上 下
76 / 99

急展開―そして事件は起こった。①

しおりを挟む
――カタカタ…カタ…カタ……。


「はぁ……」

大きめのため息をき、キーボードを打つ手が止まる。

自分でも分かる位上の空で、仕事が全くはかどらない。

空を見ると、私の心を映した様にどんより曇り空。

「余計にヘコむ……」

椅子の背もたれに、イナバウアーかの如くダラーンともたれ掛かって嘆いた。

昨夜、結局あれから全然寝れなかった。

朝、気まずくてどうしようかと迷っていたら、いつもよりも全然早い時間に雪ちゃんが出て行く音がして、私はホッとした様な、ガッカリした様な、何とも言えない気持ちになった。

でも、顔を合わせづらかったから、ホッとしたのか。

だから、今日は一人で出社。

ちょっと不安だったけど、別段なにも起こらず無事に会社に到着した。

こんな気まずいままで、明日のサプライズバースデーを楽しめるのだろうか。

考えると、増して暗い気持ちになる。

「……駄目だっ!仕事しないと!」

私は背もたれからガバッ!と起き上がり、パソコンに向かい合う。

今は、とりあえず仕事に集中しよう!

「よしっ!」

両手でパチンッ!と両頬を挟んで気合いを入れた瞬間、キーンコーン、とお昼を告げるチャイムが鳴り響いた。

「え?」

あれ!?もうそんな時間!?

時計を見ると、確かに針は12時を指している。

「あ……じゃあ、お昼だ……」

なんとなく出鼻を挫かれた様な気がして、気が抜ける。

しかし、お昼と意識した途端、お腹が空いて来た。

「どんなに悩んでいてもお腹って空くんだよね……」

今日のお昼はどうしよう。久々に社食で済まそうか。

だって多分、待っていても雪ちゃんからのお昼のお誘いは来ないだろうから。

「咲希子、今日さ……」

咲希子を誘おうと咲希子のデスクに目を向けると、さっきまで居たはずの姿が見当たらない。

「あれ?」

どこへ行ったのだろうか。

他の人に聞いても「知らない」と言われ、私はポツンと一人取り残された。

(……まあ、良いや。それにしても、社食って久し振りだなぁ)

雪ちゃんとヒミツを共有してから、お昼はハナちゃんの所へ行く事が日課になっていた。

雪ちゃんは当然ハナちゃんの所へ行くだろうから、私は社食に行く事にする。

(秘書課から食堂って、結構遠いんだよね)

少しだけ待ってみたけど、咲希子がまったく姿を現さないので私はお財布を持って一人、食堂へ向かう。

食堂に近付くに連れ、辺りがガヤガヤとにぎわって来る。

この感覚、ホント久し振り。

(今日のランチは……と……)

入り口前のボードを見ると、

『Aランチ:鶏の唐揚げ』

『Bランチ:鯖の味噌煮』

と書かれている。私は少し迷ったけど、やけくそがてらガッツリ食べたい気分だったのでAランチの鶏の唐揚げを注文した。

大好きな鶏の唐揚げ。なのに、久し振りに一人で食べたお昼ご飯は、余り美味しくなかった。
しおりを挟む

処理中です...