633 / 681
連載
連鎖崩壊10
しおりを挟むそれは突然だった。
いきなり床が割れたかと思うと、ヴェルムドールの魔剣そっくりの何かが突き出し、続けてヴェルムドールの全身像が飛び出し天井に突き刺さったのだ。
幸いにも本棚も何も無い地点だったので本に被害は無いが、下手をすると其処から色々と崩れてしまうかもしれない。
簡単に言えば言語道断であり、突如響いた轟音にロクナは指示する手を止めて駆け寄っていく。
「おい、コラ! そんなとこでなにや……って……」
見上げている杖魔とバッチリ視線があったロクナはピクリと眉を動かすと手を突き出し、無詠唱で火撃を連続で撃ち込む。
「各員に通達! 杖魔とかいう馬鹿が下にいるわよ! ゴーディの奴も呼んできなさい、ぶちのめすわよ!」
「くうっ!」
「何がくうっ、だ! 人の図書館にあんな像撃ち込んでバレないとでも思ったの!? アホなの!?」
「アレは私では……ちいいいっ!」
ロクナが単体攻撃用としては比較的洒落にならない魔法を準備していると悟った杖魔は視界外に逃れるように走る。
転移してしまえばいいことなのだが、存在がバレた以上は下手に転移しても追撃がかかる。
あの小娘をさっさと殺してしまえばよかったと思うも、すでにサシャの姿はそこにはない。
実は力を使いすぎて水晶珠少女に逆戻りし財宝の中に紛れて転がっているのだが……そんな事を知るはずも無い。
予定の魔法はまだ準備が完全ではなく、発動することもできない。
……要は、サシャという計画外の存在を相手に遊びすぎてしまったのだ。
かつて勇者リューヤと戦った時から全く治らぬ悪癖であるが、それは別の見方をすれば杖魔に実力が無かったが故に「遊びすぎ」などという事態が起こったとも杖魔は考えていた。
だが、今は違う。違うのだ。
杖魔は立ち止まり、追ってきているであろうロクナへと振り返る。
「……来るなら来るがいい。今の私は!」
「どぉでもいいけど。城の中でこれ以上暴れさせるわけにもいかんのよ」
ロクナが音を立てて足踏みすると、そこから魔法陣が広がり、杖魔を飲み込んで転移する。
杖魔が「転移に巻き込まれた」と気付いたときには、その姿は魔王城の上空へと投げ出されている。
「爆烈轟弾!」
「ぐああ!」
爆音と共に更に吹き飛ばされ舞う杖魔は、空にアルヴァ達の姿が無い事に気付く。
「ぐ、な、何故アルヴァ共が……」
「当然だ。このアークヴェルムの空を、いつまでも我が物顔で飛べると思ったか」
杖魔の視界を塞ぐように空を舞う巨体の腕が、杖魔を思い切り殴り飛ばす。
まるで破城槌が如き一撃を受けた杖魔の身体は空を舞い、更に一撃、また一撃と受ける度に遠くへ遠くへと飛ばされていく。
それをやっているのは、羽持つ巨大な騎士像……マスターゴーレムのゴーディである。
「ちゃんとソイツぶっ飛ばすのよゴーディ! あたしはサシャを回収してくるから!」
「承知した!」
ついでとばかりにゴーディは更に杖魔に一撃をいれ……杖魔の身体は、ついにアークヴェルムの外まで吹き飛ばされ落下する。
「ぐ、おお……馬鹿な。私の計画が、あんな小娘一人のせいで狂って……?」
「お主の計画など、その程度であったということだ」
ゴーディの巨体が着地すると、地面が軽く揺れ……大の字に倒れた杖魔は動かず、そのゴーディの巨体を見上げる。
「巨体ゆえの破壊力……くふっ、実に美しくない。単純すぎて、馬鹿でも結果を出せる」
「言いたい事はそれで終わりか?」
「いいえ。こうなった以上、私も手段を選んではいられない……もう少し、お相手願いましょうか!」
杖魔は跳ねるように立ち上がると、魔力を一気に集中させる。
だが、ゴーディにわざわざ付き合う理由は無い。
一気に踏み潰してやろうと足を動かし……だが、次に杖魔が何かを唱えた瞬間に爆発した魔力に吹き飛ばされるように後ろに下がる。
そして、その言葉を……ゴーディは、確かに聞いた。
「殲魔形態……だと?」
それは、イクスラースの配下たる四騎士の奥の手だ。
巨大な鎧魔族に変化するその技を杖魔が使えるなど聞いた事は無い。
無い、が……。
「く、くはっ! くははははは!」
目の前で狂ったように笑う巨体。
赤いローブの残骸をマントのように纏い、半身を黄金の鎧、もう半身を鋼色の鎧に包んだその姿。
頭部を覆う兜は黒く、その上からつけた白い仮面は何処か滑稽ですらある。
右手には剣、左手には槍。
見る者が見れば、そこに剣魔、槍魔、クロード……そうした魔族達の特徴が混ざっている事に気付くだろう。
その奇妙極まりない姿からはしかし、膨大な魔力が秘められている事が伝わってくる。
「どうです、未だ未完成ではありますが……これこそ最強の魔族たる者に相応しい身体。アルヴァという新しく素晴らしい力あってこそ為せる、極限への進化! こうなった私を滅ぼせる者など……居ない!」
突き出された槍を、ゴーディは巨大な剣で受ける。
なるほど、ゴーディに勝るとも劣らぬ凄まじいパワーである。
最強の魔族を自称するだけはある、が……ゴーディは剣を手放すことで巨大杖魔がバランスを崩した瞬間に、その顔面に腕をカウンターのように叩き込む。
いわゆる強烈なラリアットを受けた巨大杖魔は大地に後頭部をめり込ませ、痛みと驚愕で声をあげる。
「なあっ……ば、馬鹿な……っ!?」
「最強の魔族だかなんだか知らんが。技無しで私に勝てると思うなよ、阿呆が。巨大で硬く強い。ただそれだけで勝てるほど魔族の世界は甘くないということを教えてやろう」
そうして、ゴーディの蹴りが巨大杖魔の身体を弾き飛ばす。
ザダーク王国全土で巻き起こっている戦いの中でも最大最強の戦いは……こうして、ゴーディ優勢のまま始まるのだった。
************************************************
さて、世界の出来事はここまで。
次回、舞台は次元の狭間に戻ります。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。