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雪ちゃんとの生活⑥
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不意の事に、私がビクッ!と体を震わせた。
会話が途切れ、私とハナちゃんが雪ちゃんを見る。ハナちゃんは、小さく溜め息を漏らしている様だ。
「ど、どうしました?」
「帰るわよ」
私が恐る恐る尋ねると、雪ちゃんがそう言って立ち上がる。
「え?だって、ゴハン……」
「いいから!」
グッと二の腕を掴まれ、無理矢理引っ張られた。
「わっ……!」
「ちょっと雪ちゃん。そんなに思いっきり掴んじゃ痣になっちゃうでしょ」
そう言ったハナちゃんに、雪ちゃんは一瞬睨み付ける様に視線を送った。
「……江奈、行くわよ」
掴まれた腕から力が抜け、パッと放される。
雪ちゃんは振り向かず、お店から出て行ってしまった。
「あ、あの……」
何が何だか分からず、私は一人、オロオロする。
「……ったく、お気に入りを見付けるとすぐこれなんだから!」
と言いながら、雪ちゃんが座っていた席にハナちゃんがドカッ!と腰を下ろした。
「お、お気に……?」
「江奈っちの事よ。アイツの癖。気に入った子が他の子と仲良くしてるのが気に食わないのよ。全く、子供ね!」
雪ちゃんに出したスコーンをかじりながら、ハナちゃんがプリプリ怒っている。
「江奈っちも大変ね。あんな独占欲の塊みたいな奴に好かれて」
「独占欲……?」
「そ!アタシと江奈っちが仲良さそうにしてるのを見てイライラしてんの。どーにかならないのかしら、あれ」
はぁ、と大きな溜め息。
そんなに独占欲が強かったなんて、全然分からなかった。
ハナちゃんが、「勿体無い……」と言いながら、雪ちゃんの残したコーヒーを飲む。
「アレ、無意識だから困るのよ」
「無意識、なんですか?」
「そうよ~。だから余計に質が悪い!」
顔の前で、人差し指をビシッ!と立てる。
「でも、女性にあんなに過剰に反応するのは初めて見たわ」
顎に手を置き、ふ~ん、と何度も頷いている。
「余程気に入られたのね、江奈っちは」
「え……」
そ、そうなの?
ハナちゃんの言っている事が本当なら、少し嬉しい。
あ、いや、あくまでも、「友達として」だから!
勘違いしない様にしないと。
「でもね……」
突然、ハナちゃんの表情が曇り始める。
「その独占欲のせいでみーんな雪ちゃんから離れて行っちゃうの」
「……それって、恋人…って事ですか?」
「そ。付き合っても、雪ちゃんの独占欲に耐えられなくなって離れて行っちゃう」
ハナちゃんが掌を上に両手を上げ、肩をすくめる。
「そうなんですか……」
「不安になる気持ちも分からなくはないんだけどね……。ま、困った事があったらアタシにも頼って頂戴な♡」
一瞬、ハナちゃんも雪ちゃんと同じ様に儚げに微笑んだ気がした。
でも、それも一瞬で、いつもの笑顔に戻る。
「はい。ありがとうございます」
だから私も笑顔で返した。
「……さて!」
と、ハナちゃんが膝をポンッと叩いて立ち上がった。
「早く行かないと、雪ちゃんやきもきしてるわよ」
入り口のドアを指差され、ハッとする。
「あ……」
そうだった!雪ちゃんは、先に出て行ってしまっていた。
私は慌ててバックを手に取り、「ご馳走さまでした」と頭を下げ、足早に出口に向かった。
先に帰ったりしていないだろうか。
……流石にそれはないか。
「あ、ちょっと待って!」
ドアが閉まる直前にハナちゃんに声を掛けられ、「はい?」と顔だけをお店の中に戻した。
「これ、アタシの携帯番号。何かあったらすぐに連絡して。勿論、何もなくても大歓迎だから」
名刺を手渡される。
そこには大きく『*Hana*』と書かれ、その下にお店の番号と携帯番号が書いてあった。
「ありがとうございます。あ、じゃあ……」
私はカバンの中から手帳を取り出し、メモ帳の所に自分の携帯番号を記してハナちゃんに渡した。
「これ、私の番号です。勿論、何もなくてもいつでも大歓迎です!」
「ありがとう」
それを笑顔で受け取ってくれる。
「それじゃあ……」
「気を付けてね」
「はい」
ヒラヒラと手を振ってくれるハナちゃんに再度お辞儀をして、今度こそお店を後にした。
会話が途切れ、私とハナちゃんが雪ちゃんを見る。ハナちゃんは、小さく溜め息を漏らしている様だ。
「ど、どうしました?」
「帰るわよ」
私が恐る恐る尋ねると、雪ちゃんがそう言って立ち上がる。
「え?だって、ゴハン……」
「いいから!」
グッと二の腕を掴まれ、無理矢理引っ張られた。
「わっ……!」
「ちょっと雪ちゃん。そんなに思いっきり掴んじゃ痣になっちゃうでしょ」
そう言ったハナちゃんに、雪ちゃんは一瞬睨み付ける様に視線を送った。
「……江奈、行くわよ」
掴まれた腕から力が抜け、パッと放される。
雪ちゃんは振り向かず、お店から出て行ってしまった。
「あ、あの……」
何が何だか分からず、私は一人、オロオロする。
「……ったく、お気に入りを見付けるとすぐこれなんだから!」
と言いながら、雪ちゃんが座っていた席にハナちゃんがドカッ!と腰を下ろした。
「お、お気に……?」
「江奈っちの事よ。アイツの癖。気に入った子が他の子と仲良くしてるのが気に食わないのよ。全く、子供ね!」
雪ちゃんに出したスコーンをかじりながら、ハナちゃんがプリプリ怒っている。
「江奈っちも大変ね。あんな独占欲の塊みたいな奴に好かれて」
「独占欲……?」
「そ!アタシと江奈っちが仲良さそうにしてるのを見てイライラしてんの。どーにかならないのかしら、あれ」
はぁ、と大きな溜め息。
そんなに独占欲が強かったなんて、全然分からなかった。
ハナちゃんが、「勿体無い……」と言いながら、雪ちゃんの残したコーヒーを飲む。
「アレ、無意識だから困るのよ」
「無意識、なんですか?」
「そうよ~。だから余計に質が悪い!」
顔の前で、人差し指をビシッ!と立てる。
「でも、女性にあんなに過剰に反応するのは初めて見たわ」
顎に手を置き、ふ~ん、と何度も頷いている。
「余程気に入られたのね、江奈っちは」
「え……」
そ、そうなの?
ハナちゃんの言っている事が本当なら、少し嬉しい。
あ、いや、あくまでも、「友達として」だから!
勘違いしない様にしないと。
「でもね……」
突然、ハナちゃんの表情が曇り始める。
「その独占欲のせいでみーんな雪ちゃんから離れて行っちゃうの」
「……それって、恋人…って事ですか?」
「そ。付き合っても、雪ちゃんの独占欲に耐えられなくなって離れて行っちゃう」
ハナちゃんが掌を上に両手を上げ、肩をすくめる。
「そうなんですか……」
「不安になる気持ちも分からなくはないんだけどね……。ま、困った事があったらアタシにも頼って頂戴な♡」
一瞬、ハナちゃんも雪ちゃんと同じ様に儚げに微笑んだ気がした。
でも、それも一瞬で、いつもの笑顔に戻る。
「はい。ありがとうございます」
だから私も笑顔で返した。
「……さて!」
と、ハナちゃんが膝をポンッと叩いて立ち上がった。
「早く行かないと、雪ちゃんやきもきしてるわよ」
入り口のドアを指差され、ハッとする。
「あ……」
そうだった!雪ちゃんは、先に出て行ってしまっていた。
私は慌ててバックを手に取り、「ご馳走さまでした」と頭を下げ、足早に出口に向かった。
先に帰ったりしていないだろうか。
……流石にそれはないか。
「あ、ちょっと待って!」
ドアが閉まる直前にハナちゃんに声を掛けられ、「はい?」と顔だけをお店の中に戻した。
「これ、アタシの携帯番号。何かあったらすぐに連絡して。勿論、何もなくても大歓迎だから」
名刺を手渡される。
そこには大きく『*Hana*』と書かれ、その下にお店の番号と携帯番号が書いてあった。
「ありがとうございます。あ、じゃあ……」
私はカバンの中から手帳を取り出し、メモ帳の所に自分の携帯番号を記してハナちゃんに渡した。
「これ、私の番号です。勿論、何もなくてもいつでも大歓迎です!」
「ありがとう」
それを笑顔で受け取ってくれる。
「それじゃあ……」
「気を付けてね」
「はい」
ヒラヒラと手を振ってくれるハナちゃんに再度お辞儀をして、今度こそお店を後にした。
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