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連載
魔剣技9
しおりを挟む村長の家。
そう言われてサンクリードとカインは成程と頷く。
確かに「何か」があった際の緊急避難先としては常套手段であり、基本でもあるからだ。
だが問題は、その「村長の家」は何処にあるのかということだ。
「こういう場合、一番大きいか一番立派な家がそうだと相場は決まっています」
「そうなのか?」
「え、ええ。まあ……」
ザックリとしたシュナの発言だが、一応事実であるが故にカインも曖昧に同意する。
村長や町長という「地元の名士」は、一番金持ちであり一番立派な家に住んでいる。
これはそうした人物が領主から税の取り纏めを委任された代わりに少しの報酬を貰っているからであったり、または立場ゆえに細かい利権が転がり込んでくるからであったりする。
それは不正とかそういう話ではなく村の管理などといった責任の伴うものではあるのだが、やっぱり時折不正で私腹を肥やす輩も存在したり……まあとにかく、そうした事情が存在する。
「一番大きな家、か……」
サンクリードは家の外に出て、周りを見回す。
同じような家々が並んでいる中、確かに一軒だけ二階建てで目立つ建物があるのが分かる。
「あれがそうか」
「あー……そうでしょうね」
「間違いないですね」
カインとシュナが頷き、その建物を眺める。
綺麗な白い石だけを積んで組み上げたその家は明らかに他の家と比べて金がかかっており、少しばかり不正の匂いも漂う典型的な「村長の家」に見えた。
「なら、一気に……」
「あ、待ってください。歩いて行きましょう」
「む?」
何かをしようとしたサンクリードに、カインは慌てて声をかける。
「歩いている途中で、何か見つかるかもしれません」
「そうか」
アッサリと意見を受け入れたサンクリードはスタスタと歩き始め、その後をカインとシュナが追う。
途中途中の家は全て扉が閉まっており、その度にカインが駆け寄って確かめてみると鍵がかかっていた。
シュナは先程のショックをまだ引き摺っているのか近寄りたがらなかったが……試しに近寄ってみた一軒からは、やはり乾いた血の香りがした。
恐らくは中も先程と同じような状況なのだろう。
確かめてみたい気もしたのだが、村長の家に行くのが先という言い訳が彼女を押し留めた。
そうして辿り付いた村長の家の立派な扉には、やはり鍵がかかっており……ここにも、獣の爪痕が残っていた。
「鍵がかかっているということは、破られては居ないのだな」
「僕、他の扉とか窓調べてきますね」
扉をガタガタと揺らして調べていたサンクリードにカインがそう告げ、家の周囲を回るようにして歩いていく。
「あのー……今更ですけど、最初にノックするべきなのでは」
「ノック? ああ、確か入室の可否を問う儀式だったか?」
「儀式って。間違ってませんけど」
シュナが苦笑しながら言うと、サンクリードは扉のノブを何度か回してみながら答える。
「確かに大切だな。タイミングが悪いと、追い掛け回される羽目になる」
「何したんですか……?」
今更ノックをしてみているサンクリードに、シュナは思わずそんなツッコミを入れてしまう。
「まあ、色々な……。で、この扉だが、どうする? 先程みたいに蹴り破るか?」
蹴り破った本人であるシュナはどいてください、と言うと扉を確かめ……何度かノブを回したり覗き込んだりし始める。
「まあ、サンクリードさんなら蹴り破れるのかもしれませんが……一応、穏便な手段を試してみましょうか」
「穏便?」
「はい。あ、あんまり見ないでくださいね」
そう言うと、シュナは懐からジャラリと音を立てて金属製の細い棒の束のようなものを取り出す。
布に包まれたそれを広げると、どうやら色々な形のものが個別にポケットに差し込まれているようで、それを興味深そうに見ていたサンクリードにシュナが軽く威嚇する。
「あんまり見ないでくださいって言ったじゃないですか」
「肯定はしていない」
そんな事を言うサンクリードに溜息をつくと、シュナは適当に棒の一本を取り出して鍵穴に挿し込み始める。
「鍵を持っていたのか?」
「そんなわけないじゃないですか。あんまり人様にお見せできない技術ってやつですよ。んー……意外と新しい型ですね。これ絶対不正してないとつけられませんよね……」
ガチャガチャと鍵穴を弄っては新しい棒を挿したり鍵穴を覗き込んだりしているシュナをサンクリードが眺めていると、カインが戻ってくる。
「やっぱり、どの扉も窓も開いてませんね……何やってるんです?」
「お帰りなさい、カインさん。どっか別の方向向いててくださいね」
「はあ。ていうか、シュナさんって罠師だったんですね」
「おや、罠師にお知り合いがいらっしゃいましたか?」
律儀に別の方向を向くカインにシュナが振り返らないまま問うと、カインは何かを思い出すように遠い目をする。
「あー……まあ、色々ありまして」
「あんまりまともな思い出じゃないっぽいですねー。ダメですよ、変な人と関わったら」
諭すようにシュナは言いながらも作業を続け……やがて、ガチャンという重い音が聞こえてくる。
「む、開きましたね」
「流石だな」
「罠があるわけじゃないですからね。まあ、こんなもんでしょう」
道具を手早く懐に閉まったシュナは少しだけ自慢げに答え、ドアを開けてみせる。
そうして開いたドアの向こうから漂ってくるのは……やはり、濃厚な死の匂いであった。
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