちない人っていないんじゃなかろうか。

あの時の三毛さんの笑顔とミルクティーの味は、一生忘れられない。

「お待たせいたしました。ミルクティーです」

出逢った時の思い出に浸っていると、甘い香りを漂わせたミルクティー入りのカップが置かれた。

「ありがとうございます……良い香り」

カップを手に取り、スゥッ……と香りを吸い込む。

猫舌の私に丁度いい温度のミルクティーを一口すすり、いつもと同じ優しい味に、ホッと溜め息が漏れた。

「……美味しいです」

「ありがとうございます」

三毛さんが、微笑む。

いつもと同じ会話。でも、なんだかとても幸せに感じてしまう。

半年前に「好きな人が出来た」と勝手言って別れたアイツとは違って、穏やかな三毛さんといるととても落ち着く。

もちろんアイツと付き合っていた頃はそれなりに楽しかったし、結婚したいとも思った。でも今思えば、付き合っているのに別な人を好きになる様なやつとは別れて正解だった。

(結婚して浮気に走られても困るしね)

その点を踏まえると、素直に別の人を好きになったと言って来た辺りは褒めるべき所か。

(いや……そうでもないか。そもそも彼女がいるのに他の女を好きになるなっつー話で)

……止めよう。

思い出すと段々腹が立って来るし、せっかくのミルクティーが不味くなる。

そう思い直しミルクティーを飲みながら三毛さんを見ると、他の常連さんとの会話を微笑みながら聞いている。

あの雨の日、三毛さんは涙の訳を無理に聞こうとはせず、泣き止むまでこうやって優しく微笑んでくれていた。

「アレでやられたのかなぁ……」

「え?」

ボソッと呟いただけなのに、耳ざといのか三毛さんがパッとこちらを振り向いた。

「あ、いえ、なんでもないです!」

私は慌てて首を振る。と、

「あ、そうでした!」

突然、三毛さんが思い立った様に声を上げて、ポンッと手を叩いた。

「どうしたんですか?」

「新作のチーズケーキを作ったんですが、試食をしてみてもらっても良いですか?」

「えっ!いいんですか!?」

パァァァッ!と、一気にテンションが上がる。

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