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連載
光、見えなくても4
しおりを挟む「世界の全てに呪いあれ」
モカの言葉と共に、広間の中の騎士達がピタリと動きを止める。
指揮役の騎士も、その他の騎士も一切の例外なく全てが……である。
兜で隠された表情を確認するには至らないが、一様にぼうっとしたようにだらりと腕を下げている。
「……おお、なんかすごい。動きが止まりましたよ?」
クリムがそう言って振り返るが、肝心のモカのほうも反応が無い。
どうやら相当量の魔力を放出しているようで、うっすらと汗を浮かべながらじっと虚空を見つめている。
「彼女の能力で、悪夢を見せているのですよ。流石にこの人数を一斉に……となると、相当に手間なようですがね」
階段から降りてきたアルテジオとアウロックの姿を認め、メイド三人娘は一斉にそちらへと振り返る。
「アルテジオ様、お帰りなさいっ」
「増援というのは、彼女のことだったのですね」
「初めて見ました……」
口々に言う三人にアルテジオが頷いていると、騎士の一人がどしゃりと倒れる音が聞こえてくる。
続けてもう一人、更に一人、また一人。
次から次へと倒れていく騎士達の姿は、それこそ悪夢のような光景に見えるだろう。
あれだけ何度倒しても起き上がってきた騎士達が倒れたまま動こうともしない姿は、普段無感動なマリンをも感嘆させるものだった。
「これは……すごい」
「彼女曰く、無制限で誰にでも通用するわけではないようですがね。それでも、充分に貴重な能力です」
話している間にも、どしゃりどしゃりと騎士が倒れていく。
やがて指揮役の騎士もガクリと膝をつき、ガシャリと音を立てて倒れる。
そうして動く者が居なくなった後……モカもまた、ふうと長い溜息をつく。
「あー……久々に使って疲れました。こんな大人数相手に使ったのは初めてですよー」
「お疲れ様です、モカ」
レモンに額の汗を拭いてもらっていたモカは、そのままレモンをきゅっと抱きしめる。
「はあー……癒される。で、私状況全然知らないままなんですけど。どういう状況なんですか、これ?」
「キャナル王国に人道的支援をする為の我々の施設に人類のなんとか騎士団とか名乗る連中が攻め込んできたので、貴女に殺さない程度に撃退していただいたのですよ」
レモンを解放したモカはそのアルテジオの言葉の意味を確かめるようにこめかみを指でトンと叩き……うーん、と言って首を傾げる。
「えっと……強盗団とかではなくて?」
「騎士団です。自称ですがね」
「……どうして攻め込んでくるんです?」
「キャナル王国を支配せんと企む魔王の尖兵を退治しにきたとか言ってましたが」
マリンの説明を聞いて、モカは馬鹿を見る目で騎士達を見る。
「うっわあ……それはひどい。なんでそんなことに」
「何処かで騙された……とも考えられますが。貴女はどう考えますか、モカ?」
「え? 私ですか?」
きょとんとした顔で自分を指差してみせるモカに、アルテジオは頷く。
「ええ。貴女はザダーク王国の中でも人類に対しての知識も多い。その知識の中から、この彼等の行動に対するヒントがないかと思いまして」
「えー……」
モカは騎士達を眺め、むうと唸る。
「私だって理解できないですよ。ただ、あえて言うなら……狂信者ってやつなんじゃないかと」
「狂信者?」
「ええ、なんていうんですかね。自分がそうであると信じたものをこじらせると、非常に暴走しやすく止まりにくいものになるみたいなんです。この場合は……えーと、魔王様が云々って言ってたってことはソレ関連で暴走した連中のような……気もするんですけどねえ」
首を傾げるモカに、アルテジオは疑問符を浮かべる。
その表情を察してモカは困ったように唸り始める。
「でも、なんでしょうね。なんかこう、狂信者は総じて会話が会話にならないんですけど……なーんか、それとも違う気がするんですよねえ。すっごく説明しにくいです」
「ふむ。理解できないということが理解できただけでもまあ、上等でしょう」
アルテジオがそう言うと、そわそわしていたアウロックが口を開く。
「それじゃあ、ここの問題は解決したんですよね?」
「そうですね。クリム、マリン、レモン。一応縛っておきなさい」
「はーい」
「了解いたしました」
「はい……」
三者三様の返事をして手際よく騎士達を縛り上げていくメイド三人娘に視線を向け……再びアウロックはアルテジオへと視線を向ける。
「それなら、マーロゥの奴を迎えに行ってもいいですかね。アイツ、まだ取り残されてるんです」
「……そうですね。彼女もまた、我々の仲間です。行きなさい、アウロック」
「あ、ありがとうございますっ! よし、そうとなりゃ早速……!」
アウロックがそう言ったその直後。
何かがズドンという音を立てて着地する音が響く。
疲れたと呟きながら座り込んでいたモカがきゃっと飛び上がり、クリム達も武器を構えて一瞬で警戒態勢をとる。
その音と同時に壊れた入り口の先に現れたのは、一人のノルムを抱えて二足歩行する灰色のウサギの化け物……といった風体の何かであった。
傷だらけのその化け物は、壊れた入り口を見て驚いたように目を見開き……ゆっくりと、復興計画本部の中へと入ってきた。
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