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自覚前④

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「……はぁっ!」

く、苦しかった!!

ようやく解放され、私は新鮮な空気を求めて肩で息をする。

「ふふっ。えなのくちびる、やわらかくてあまぁい……アタシ、えなとならだいじょーぶかも……」

だ、大丈夫って何が!?

「ゆ、雪ちゃん!ホントにダメですって!!」

私は目を白黒させながら、思い止まらせようと必死になる。

「だいじょうぶ」

だから、何が大丈夫なのよ!?

私の静止も聞かず、ワンピースの裾をたくし上げられ、雪ちゃんの手が私の太ももに這う。

「やっ!」

ビクッ!と体が震えた。

「ふっ……かわい……」

チュッと、軽くついばむ様なキス。

その唇が、段々下へ移動して、胸の辺りで止まる。

まさか、本気なのっ!?

「雪ちゃんお願いだからちょっと待ってーーっ!」

ギュッと目をつぶり、叫んだ瞬間、ドサッと音がして体が軽くなった。

シーン……と静まり返る。

恐る恐る目を開けると、雪ちゃんが規則正しく寝息を立て、寝ていた。

…………………なんなのよ!!!

「もう!ビックリさせないでくださいよ!」

呑気な寝息を立てている雪ちゃんにホントにちょっとイラっとして、オデコをピンッ!と弾いた。

「う~ん……」

と、弾かれたオデコをポリポリと掻きながら、目を覚ます様子もない。

私は、安堵と少し残念な複雑な気持ちを込めて溜め息を吐いた。

「片付けて寝よ……」

雪ちゃんを起こさない様にソッと食器を片付け、部屋まで運べない雪ちゃんに毛布を掛けてリビングを後にする。

部屋に戻り、ベッドに横になる。

「あ、お風呂……いいや。明日の朝入ろう……」

なんだか起きるのが面倒になって、頭まで布団を被った。

コチ…コチ…コチ…と秒針が時間を刻む。

その音が妙に耳に付いて寝られない。いや。正確には、それが原因じゃなかった。

さっき起こった大事件のせいで、全く寝られない。

そっと唇を指でなぞる。

雪ちゃんと、キスをしてしまった――。

男の人とは思えない位柔らかった雪ちゃんの唇。感触がまだ、残っている。

雪ちゃんは男の人が好きで、もちろん恋愛対象も男の人。なのに、なんで女の私にあんな事が出来たのか。

思い出して、またドキドキして来た。

「……もう忘れて寝よう!おやすみ!」

こんなにドキドキしていては、心臓に負担が掛かってどうしようもない。

再度布団を被って無理矢理目を瞑る。

でも、私の頭と心臓は一向に寝る気配を見せず、気が付いた頃には朝日がカーテンの隙間からさんさんと降り注いでいた。
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